更新日: 2020.07.06 子育て

新型コロナの影響で学費を納めることが困難に、何か救いの手はありませんか?

執筆者 : 辻章嗣

新型コロナの影響で学費を納めることが困難に、何か救いの手はありませんか?
新型コロナウイルス感染症対策の影響で、実家の両親が休職を余儀なくされたり、アルバイト先が休業したりと、学生生活を続けることが困難となっている学生も少なくありません。そこで、今回は、2020年4月にスタートした「高等教育の修学支援新制度」について解説します。
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

経済的困難に直面する学生を支援する「高等教育の修学支援新制度」

新型コロナの影響で収入が大きく減った場合には、給付型奨学金と授業料の減免がセットになった「高等教育の修学支援新制度」の利用を検討してみましょう。

1.高等教育の修学支援新制度とは

2020年4月から新たにスタートした「高等教育の修学支援新制度」とは、住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯の学生が高等教育を受けることができるように、授業料等の減免と給付型奨学金の支給を組み合わせた支援制度です(※1)。
 
この制度を利用するには、利用を希望する学生が高校等を通じて日本学生支援機構に大学等進学前に申請手続きを行う「予約採用」が一般的です。
 
しかしながら、新型コロナウイルス感染症対策の影響で、学生の生活を維持している世帯の家計が急激に変化した場合には「家計急変」を理由として大学等在学中であっても申し込むことができるようになっています(※2、3)。

2.利用できる要件は

この制度を利用するためには、以下の要件を全て満たすことが求められます。
 
【対象機関(確認大学等)】
国内の大学、短期大学、高等専門学校および専修学校であって、国や地方公共団体から対象となることの確認を受けた学校(確認大学等)(※4)に通学する学生が対象となります。
 
【学業成績等に係る基準】
学業成績等が図表1の基準を満たしていることが求められています。
 
【図表1】


 
ただし、修業年限で卒業または修了できない場合や、習得した単位数が標準単位数の5割以下の場合または出席率が5割以下の場合など、学習意欲が著しく低い状況にある学生は利用することができません。
 
【家計に関わる基準】
家計に関わる基準は、「収入基準」と「資産基準」の両方を満たす必要があります。
 
<収入基準>
収入基準は、学生の生活を維持する世帯(生活維持世帯)の前年の収入・所得に基づく課税基準額により、区分1から3に分けられて設定されており、区分に応じた支援を受けることができます。ただし、「家計急変」の場合は、急変後の収入で判断されます。収入基準の目安は、図表2のとおりとなります。
 
【図表2】

 
また、生活維持者の資産合計が、図表3の基準を超える場合は支給対象とはなりません。
 
【図表3】

 
収入基準の判定は、課税基準額などにより設定されており、世帯構成や社会保険料の支払い状況などにより異なりますので、学生支援機構が提供している「進学資金シミュレーター」(※5)を利用して、収入基準に該当するか確認するようにしてください。

3.授業料の減免額と奨学金の給付額

授業料の減免額と給付型奨学金の支給額は、世帯の所得金額に基づく区分に応じて、区分1(住民税非課税世帯)を満額として、区分2が2/3、区分3が1/3の額の支援を受けることができます。
 
【図表4】


 
【授業料の減免額】
区分1の授業料減免額(年額)は、学校の種別等により図表5の額が上限となります。したがって、区分2はその2/3、区分3はその1/3の額が上限となります。
 
【図表5】

 
【給付型奨学金の支給額】
また、区分1の給付型奨学金は、学校の種別や通学形態に応じて図表6の金額(月額)が支給されます。したがって、区分2はその2/3、区分3はその1/3の額となります。
 
【図表6】

4.新型コロナウイルス感染症対策で利用できる特例

一般的に「家計急変」を理由として申し込みができる事由は、図表7のとおりとなっています。しかしながら、新型コロナウイルス感染症対策により家計が急変した場合であって、図表7のAからCのいずれにも該当しない場合は、Dの事由に該当するものとして取り扱われることになっています(※2)。
 
【図表7】


 
そして、D・被災時の事由による場合に必要となる罹災証明書に代わるものとして、図表8に示す、新型コロナウイルス感染症対策に関わる影響で収入減少があった方に対する国や都道府県などが行う公的支援の受給証明書や、これに類するものとして認められる公的証明書があれば、家計急変として申し込むことができます(※2、6、7)。
 
【図表8】

 
なお、対象となる公的支援の内容は、今後変更されることが考えられますので、学生支援機構のホームページ(※2)で最新情報を確認してください。

5.制度を利用するための方法は

この制度を利用するためには、在学する学校を通じて日本学生支援機構に給付型の奨学金を申請することになります。その手順は、図表9のとおりです。
 
【図表9】


 
また、申し込みに必要な書類は、図表10のとおりです(※3)。なお、家計急変事由に関する証明書を提出できない場合は所定の申告書(※8)があります。
 
【図表10】

 
なお、これらの書類に加えて、前述の進学資金シミュレーター(※5)の「給付奨学金シミュレーション(保護者の方向け)」を実施した結果のコピーを提出することが求められます。
 
このシミュレーションを実施する場合は、家計急変の事由が生じた生計維持者の「給与収入」または「給与・年金以外の所得」欄には、収入が減少した月(1ヶ月)の給与収入または給与・年金以外の所得を12倍したものを入力します(※2)。
 
なお、6月末までは「重点支援期間」とされており、この期間までに申し込めば、申し込みのあった月の分まで遡って支援が開始されますので早めに申請することをお勧めします(※9)。

まとめ

新型コロナウイルス感染症対策の影響を受けて収入が減少したことにより退学を考えている皆さん。あきらめることなく、4月からスタートしている「高等教育の修学支援新制度」を利用して学業を継続し、将来の夢を叶えましょう。
 
[出典]
(※1)文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
(※2)独立行政法人 日本学生支援機構「新型コロナウイルス感染症に係る影響を受けて家計が急変した方への支援」
(※3)独立行政法人 日本学生支援機構「給付奨学金案内(家計急変)」
(※4)文部科学省「支援の対象となる大学・短大・高専・専門学校一覧」
(※5)独立行政法人 日本学生支援機構「進学資金シミュレーター」
(※6)独立行政法人 日本学生支援機構「新型コロナウイルス感染症による家計急変『事由発生に関する証明書類』に関するQ&A」(令和2年5月1日版)
(※7)内閣官房「新型コロナウイルス感染症に伴う各種支援のご案内」
(※8)独立行政法人 日本学生支援機構「(様式)新型コロナウイルス感染症の影響を事由とした家計急変における、公的支援の証明書を提出できない場合の申告書」
(※9)独立行政法人 日本学生支援機構「新たな給付奨学金制度に係る家計急変に関するQ&A【令和2年5月1日版】」
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士


 

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