銅価格高騰で「5円玉製造」に“5円以上”のコストが!「溶かせば高く売れる」と聞きましたが、違法になりませんか? アメリカでは「1セント硬貨」が製造終了…硬貨は今後廃止される?
では、額面以上の価値があるのなら、硬貨を溶かし地金に変えて売却しても良いのでしょうか。結論から言えば、これは法律で禁止されており、硬貨を溶かしたり破壊した場合には、罰則も定められています。
本記事では、5円玉の素材(地金)価値について説明したうえで、関連する法律や罰則について解説します。さらに、海外で実際に取られた少額硬貨をめぐる制度上の判断を紹介しながら、身近な硬貨の扱いについて見ていきます。
FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種
銀行にて12年勤務し、法人および富裕層向けのコンサルティング営業に従事。特に相続対策や遊休地の有効活用に関する提案を多数手がけ、資産管理・税務・不動産戦略に精通。銀行で培った知識と経験を活かし、収益最大化やリスク管理を考慮した土地活用のアドバイスを得意とする。
現在は、2社の経理を担当しながら、これまでの経験をもとに複数の金融メディアでお金に関する情報を発信。実践的かつ分かりやすい情報提供を心がけている。
5円玉の製造コストは?
5円玉の主な原材料は銅です。近年、世界的な需要増加や資源価格の上昇を背景に銅の国際価格は高止まりしています。こうした影響を受け、2025年12月には、5円玉1枚あたりの原材料費の時価が、額面である5円を上回ったと言われています。
硬貨の価値は「金属としての価値」ではなく「国が額面を保証する貨幣価値」で決まります。しかし、金属価格の上昇によって硬貨の素材価値が額面を上回る局面が生じると、通貨としての価値と原材料としての価値が乖離します。
「地金価値が高くても溶かせない」法的な理由
銅価格の上昇を受け「地金として価値があるなら、溶かして売却できないのか」という疑問が出ることがあります。しかし前述の通り、これは明確に法律違反です。
日本では「貨幣損傷等取締法」により、流通している貨幣を故意に溶かしたり、破壊したりする行為が禁止されています。目的が営利であっても、個人的な実験であっても例外ではありません。
5円玉の素材価値が額面を超えていたとしても「溶かしてよい」理由にはならず、違反した場合には、1年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金が科されます。
貨幣は個人の所有物であると同時に、社会全体で使われる決済手段という性質を持ちます。勝手に破壊や転用が認められれば通貨制度そのものが成り立たなくなるため、厳しく制限されているのです。
アメリカで問題になった事例
硬貨の貨幣価値と原材料費の乖離をめぐる問題は、日本に限ったものではありません。アメリカでは、キャッシュレス決済の普及などを背景に1セント硬貨(ペニー)が日常の決済で果たす役割が低下し、その存廃が長年にわたり議論されてきました。
こうした中で、1セント硬貨(ペニー)の製造コストが額面を大きく上回っていることが、制度の歪みを示す事実として注目されるようになります。役割の低下とコスト負担の大きさをふまえた結果、アメリカでは2025年11月をもって、一般流通向けの製造を終了する判断が取られました。
この判断の背景には、1セント硬貨が物価や取引に与える影響が限定的になっていたことがあります。コストと実用性を総合的に考慮し、制度として「作らない」という選択がなされた形です。
まとめ
銅価格の高騰により、5円玉は原材料である銅(地金)として見れば、原材料の価格が額面を上回る水準に達する場面が生じています。しかし、だからと言って硬貨を溶かして利用することは認められておらず、日本では法律により明確に禁止されています。
硬貨は金属としての価値ではなく通貨制度の一部として管理されており、製造コストや素材価格だけで扱いを決められるものではありません。さらに日本では、5円玉に「ご縁がある」といった文化的な意味合いも重なり、製造停止や廃止を判断しにくい側面もあります。
今回の話題では、5円玉をめぐり、素材価格だけでは割り切れない制度や文化の要素があることを改めて浮かび上がらせたと言えます。
出典
造幣局 現在製造している貨幣
e-Gov法令検索 貨幣損傷等取締法
執筆者 : 竹下ひとみ
FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種
