更新日: 2019.07.16 その他暮らし

電力小売全面自由化から3年 悪徳商法に注意するべきワケ

電力小売全面自由化から3年 悪徳商法に注意するべきワケ
電力小売全面自由化されて3年余が経過しました。新規参入の小売事業者の数も300社を超えて、料金値下げやサービス競争が激化し、勧誘もし烈になっています。
 
こういった時に気を付けたいのが、電気という目に見えない商品を買うにあたり、さまざまなトラブルに巻き込まれてしまうことです。
藤森禮一郎

執筆者:藤森禮一郎(ふじもり れいいちろう)

フリージャーナリスト

中央大学法学部卒。電気新聞入社、電力・原子力・電力自由化など、主としてエネルギー行政を担当。編集局長、論説主幹、特別編集委員を経て2010年より現職。電力問題のコメンテーターとしてテレビ、雑誌などでも活躍中。主な著書に『電力系統をやさしく科学する』、『知ってナットク原子力』、『データ通信をやさしく科学する』、『身近な電気のクエスション』、『火力発電、温暖化を防ぐカギのカギ』、『電気の未来、スマートグリッド』(いずれも電気新聞刊)など多数。

新電力のシェアは14.6%に

消費者が、お好みの電力会社からお好みの電気を買えるようになったので、電力会社を切り替え(スイッチング)する需要家が増え続けています。家庭向けの低圧部門にこの傾向が顕著にみられます。
 
昨年9月に20%を超えたスイッチング率は上昇を続け、直近のデータによると2019年2月には24%に達しています。
電力小売市場を監視している「電力・ガス取引監視等監視委員会」が発表した2月の自由化状況によると、特別高圧、高圧、低圧を合わせた全販売電力量は前年度よりわずか減り763億kWhでしたが、このうち「新電力」の販売電力量の総計も微減の111.7億kWhとなりました。
 
販売電力量ベースの新電力全体のシェアは14.6%となりましたが、電圧別(商品別)にみると、特別高圧6.1%、高圧22.9%、低圧12.7%となっていて、高圧、低圧部門で競争が激しいことがわかります。

スイッチング率は24% 大都市を中心

「選べる自由」を手に入れた需要家が、供給事業者をどのくらい切り替えたかスイッチング率を見てみましょう。
 
需要家の件数が多い家庭向け低圧需要のスイッチング数の累計は1021万件で、スイッチング率は24.0%に達していて、エリア別にみると東京、中部、関西の大都市圏ほど高い値を示しています。
当初は「みなし小売り電気事業者」(大手電力会社)から新電力への切り替え(大手電力→新電力)が目立っていました。最近は、新電力→新電力の切り替えも増えてきているようです。
 
制度変更に伴う料金の値下げがセールスポイントでしたが、料金競争は一段落した様子です。現在は、ポイントサービスや異業種とのセット割引サービスが目立つようになりました。
料金に大きな差異がなくなってきたので、自分たちの生活スタイルに合ったセット割サービスを選択基準にするようになってきているようです。

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料金より付帯サービスで競争

「電気・ガス」、「電気・ガス・水道」、「電気・ガス・スマホ」、「電気・ガス・スマホ・ガソリン」などのメニューが続々誕生し、これにポイントサービスが付与するものが多いですね。
 
最近面白いサービスを目にしました。読売新聞の「KODOMO新聞でんき」です。中部電力と大阪ガスが首都圏向けに設立した小売り事業会社「CDエナジーダイレクト」が、読売新聞と提携し、子供新聞と電気をセットにし、拡販することになったのです。
これにガスも加わると、年間で約1万3000円以上の割引になるそうです。
 
鉄道事業におけるPASMOやSuicaの普及で路線乗り換えの手続きが不要になったように、電気の乗り換え(スイッチング)も電話、スマホ、パソコンで簡単にできるようになりました。また、料金比較サイトも充実してきましたから、スイッチングしやすくなってきましたね。

乗換は簡単だが… 悪徳商法に注意

電気という商品は目に見えません。いろいろな商品カタログが出回っていますが、どの会社の電気も「品質に差異なし」です。
 
また、契約上のトラブルが生じても、直ちには停電にならないようにセイフティーネットも充実しています。その点は安心です。
しかし皆さん、気を許しいてはいけません。競争が激しくなると新規参入事業者から、あの手この手の電話勧誘も盛んになります。
 
今までの電気メーター(積算電力量計)はアナログ型で、複雑な電気の売り方はできませんでしたが、最近のデジタル型スマートメーターは使用量計測が容易で、電気の売買も簡単にできる優れモノです。メニューの複雑化の要因にもなっています。
 
単純なものを複雑な料金体系にして売る、そこが自由化の負の側面になりつつあります。トラブルが目に付くようになりました。例えば、新規参入者による勧誘事件が明らかになりました。
 
専門紙「電気新聞」によると、4月に新電力のA社が消費者庁から一部業務停止命令を受けました。続いて5月には、同じく新電力のE社の勧誘代理店F社の関係者6人が逮捕されています。
 
A社の場合は、大手電力と契約中の消費者に電話をかけ、毎月の電気料金があたかも一律5%安くなるように説明していました。実際に安くなるのは電気の使用量が月300kW時以上の3段目の従量料金のみに適用されるだけだったため、特定商取引法違反で業務停止処分を受けたものです。
 
F社で逮捕されたのは、代表取締役ら経営者とアルバイト4人です。アルバイト勧誘員らは関西電力の顧客に対して「契約プランの変更」を装ってE社と契約を結ばせたとの容疑です。
 
F社を介した契約は7000件に上るため、京都府警は余罪があるとみて調べています。電話詐欺事件が横行しています。うまい話には注意したいものです。
 
執筆者:藤森禮一郎(ふじもり れいいちろう)
フリージャーナリスト

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