猫への募金で「10円や1円より、100円以上が助かる」にSNSで「図々しい」「小銭だって立派なお金」と非難が…でも実際“両替手数料”で赤字になる? 善意と“受け取り手の葛藤”とは
それに対して、「善意の寄付に対して失礼ではないか」といった反論も寄せられたようです。
「募金箱に入れれば、誰かの役に立つ」という温かい気持ちは大切ですが、「小銭の山」を受け取る募金の事務局では、実は大変な悲鳴が上がっています。
私たちの「1円」は、本当にそのまま相手に届いているのではありません。膨大なコストや労力がかかっています。この点を1円、5円、10円など少額の硬貨と100円、500円の高額の硬貨を比較して解説し、皆様の善意が本当に役に立つ方法をご提案します。
社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー
目次
銀行・郵便局の多額の手数料はとても大きい。「マイナス50円の持ち出し」「100枚の壁」
募金の事務局が集めた「小銭の山」を銀行やゆうちょ銀行(郵便局の窓口・ATM)で入金する際には、多額の手数料がかかります。手数料だけで採算割れどころか、持ち出しにすらなりかねないのです。
例えば1円玉500枚を窓口に持ち込むと、手数料は550円です。寄付どころか、手元から50円消えてしまうのです。
ATMの場合はさらに厳しい制限があります。特に厳しいのは、ゆうちょ銀行の硬貨取り扱いです。ATMで硬貨を1枚でも入れると「ATM硬貨預払料金」が発生します。
三菱UFJ銀行をはじめとしたメガバンクでは手数料は取られませんが、1回あたり100枚までという制限があります。大量の硬貨なら、周囲に気兼ねしながら何回も繰り返し入金する、ということになります。(図表1)
銀行やゆうちょ銀行が硬貨の扱いに厳しい制限を設けているのは、硬貨を数える人件費、精密な計数機を整える費用を考えているのです。ATMの場合は異物混入や劣化した硬貨で詰まったり故障したりすることも想定し、窓口よりも厳しい制約が課されています。
図表1:銀行・郵便局などの硬貨取扱手数料(代表的な例)
| 項目 | ゆうちょ銀行 | メガバンクの一例 三菱UFJ銀行 |
地銀・信金・農協等 | |
|---|---|---|---|---|
| 窓口 | 無料枠 | 100枚まで | 100枚まで | 50枚〜100枚 |
| 手数料 | 101〜500枚:550円 501〜1000枚:1100円 1001枚以上:500枚毎に550円加算 |
101〜500枚:550円 501~1000枚:1100円 1001枚以上:1650円 以降500枚毎に550円加算 |
101〜500枚:660円前後 | |
| ATM | 枚数制限 | 1回につき 100枚まで | 1回につき 100枚まで | 1回につき 100枚まで |
| 硬貨預払料金 | 必ず発生 (1枚でも110円かかる) |
原則無料 (※平日日中に限る) |
原則無料 (※平日日中に限る) |
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| 特例(募金など) | なし | なし | 義援金・募金用は 無料とするケースもあり |
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筆者作成
少額硬貨と高額硬貨でこれだけの違いがある
それでは、例えば1万円の募金について、少額硬貨と高額硬貨で手数料にどれだけ違いが出るのでしょうか。三菱UFJ銀行の窓口入金の事例で計算してみましょう。
次の通り、1円硬貨なら1000円の持ち出しになってしまいます。100円、500円の硬貨になって初めて、1万円を丸ごと入金できることになるのです。なお、ATMで100枚ずつ入れればよいと思われるかもしれませんが、1円硬貨なら100回の入金が必要です。現実的ではないでしょう。
図表2:1万円を各種硬貨で入金したときの手数料と実質入金額
筆者作成
※手数料は入金または振り込みする硬貨とは別に用意が必要
手数料以外にもさまざまな問題「数える手間」「1円は1グラム、1万枚なら10キログラム」
大量の硬貨を持ち込まれると、募金箱の中には、サビて固着した硬貨や、変形した硬貨、さらに廃物も混入していることがあります。機械で読み取れず、職員が1枚ずつ手作業で確認する必要があり、膨大な事務負担となります。この作業のため、ボランティアに頼っている募金事務局もあります。
寄付金控除のための受領証明書を発行する募金では、金額確定のために硬貨を数え上げる必要があり、これも大きな負担です。
さらに、大量の硬貨は重量物です。1円玉1万枚では約10キログラム、すなわちご家庭の5キロの米袋2つ分です。保管場所の確保も大変です。運送会社に輸送をお願いする場合は重量で課金されるので、これも大きなコストになるのです。
結び-善意のお金を無駄なく活用するために
「1円でも善意のお金だ。募金するのに文句を言うな」とお考えの方もおられると思いますが、大量の少額硬貨は、無用のコスト負担となり、募金事務局にも多大な負担をかける可能性があります。
あなたがひと手間かけて紙幣や高額硬貨に変えれば、事務局は大助かりです。あなたの大切な善意を本当に生かすために、あなたの貯金箱をこの機会に見直してみませんか?
出典
日本郵政グループ 「硬貨取扱料金改定のお知らせ」
日本赤十字社 「硬貨によるご寄付について(日本赤十字社埼玉県支部)」
執筆者 : 玉上信明
社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー

