楽しみながら、健康づくりができる「健康ポイント制度」って?
配信日: 2019.11.24
執筆者:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士
不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。
目次
多くの自治体で手掛けている「健康ポイント制度」
「健康ポイント」でネット検索してみると、自治体のサイトなどがたくさんヒットします。一例として、東京都新宿区の「しんじゅく健康ポイント」サイトでは、次のように制度を説明しています(末尾※1参照)。
使用ツールはスマホアプリか通信機能付き歩数計で、一日の歩数や健康アクション(健康に関するイベント・講演会等への参加、健診受診、健康関連対象施設の利用)に応じてポイントゲット。
一定期間に貯まったポイントで抽選が行われ、当選すると景品がもらえる仕組みです。なお、参加対象に決まりがあって参加人数にも上限があります。
多数の自治体で、このような制度が用意されています。内容にはバリエーションがありますが、日常の暮らしの中で気軽に楽しみながら、そして続けていくとポイントが貯まりちょっとおトクが楽しめるかもしれない、といった点は共通した仕組みのようです。
改めて見つめてください、「平均寿命」・「平均余命」、そして「健康寿命」のこと
以前にも触れましたが、日本人の平均寿命は一段と延びて、男性81.25歳、女性87.32歳(厚生労働省 2019年7月30日公表、末尾※2参照)です。しかもこれは、正確には現在0歳の人の平均余命。
同時に発表されている平均余命表を見ると、例えば60歳での数値は、男性23.84年(60歳に足すと83.84歳)、女性29.04年(同89.04歳)、65歳では、男性19.70年(65歳に足すと84.70歳)、女性24.50年(同89.50歳)と、長寿高齢化のトレンドが実感できます。
一方で、こうした平均寿命や平均余命の前には「健康寿命」があります。3年ごとの推計値で、直近2016年は男性72.14歳、女性74.79歳(厚生労働省 2018年3月9日公表)。これは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく自立して生活できる期間のことです。
そしてそれ以降は、そうではなく何らかの支援や介護が必要となる状態を意味します。平均寿命や平均余命から引き算しても、ざっと10年前後から15年くらい。結構長い期間であることがわかります。
健康は、人それぞれの問題ですが、医療や介護などの費用増大が社会保障制度を揺るがしかねないと指摘されるなど、社会全体の問題でもあります。そのため、健康づくりや病気予防(つまり、健康寿命を延ばすこと)は国や自治体にとっても大きな課題となっているのです。
健康づくりのためのインセンティブを提供する際のガイドラインとは?
2016年5月に厚生労働省は「個人の予防・健康づくりに向けたインセンティブを提供する取組に係るガイドラインについて」を公表し、主なポイントとして次をあげています(末尾※3参照)。
ICT等を活用することは時代の流れでしょう。そしてインセンティブの中身について魅力的なものにすることを促す一方で、金銭的価値を高めすぎると報酬を得ることが目的化しやすいので慎重に考えるべきと戒めています。何だか、昨今の「ふるさと納税」制度を巡る問題と似てなくもないですね。
まとめ
ふるさと納税は、納税(寄附)する先の自治体を自由に選べますが、自治体の健康ポイント制度は自分の居住地のものしか選択肢はありません。しかし、健康づくりのためにちょっとしたインセンティブを提供している仕組みは、自治体以外の民間レベルでもかなり見られます。
例えば、健康づくりの代表的なツールのひとつである歩数計アプリ。ネット検索してみると、有料/無料のものがたくさんヒットします。もしも興味があれば、自治体の募集枠以外でも、自分に合っていると思われるものは手軽に入手できます。
健康な状態で長生きするのは、歓迎すべきことでしょう。健康づくりは、結果的に社会全体の医療・介護費用や健康保険財政などの公費負担抑制にもつながりますが、それ以上に本人にもメリットがあるのです。
ポイントを集めて景品やサービスをゲットすること自体が目的ではなく、ゲーム感覚で気軽に楽しみながら健康維持を促す健康ポイント制度。活用することには、意味があるのではないでしょうか?
出典:(※1)新宿区「しんじゅく健康ポイント~楽しく続けて健康に!~」
(※2)厚生労働省「平成30年簡易生命表の概況」なお、主な年齢の平均余命の明細は「印刷用資料のダウンロード」に添付されているPDFファイル「概況版」を参照
(※3)厚生労働省「個人の予防・健康づくりに向けたインセンティブを提供する取組に係るガイドラインについて」
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士