大学生の子どもがいる近所の40代夫婦。4人家族で、「奨学金も利用できない」とのことですが、いくら稼いでいるのでしょうか?
進学費用の負担を軽減する制度として広く利用されていますが、すべての家庭が対象になるわけではありません。世帯の経済状況によっては、奨学金を利用できないケースもあります。
本記事では、奨学金制度の概要をご紹介するとともに、世帯の収入状況によって申し込みが制限される「家計基準」について解説します。
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奨学金の概要
奨学金事業を手がけている機関はさまざまです。「JASSO(独立行政法人日本学生支援機構)」や、地方自治体、民間企業などがあります。
今回は、奨学金事業において代表的な機関である「JASSO」の基準を例にして解説します。
JASSOの奨学金の種類と家計基準
「JASSO」が提供する奨学金には、大きく以下2種類があります。
・返済不要の「給付奨学金」
・返済が必要な「貸与奨学金」
給付型の方が、返済義務がない分、利用基準が高く設定されています。
貸与奨学金は、無利子で借りられる「第一種奨学金」と、有利子で借りられる「第二種奨学金」があります。第一種と第二種は併用可能です。
奨学金を受けるためには、学力基準のほかに家計基準も考慮されます。家計基準を、生計維持者の収入と比較して、制度利用の可否が判断されます。
生計維持者は原則的に父母2名ですが、いずれか1名や父母以外の人が当てはまる場合もあるようです。
表1に、給付型・貸与型の家計基準をまとめました。
表1
| 奨学金の種類 | 家計基準 | |
|---|---|---|
| 区分 | 学生本人と生計維持者の「支給額算定基準額」の合計 | |
| 給付型 | 第1区分 | 100円未満 (学生本人と生計維持者の市町村民税所得割が非課税) |
| 第2区分 | 100円以上2万5600円未満 | |
| 第3区分 | 2万5600円以上5万1300円未満 | |
| 第4区分 | 5万1300円以上15万4500円未満 | |
| 貸与型 第一種奨学金 |
生計維持者の「貸与額算定基準額」が18万9400円以下 | |
| 貸与型 第二種奨学金 |
生計維持者の「貸与額算定基準額」が38万1500円以下 | |
※筆者作成
「支給額算定基準額」および「貸与額算定基準額」が家計基準の要となります。いずれも「課税標準額」に6%を乗じた金額を基礎とし、給付型では市町村民税調整控除額など、貸与型では多子控除やひとり親控除など、制度ごとに定められた控除を差し引いて算出されます。
どれくらいの収入があると奨学金を利用できない?
今回の近所に住む大学生の子どもがいる40代夫婦は、4人家族で、「奨学金を利用できない」と言っていることから、家計基準を超えている可能性も考えられます。
では世帯収入がいくらあると基準から外れるのか、JASSOが示す4人家族のモデルケース4タイプを例に、収入の上限額の目安を表2~5に示します。収入は給与所得を念頭に置いたものです。
・ケース1:家族構成が本人、親A(収入あり)、親B(無収入)、中学生の場合
表2
| 奨学金の種類 | 年間収入 | |
|---|---|---|
| 給付型 (進学前) |
第1区分 | 271万円 |
| 第2区分 | 303万円 | |
| 第3区分 | 378万円 | |
| 第4区分 | 635万円 | |
出典:JASSO(独立行政法人日本学生支援機構)「進学前(予約採用)の給付奨学金の家計基準」を基に筆者作成
・ケース2:家族構成が本人、親A(収入あり)、親B(無収入)、高校生の場合
表3
| 奨学金の種類 | 年間収入 | |
|---|---|---|
| 給付型 (進学後) |
第1区分 | 295万円 |
| 第2区分 | 395万円 | |
| 第3区分 | 461万円 | |
| 第4区分 | 698万円 | |
出典:JASSO(独立行政法人日本学生支援機構)「進学後(在学採用)の給付奨学金の家計基準」を基に筆者作成
・ケース3:家族構成が本人、親A(収入あり)、親B(収入あり)、中学生の場合
表4
| 奨学金の種類 | 年間収入 |
|---|---|
| 貸与型第一種奨学金 (進学前) |
803万円 |
| 貸与型第二種奨学金 (進学前) |
1250万円 |
出典:JASSO(独立行政法人日本学生支援機構)「進学前(予約採用)の第一種奨学金の家計基準」を基に筆者作成
・ケース4:家族構成が本人、親A(収入あり)、親B(収入あり)、高校生の場合
表5
| 奨学金の種類 | 年間収入 |
|---|---|
| 貸与型第一種奨学金 (進学後) |
880万円 |
| 貸与型第二種奨学金 (進学後) |
1309万円 |
出典:JASSO(独立行政法人日本学生支援機構)「大学等で受ける第一種奨学金の家計基準(在学採用)」を基に筆者作成
表5のケースは両親ともに収入がある場合(親Bは収入300万円)で、年間収入1309万円を超えると、このケースでは第二種奨学金(在学採用)の対象外となる可能性があります。
今回の40代夫婦の世帯では、給付型・貸与型いずれの制度も利用できないようであり、もしかしたら世帯収入が1309万円を超えているのかもしれません。
世帯状況は各々異なるため、詳しいシミュレーションをしたい場合は、JASSOの「進学資金シミュレーター」を使うとよいでしょう。
世帯収入が1300万円を超えていると奨学金を利用できないケースがある
奨学金にはさまざまな種類があり、学力基準や家計基準も異なります。そのため、収入がいくらあると奨学金を利用できないか断定はできません。
今回の大学生のお子さんがいる近所の40代夫婦(4人家族)に関していえば、JASSOのモデルケースを用いると世帯収入が1309万円を超えている可能性があります。ただしモデルケースの家族構成と実際には異なっている場合もあるため、あくまで目安に過ぎません。
出典
JASSO(独立行政法人 日本学生支援機構)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
