更新日: 2020.03.04 その他暮らし

48歳専業主婦「離婚したいけど、パートしかしていなくて離婚後の生活が不安」どうすればいい?

執筆者 : 寺門美和子

48歳専業主婦「離婚したいけど、パートしかしていなくて離婚後の生活が不安」どうすればいい?
【ご相談内容】
小川京子(仮名)48歳、18歳と19歳の子どもがいます。夫とはもう10年ほど家庭内別居状態です。性格がとにかく合わず、定年後一緒にいるのが嫌なので離婚を考えています。しかし、子どもが年子だったので手がかかり、仕事もしていなかったため、離婚後の生活がどうなるのか不安です。
 
収入は、お小遣い稼ぎのために年間60~70万円程度のパートをしています。夫は50歳、年収550万円です。私のような人は離婚すらできないのでしょうか?
 
寺門美和子

執筆者:寺門美和子(てらかど みわこ)

ファイナンシャルプランナー、相続診断士

公的保険アドバイザー/確定拠出年金相談ねっと認定FP
岡野あつこ師事®上級プロ夫婦問題カウンセラー
大手流通業界系のファッションビジネスを12年経験。ビジネスの面白さを体感するが、結婚を機に退職。その後夫の仕事(整体)で、主にマネージメント・経営等、裏方を担当。マスコミでも話題となり、忙しい日々過ごす。しかし、20年後に離婚。長い間従事した「からだ系ビジネス」では資格を有しておらず『資格の大切さ』を実感し『人生のやり直し』を決意。自らの経験を活かした夫婦問題カウンセラーの資格を目指す中「離婚後の女性が自立する難しさ」を目のあたりにする。また自らの財産分与の運用の未熟さの反省もあり研究する中に、FPの仕事と出会う。『からだと心とお金』の幸せは三つ巴。からだと心の癒しや健康法は巷に情報が充実し身近なのに、なぜお金や資産の事はこんなに解りづらいのだろう?特に女性には敷居が高い現実。「もっとやさしく、わかりやすくお金や資産の提案がしたい」という想いから、FPの資格を取得。第二の成人式、40歳を迎えたことを機に女性が資産運用について学び直す提案業務を行っている。
※確定拠出年金相談ねっと https://wiselife.biz/fp/mterakado/
女性のための電話相談『ボイスマルシェ』   https://www.voicemarche.jp/advisers/781 

悶々とした気持ちの整理をする

京子さんのような状況の方はとても多いと思います。子育てが一段落し、下の子どもが高校3年生、進学のめどがたった頃、ご相談にくる方がいます。浮気・DV・借金などの大きな問題はないものの「この先もこの人と一緒に暮らしていけるのかな?」という漠然とした不安を抱えた方です。
 
特に50代の中年男性は、社会での過渡期。男性更年期障害が始まることもあるかもしれません。ホルモンは人の体に左右するばかりか、感情も左右することが多いです。また、女性自身もホルモンのバランスが崩れる時期。出会った頃とは明らかに違う2人なのですから、うまく行かないケースは多いかもしれません。
 
まず、不安や悶々とした「気持ちの整理」をしてみましょう。その時、実践していただきたいのは、「ソフトな側面」と「ハードな側面」の2つの側面から考えることです。

<ソフトな側面>

・お互いの性格的な問題の整理と対策案
・自分自身の価値観の整理
・自分や家族の健康面
・離婚後の生きがい

<ハードな側面>

・離婚で失われるお金と保障
・金融資産の整理、棚卸し
・離婚後の住まい
・離婚後(老後)の生活費+α(必要なお金)
・離婚後の仕事

ソフト面から考える“離婚”診断

離婚を切り出すには「準備」が必要です。長年「離婚」ばかりを考えていると、ささいなことが起こるたびに「離婚していればこんなはずじゃなかった」とか「離婚したらこんな状況から抜け出せる」とか、どうしてもすべてを「離婚」というキーワードに結び付けて考えてしまいがちです。
 
離婚をするということは、「自由」を得て「解放」される反面、失うものも多いのです。そこをよく見極めないと、離婚後「ああ、こんなはずじゃなかった」という後悔が生じるかもしれません。
 
民間企業のアンケートでは、離婚した後に後悔する理由の第1位は「結婚生活に大きな夢を抱き過ぎていた」というものでした。ご主人がいることで、さまざまな面で自分だけが満たされないと思いがちですが、離婚すると案外自分だけではなかったのだ、世間の荒波は激しいと気づくことが多いようです。ではいったい、どのように考えれば良いのでしょうか。

<お互いの性格的な問題の整理と対策案>

(1)夫の長所・短所をリストアップします。
(2)自分の長所・短所をリストアップします(できたら、家族や友人など5人くらいにインタビューすると良いでしょう)。
(3)夫の長所は、この先の人生、あなたにとってどのようなギフトを与えてくれますか? また、夫の短所は、あなたにとってどんな影響を与えますか?
(4)あなたの長所は、離婚後、仕事に役立てることはできますか? あなたの短所は離婚後、あなたの人間関係に何か影響を与えますか?
 
まずは、上記を考えただけでも、何か気づきがあるかもしれません。離婚後の幸せは、どれだけ「精神的に経済的に自立できるか」がポイントです。人(夫)のせいにしている間は、離婚は厳しいと思います。

<自分自身の価値観の整理>

自分のこだわりについて考えていただきたいと思います。女性は、年を重ねるごとに「こだわり」が強くなります。筆者も離婚後、仕事や人間関係を広めるために、ここは捨てました。
 
また、物質的な生活のクオリティ(QOL=クオリティ・オブ・ライフ)は半減したといっても過言ではありません。それを受け入れられるのか、考えていただきたいと思います。例えば、身のまわりの物や、人間関係でも失われるものはあるかと思います。

<自分や家族の健康面>

自分や家族に病人や虚弱体質の人がいませんか? 特に実家サイドで、自分が金銭的に労働的に介護等をする必要性がある場合は、離婚を慎重に考えたほうが良いと思います。ご自身が虚弱体質なら、なおさら。虚弱体質の場合は、働く意欲があっても働けなくなる場合があります。治療費等の面も含めて考えてください。

<離婚後の生きがい>

離婚後、夫や家族の世話から解放された時、自分の支えになってくれるものはありますか? 専業主婦の方の場合、ここは大きな課題だと思います。失礼ですが、中には「夫の悪口が生きがい」のような方もお見受けします。ご相談者、京子さんもどちらかというとその傾向がありました。
 
また、受け答えの際にアドバイスをしても、まずは「いや、うちは違うんです」という枕詞から始まります。
 
専業主婦の現在は社会との接点が小さいですが、これが大きくなるとこのような頑固な側面は、人間関係を悪くする可能性があります。パートの時間をもう少し増やして、金銭的に余裕ができ、外に出て新しいことを始めてみたら、社会に出るためのリハビリにもなるかもしれません。

ハードな側面から考える“離婚後の経済事情”

精神的には強い人でも、人生100年時代には「離婚後の人生はあと何年あるのか」ということを考えないとなりません。2019年6月に「老後2000万円問題」がマスコミを賑わせ、老後のお金が年金だけでは足りなそうだ、ということを実感させられたでしょう。
 
専業主婦が離婚したい場合は、離婚後に仕事をしなくては生きていけない時代です。ハード面も考えてみましょう。

<離婚で失われるお金と保障>

保障で大きなものは、夫の会社の福利厚生を使えなくなることです。ここは注視していただきたいと思います。年金については、老齢年金は厚生年金部分が案分されます。それも婚姻期間中だけです。また、夫に万が一のことがあった場合、妻なら「遺族年金」が支給されますが、離婚した元妻には支給されません。

<金融資産の整理、棚卸し>

財産分与は、基本は半分です。また、相続で得たお金は個人の財産となります。結婚後、夫婦で築いた財産というのが分与の目安です。特に結婚後取得した不動産がある場合は、ローンの残債問題が残ると思います。

<離婚後の住まい>

賃貸なら、離婚後生涯の家賃が必要です。また持ち家の場合は、ローンの支払いが終わっていない場合はひと手間かかります。その煩わしさに耐えられるのかどうか、事前に調べておかれると良いと思います。

<離婚後(老後)の生活費>

離婚後、自分はいったいどのくらいお金が必要なのか、計画を立ててください。生活費だけでなく、趣味や娯楽も含めた金額です。自分で考えられない場合は、ファイナンシャルプランナーに相談しても良いと思います。

<離婚後の収入>

離婚を考える多くの専業主婦が悩むことの1つが、離婚後の収入。一般的には収入=仕事です。京子さんの場合、約20年前に会社を退職し、結婚。
 
その後、子育てのため専業主婦になりました。子どもが大きくなって教育費がかかるようになったので、自分のお小遣いくらいは稼がなくてはということで、スーパーでレジ打ちをしています。離婚後、特にしたい仕事もないそうです。
 
この20年で社会は大きく変わりました。どんな仕事をするにもPC操作は必要ですが、京子さんは「携帯メールしかできない」とのこと。まずは社会勉強も含めて、PC教室に通いました。まずは、どんなことでも良いので「一歩を踏み出す」ことです。そこから、自分に合うこと、合わないことを見つけていくことが大事です。

離婚検討している専業主婦は、厚生年金加入事業所へ転職しよう

専業主婦の方々は、扶養控除を考えて働く時間を抑えていることもあるでしょう。まずはその枠を外すところから始めてみませんか? 「社会保険料を支払うと“手取り”が減るのでは」と心配される方もいます。しかし、離婚を考えるなら、そこを考えるのはおかしな話です。
 
会社によってはパート社員でも、希望すれば社会保険・厚生年金に加入できます。現在はおおむね従業員が501人以上の企業が厚生年金加入事業所ですが、今後大きく変わります。2022年には101人以上へ、2024年には51人以上へと変化していき、労働時間も大きく引き下げられていく予定です。
 
京子さんのパート先は、大手のスーパーチェーンでした。会社に確認してもらったところ「パート社員でも厚生年金・社会保険に加入できる」とのこと。まずは、あれこれ考える前に、今のパート収入をアップすることにしました。
 
もし、現在働いている会社が厚生年金加入事業所でなければ、働く先を変えてみるのも1つの方法です。時給だけで考えず、パートも「福利厚生」で考える時代になったようですね。

京子さんのゴール

京子さんより「離婚するのは結婚するより難しいと言いますが、今回実感しました。離婚について深く考えていなかったのですが、いざ考えてみると課題がたくさん。しかし、課題がはっきりしたので、悶々とした気持ちはなくなり、前を向こうと思います」とのことでした。
 
前述のアドバイスの他に、財産を増やすための資産形成についても触れ、離婚しようがしまいが自立できる方法もお伝えしました。無謀な離婚は自分を苦しめるだけです。しっかり準備をしてください。
 
執筆者:寺門美和子
ファイナンシャルプランナー、相続診断士


 

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