かかりつけ医で病気が見つかり、県外の大学病院を紹介されました。新幹線で通院するのですか、交通費は自腹でしょうか?
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者、行政書士
外資系証券会社、銀行で20年以上勤務。現在は、日本人、外国人を対象とした起業家支援。
自身の親の介護、相続の経験を生かして分かりやすくアドバイスをしていきたいと思っています。
遠方の病院に通院する場合の交通費
かかりつけ医では治療できない病気が見つかった場合、県内にその病気の専門病院がなかった場合は、かかりつけ医が県外の病院を紹介することがあります。
病気で治療費がかかるうえ、遠方であれば新幹線や飛行機で通う必要があり、さらに負担が増えます。交通費は、国民健康保険や会社の保険を使用した病気の治療と同じように自己負担分(現役世代の場合は3割)だけ払えばよい、というような方法はあるのでしょうか(※1)。
結論からいうと、原則、交通費は距離に関係なく、自腹(全額自己負担)になります。病院の紹介状があっても同じです。
ただし例外があり、病気やけがで移動が困難な患者が、医師の指示で一時的・緊急的必要があり移送された場合は、移送費が現金給付として支給されことがあります。支給の要件としては、次のすべてを満たす必要があります。
・移送の目的である療養が、保険診察として適切であること
・患者が、療養の原因である病気やけがにより移動が困難であること
・緊急・その他、やむを得ないこと(※2)
具体的には、寝たきりに近い状態や、緊急搬送に準ずる移動が必要な場合などに限られ、通常の通院では、条件を満たさないことになります。それでは、民間の医療保険に加入していれば交通費は支給されるのでしょうか。
医療保険のなかには、「通院交通費特約」や「がん通院のサポート特約」といった交通費が支給される特約が付いている商品があります。
しかし、「通院交通費特約」は自動車保険の特約のひとつで、交通事故によるけがで通院する交通費を補償するものですし、「がん通院のサポート特約」は、がんの通院のためにかかる交通費を補償するものなので、利用できる人は限られます。
医療費控除
以上で見てきたように、交通費自体でほとんどのケースでは全額自己負担になりますが、医療費控除を利用すると年間の医療費が一定額を超えた場合は、税金が一部戻ってきます。
医療費控除とは、1月1日~12月31日までの間に自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合、支払った医療費が一定額を超える場合には、翌年(2月16日~3月15日)確定申告をすることにより所得控除を受けることができるというものです(※3)。
これには、通院のための交通費も対象に含まれています(※4)。
電車やバスなどの公共交通機関であれば基本的には対象となりますが、新幹線や飛行機で通院する場合は、医療上の理由でやむを得ない場合に限り対象になる可能性があります。
相談者のケースでは、認められる可能性があります。医療費控除を受けるために可能な限り、領収書や記録を残しておくことが大切です。なお、医療費控除の対象となる金額は、最高で200万円ですが、次の計算式で求めることができます。
(実際に支払った医療費の合計額-(1)の金額)-(2)の金額
(1)保険金などで補てんされる金額 (2)10万円
まとめ
近くに専門の病院がない場合、新幹線や飛行機を使って通院しなければならないのは、体の負担に加えて時間やお金の面でもストレスになります。かかりつけ医や近くの病院と専門病院と連携をして、うまく遠隔医療を取り入れば通院回数を減らすことでできます。
また、医療機関のソーシャルワーカーや自治体の相団窓口に相談することで、ストレスが軽減することがありますので、ひとりで問題を抱え込まないようにしましょう。
出典
(※1)全国健康保険協会(協会けんぽ) 知っておきたい健康保険のはなし 2023年度版
(※2)全国健康保険協会 移送費 7) 移送費
(※3)国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
(※4)国税庁 No.1122 医療費控除の対象となる医療費
執筆者 : 篠原まなみ
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者、行政書士
