災害時、「目に見えない資産」を活かすことの重要性

配信日: 2019.12.29

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災害時、「目に見えない資産」を活かすことの重要性
日本はかねてから「災害列島」と呼ばれています。
 
万一被災したらどうするか、その事前対策と事後対応を考えることがリスクマネジメント。このなかには「目に見えない資産」を生かすことの重要性も含まれています。
 
重定賢治

執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)

明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。

子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。

2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai

目に見えない資産とは

昨今の台風による災害では、多くのご家庭で火災保険の保険金により家屋の修復などが行われ、経済的な問題はひとまず解決された、と安堵された方もいるかもしれません。しかし、同時に、このように思った方もいたかもしれません。
 
「今度また災害に遭ったら、誰を頼ればいいのか……」
 
これは実際にあった話ですが、台風15号の暴風雨の影響で千葉県内の広い地域で停電が発生した後の出来事です。同じ町内ですが、1人暮らしをしているおばあちゃんが停電で消えたリビングの電気の様子を見ようと、椅子に乗ったところ、転倒し、腕を骨折しました。
 
ご近所も停電の影響でしばらく電気が使えない状況が続いていましたが、翌朝、台風の被害状況の全貌が少しずつ見えるようになり、様子がだんだんわかるようになりました。すると、そのおばあちゃんの家の垣根が暴風雨の影響で大きく傾き、隣家に被害が出ていることがわかりました。
 
これに気づいたお隣のご主人が、そのおばあちゃんのお家を訪ねたところ、返事がありません。近所の人たちと連絡を取り合い、どうしたものかと探っていたところ、ようやく連絡がつきました。そして、転倒し骨折していたおばあちゃんを発見しました。
 
日本の多くの地域で、地域社会の高齢化が進んでいるといわれています。地域社会の高齢化は、端的に、その地域に住む老人人口が増えていると捉えられがちですが、身の回りで起こっていることを観察していると、その影響の具体例が見えてきます。
 
先ほどのおばあちゃんの事例では、問題点として、次の点があげられます。
 
(1)独居老人のため、災害時に、身の回りのことを自分でしなければならなかったこと。
(2)停電のため家の電話が使えず、身内との連絡がうまく取れなかったこと。
(3)隣家への台風被害に対し、即座に対応するのが難しかったこと。
 
往々にして、地域に暮らすご老人世帯に対しては、地域ごとに民生委員と呼ばれる方がいて、特に独居老人世帯を定期的に訪問するといった取り組みが図られています。しかし、いざというときに民生委員が対応するのは極めて難しく、だからこそ、このケースのように、ご近所の人たちが連携し合うことの重要性が増しています。
 
リスクマネジメントにおける「目に見えない資産」とは、このような「身近な人手による支援」です。災害対策基本法などの法律や、経済的な支援策では補えない部分を補完してくれる大切な役割を担っています。
 
高度経済成長期以降、日本の住宅政策は、結果として核家族を多く生み出しました。そして、時代を経て、現在、それまで都市からほど近い郊外と呼ばれる地域において高齢化が進んでいます。
 
高齢化社会における災害対策は、今後、この国においては急務の課題になってくると思いますが、法律でもなく、お金でもなく、もっと身近なところに、本当に大切なことがあるように思います。
 
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)


 

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