生活保護を受けていても大学に行ける? 知っておきたい制度とバイトしすぎの注意点
FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士
保険代理店勤務を経て独立。高齢出産夫婦が2人目を産み、マイホームを購入しても子どもが健全な環境で育ち、人生が黒字になるようライフプラン設計を行っている。子どもが寝てからでも相談できるよう、夜も相談業務を行っている。著書に「書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方」(翔泳社)
「世帯分離」によって大学に進学することができる
生活保護は世帯単位で受給するのが原則ですが、大学等に進学する場合は「世帯分離」という扱いが認められています。これによって、本人だけを生活保護の対象から外すことで、家族と同じ家に住みながらも、自分は生活保護を受けない状態で大学に通うことができます。
世帯分離をしても、引き続き家族は生活保護を受けられます。しかし、世帯分離した本人は生活保護の対象外となるため、自分の生活費は自分で稼ぐ必要があります。さらに、国民健康保険に自ら加入し、医療費も自分で支払わなければなりません。
進学時に使える制度
・進学準備給付金
生活保護世帯の子どもが大学等へ進学する場合に、新生活の初期費用として支給される給付金です。金額は、自宅通学は10万円、自宅外通学で引っ越す場合は30万円です。
・高等教育の修学支援新制度
大学の入学金や授業料の減免、および給付型奨学金をセットで受けられる制度です。本人の所得で支援額が決まりますが、住民税非課税の場合、「第1区分」に該当し最も手厚い支援を受けられます。
国公立大学の場合は、支援額で入学金と授業料をほぼカバーできますが、私立大学の場合は、支援額は入学金26万円、授業料70万円のため、進学先の大学の費用がこの金額以上であれば自己負担となります。給付型奨学金も受け取ることができ、国公立大学の場合、自宅通学なら年間35万円、自宅外通学なら80万円です。
大学で必要になるのは、入学金や授業料だけでなく、教科書代、パソコン代、通学費なども必要です。修学支援新制度による支援額は大きいとはいえ、この制度だけで学生生活をすることはできないでしょう。そのため、貸与型の給付金を併用したり、アルバイトをしたりするのが現実的になると思われます。
アルバイトの「稼ぎすぎ」に要注意
世帯分離した学生は生活費を自分で賄わなければならないため、アルバイトは必須となるでしょう。しかし重要な注意点があります。
修学支援新制度の「第1区分」に該当するのは、住民税非課税である必要があります。住民税が課税される年収水準になると、支援区分が下がり、受けられる授業料減免額や給付型奨学金の額が減ってしまいます。
住民税が課税されるかどうかの目安は自治体により異なりますが、東京23区の場合、給与収入で年間110万円です。勉強するために進学したのですから、アルバイトのしすぎは避けたいところですが、生きていくためには稼がないといけません。しかし、稼ぎすぎると第1区分から外れて支援が減ってしまうのです。
なお、貸与型奨学金は収入として認定されないため、住民税には影響ありません。
貧困の連鎖を断ち切るために
生活保護世帯でも世帯分離すれば大学に行くことはでき、修学支援新制度や奨学金を活用することで学費の大部分をカバーできます。ただし現実は、「アルバイトをしなければ生活できない、でもアルバイトをしすぎると支援が減る」という葛藤があるかもしれません。
そのため、高校の時から少しでも貯蓄をしておきたいものです。生活保護は原則、金銭収入はすべて収入認定されますが、恵与金や本人のアルバイト収入など、大学進学のための資金であれば収入認定除外となることもあります。高校生の時から少しずつ準備しておくことも考え、まずはケースワーカーに相談してみてください。
「貧困は連鎖する」とよく言われます。親の経済状況が子どもの教育機会等を奪い、その子どもも低収入になるという悪循環です。しかし、学びたい気持ちがあれば、その連鎖を断ち切れるかもしれません。使える制度を理解してしっかり使っていただきたいと思います。
執筆者 : 前田菜緒
FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士

