通勤ラッシュの駅で「靴のかかと」を踏まれ、合皮が剥げた! 買ったばかりでも「混んでるから仕方ない」「お互いさま」と我慢すべき? なぜ“踏んだ・踏まれた”が起こるのか…弁償についても確認
ある程度はお互いさまと思えても、買ったばかりの靴の表面がはげてしまったら、やりきれない気持ちになるのではないでしょうか。本記事では、混雑した駅で靴を踏まれて破損した場合に、相手に弁償を求めることができるのかを法律の観点から解説します。
FP2級、日商簿記3級、アロマテラピー検定2級、夫婦カウンセラー、上級心理カウンセラー、整理収納アドバイザー
混雑した駅でかかとを踏まれるのはなぜ起こる?
通勤ラッシュ時の駅構内や電車内は、多くの人が密集しています。前の人との距離が極端に近くなることが多いため、歩幅のわずかなずれや体勢の崩れによって、前の人の靴のかかとを踏んでしまうことは珍しくありません。
特にかかと部分は後方に突き出ているため、後ろの人の足が当たりやすい構造です。合皮は本革に比べて表面の塗膜が薄いこともあり、かかとを踏まれた衝撃や摩擦で表面がはげてしまうことがあります。
靴を踏まれて破損した場合、弁償を求められる?
他人の靴を踏んで破損させた場合、法律上は「不法行為」に基づく損害賠償の問題となります。民法第709条では「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定められています。
つまり、たとえ故意でなくても「過失」、すなわち不注意によって他人の靴を踏み、損害を与えた場合には、賠償義務が生じる可能性があります。例えば、歩きスマホをしていて前の人の靴を踏んでしまった場合は、注意義務を怠ったとして過失が認められやすいでしょう。
一方、通勤ラッシュのように人が密集している状況では、前の人の靴を踏むこと自体がある程度避けがたいともいえます。このような場合には、踏んだ側にどの程度の「過失」が認められるかが問題になります。
弁償額は購入金額の満額とは限らない
仮に相手の過失が認められたとしても、靴の購入金額をそのまま全額弁償してもらえるとは限りません。損害賠償における物の損害額は、原則として「事故時点での時価」で算定されます。
買ったばかりの靴であれば時価は購入金額に近くなりますが、使用期間が長ければそれだけ時価は下がります。また、合皮のはがれが靴の一部にとどまり、修理で対応できる場合は、修理費用のみが損害額となる可能性もあります。
さらに、民法第722条第2項では「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる」と規定されています。これは「過失相殺」と呼ばれる考え方です。
例えば、踏まれやすいと分かっている混雑した場所で、傷つきやすい素材の高価な靴を履いていた場合や、急に立ち止まったことが原因で後ろの人に踏まれた場合など、被害者側にも一定の落ち度があると判断されれば、賠償額が減額される可能性があります。
実際には弁償を求めるのが難しいケースも多い
法律上は損害賠償を請求できる場合であっても、実際に弁償を求めるのはハードルが高いこともあります。
まず、混雑した駅の中では、そもそも誰に踏まれたのかが分からないケースが多いでしょう。相手が特定できなければ損害賠償を請求すること自体ができません。また、相手が分かったとしても、「踏んだ」ことの証拠や靴の損害との因果関係を証明する必要があります。
損害額が少額の場合は、弁護士費用や手間を考えると、法的手段を取ることが現実的でないことも少なくありません。そのため、相手に直接弁償を求めて話し合いで解決するか、自分で修理して済ませる人が多いのが実情です。
まとめ
通勤ラッシュの駅で靴のかかとを踏まれ、合皮がはげてしまった場合、法律上は民法第709条の不法行為に基づいて損害賠償を請求できる可能性があります。ただし、賠償額は靴の時価や過失相殺により減額されることがあり、購入金額の満額がそのまま認められるとは限りません。
また、混雑した場所での出来事であるため、相手を特定できない場合も多く、実際に弁償を求めることは容易ではありません。踏まれた際はなるべく相手に声をかけ、連絡先を交換しておくことが大切です。大切な靴が心配な人は、混雑が予想される場面では傷つきにくい靴を選ぶなどの自衛策も検討するとよいでしょう。
出典
e-Gov法令検索 民法
執筆者 : 上野梓
FP2級、日商簿記3級、アロマテラピー検定2級、夫婦カウンセラー、上級心理カウンセラー、整理収納アドバイザー
