わが家は「生活保護」を受けていますが、成績優秀な息子を“大学進学”させてあげたいです。福祉事務所には「原則不可」と言われましたが“世帯分離すれば可能”って本当ですか? 注意点も確認
本記事では、国会での質問主意書と政府答弁を踏まえ、生活保護世帯における大学進学の実現性を解説していきます。
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目次
生活保護費で大学進学費用を賄うことは原則想定されていない運用
厚生労働省が示す基本的な考えによれば、生活保護制度は「最低限度の生活を保障するもの」であり、大学への進学は最低生活保障の対象とは解されていません。
第219回国会「衆議院議員八幡愛君提出生活保護世帯における大学進学制限に関する質問に対する答弁書」では、生活保護受給中の世帯が子どもを大学へ進学させることは、必ずしも「大学等への進学を自立支援とみなさず、生活保護の対象外」としているわけではなく、「法の趣旨と整合的である」との解釈が示されました。
一方で、大学進学は生活保護の要件「能力の活用」のうち、就労可能年齢以降に求められる「稼働能力の活用」を妨げるものと整理されやすい側面があります。
例えば、「生活保護制度の在り方に関する専門委員会 説明資料」では、「義務教育終了後は就労可能な状態」つまり「義務教育の終了は賃金を稼ぐための稼働能力を得た」とみなされる考え方が示されています。
こういった制度の運用上、福祉事務所の現場において「大学進学は原則不可」と説明されることがある根拠の1つと考えられます。
世帯分離をすることで生活保護受給世帯でも大学進学が可能
生活保護制度自体は大学進学を保障はしていませんが、別制度や組合せでその可能性はあります。厚生労働省の通知では、一定の条件を満たす場合、進学する子どもの世帯分離が認められています。
世帯分離とは、進学する子どもを生活保護の世帯から外し、別世帯として扱う制度上の措置を指します。これにより、子ども自身は制度上、大学への進学が可能になります。
ただし、生活保護の対象外となるほか、学費や生活費については奨学金、アルバイト、あるいは他制度の支援で賄うことが前提とされています。
生活保護受給世帯であっても、制度上は世帯分離という選択肢があり、「大学進学の道が完全に閉ざされるわけではない」とされているものの、個人の負担が大きくなることが考えられます。
約6割は世帯分離による生活保護費減額が進学を検討する際に影響
世帯分離を行うと、世帯全体の生活保護費が減額されるケースもあるようです。特に、子どもが世帯から外れると、世帯人数減少に伴う基準額の引き下げが生じます。
株式会社富士通総研「厚生労働省 生活保護世帯出身の大学生等の生活実態の調査・研究等一式 報告書」では、大学進学の際に生活保護費の減額が「大いに影響した」「少し影響した」と回答した人は約6割で、このうち、「大いに影響した」人の約4割は高校進学の時点でも「経済的理由で進学先を変えた」という結果が出ています。
経済的負担の増加が、進学を検討する際の大きな判断材料となっていることが示されており、進学先を迷ったり、断念したりする世帯が一定数いることが分かります。世帯分離は制度上可能であっても、実際には高いハードルを伴う選択肢なのかもしれません。
まとめ
生活保護世帯において、大学進学への道が完全に閉ざされているわけではありません。生活保護制度単独で大学進学支援はされませんが、進学する子どもを世帯から外し、別世帯として扱う「世帯分離」という選択肢があります。
学費や生活費については奨学金、あるいは他制度の支援で賄うなど個人負担がかかることは事実ですが、大学進学を断念する事態は避けられそうです。
出典
衆議院 生活保護世帯における大学進学制限に関する質問主意書
衆議院 衆議院議員八幡愛君提出生活保護世帯における大学進学制限に関する質問に対する答弁書
厚生労働省 生活保護世帯出身の大学生等の生活実態の調査・研究等一式報告書
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
