ランチに行ったら「現金使えません」と言われた! 法律で「現金は無制限に通用する」はずですが“違法”じゃないのですか? 現金不可「完全キャッシュレス店舗」の注意点とは
本記事では、現金不可の店舗が法的に問題ない理由や、キャッシュレス決済のメリットを分かりやすく解説します。
1級ファイナンシャル・プランニング技能士・CFP
キャッシュレス決済しかできないのは違法ではないのか
結論から言うと、店舗が「キャッシュレス決済のみ」として現金を受け付けないことは、原則として違法ではありません。
日本銀行法第46条第2項には、「日本銀行券は、法貨として無制限に通用する」と定められています。ここだけを見ると、「現金は必ず使えるはず」と思う人も多いかもしれません。
しかし、この条文は「日本銀行券が国として正式な通貨であり、支払いに使える力を持っている」ことを示すものです。すべての場面で、必ず現金を受け取らなければならない、という意味ではありません。
ここで重要になるのが、「契約自由の原則」です。民法では、どんな条件で、どんな方法で取引するかを当事者同士が自由に決められると考えられています。
店舗側が「当店はキャッシュレス決済のみです」「現金は使えません」と事前に表示しており、利用者がそれを理解したうえで商品やサービスを利用した場合、その時点で支払い方法に同意したと考えられます。
このため、あらかじめ条件が示されていれば、現金を受け取らないこと自体は違法になりません。
キャッシュレス決済のみの問題点
キャッシュレス決済のみの店舗で起こりやすいのが、利用者との認識のズレです。「現金は法貨だから、出されたら必ず受け取らないといけないはずだ」と思い込んでいる人も少なくありません。この誤解が、店と客のトラブルにつながることがあります。
入店前や注文前に、「現金不可」「キャッシュレス決済のみ」と分かりやすく掲示されていれば、法的には問題になりにくいです。利用者は、その条件を見たうえで利用するかどうかを選べるからです。
一方、会計の段階になって初めて「現金は使えません」と言われた場合、話は変わってきます。利用者が支払い方法を選ぶ前に十分な説明がなかったとして、トラブルになる可能性があります。キャッシュレス限定の店舗では、事前表示の分かりやすさが特に大切です。
キャッシュレス決済のメリット
ここまでキャッシュレス決済が広まっているのは、店側だけでなく、利用する側にも利点があるからです。現金払いと比べて、日常生活で便利さを感じやすい場面が増えています。店側・利用者側それぞれのメリットについてみていきましょう。
店側のメリット
店側にとって大きいのは、現金管理の手間が減ることです。釣り銭を用意したり、毎日レジ締めをしたりする必要が少なくなります。盗難や数え間違いの心配も減ります。
また、会計がスムーズになる点も見逃せません。支払いにかかる時間が短くなれば、レジ待ちの列が減り、店の回転が良くなります。少ない人数でも対応しやすくなり、人手不足への対策にもつながります。
利用者側のメリット
利用者にとって一番分かりやすいのは、支払いが早いことでしょう。小銭を探したり、お釣りを待ったりする必要がありません。時間がない場面でもストレスを感じにくくなります。
現金を多く持ち歩かなくて済む点も安心材料です。財布を落とす不安が減り、スマートフォンやカードだけで支払いができます。さらに、ポイント還元や割引などの特典を受けられるのも魅力です。
まとめ
キャッシュレス決済のみの店舗は、事前に条件を示していれば原則として違法ではありません。日本銀行券が法貨であることと、店舗が現金を受け取る義務があるかどうかは別の話です。トラブルを防ぐためには、支払い方法の表示が重要になります。
支払いが早く、管理もしやすいキャッシュレス決済は、店と利用者の双方にとって便利な選択肢といえるでしょう。
出典
e-Gov法令検索 日本銀行法
e-Gov法令検索 民法
執筆者 : よし・こう
1級ファイナンシャル・プランニング技能士・CFP
