更新日: 2020.08.28 その他暮らし
コロナで収入減。養育費の変更は可能なのか?
事情変更があった場合でも、一度決めた養育費は変更できないのでしょうか。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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養育費のポイント
養育費は、子どもの監護や教育のために必要な費用です。具体的には、衣食住に必要な経費、教育費、医療費などの費用です。父母はこれら費用について、自分自身の生活と同じ水準を保障する義務(生活保持義務)があります。
この義務は、負担すべき人にたとえ経済的な余力がなくても、その資力に応じて負担しなければなりません。資力がないからといって免除されません。
養育費は、子どもを監護している親が、他方の親から受け取ることができます。離婚によって親権者でなくなったとしても、親には変わりありませんので養育費の支払いの義務は免れません。また、養育費は子どもの権利なので、父母の間で「養育費を支払わない。受け取らない。」といった約束をしていても、子どもが養育費の支払いを受ける権利を奪うことはできません。
養育費を受け取ることができる期間は、子どもが経済的・社会的に自立するまでです。一般的には成人になる20歳までですが、子どもが成年に達したとしても、経済的に未成熟である場合には、養育費を支払う義務を負うことになります。
このため、法改正で成年年齢が引き下げられても、養育費の支払期間が当然に「18歳に達するまで」ということになるわけではありません。
養育費の取り決めをする際、(1)養育費の金額、(2)支払期間、(3)支払時期、(4)振込先などを具体的に決め、書面に残すことが大切です。書面を強制執行認諾文言のついた公正証書で作成しておけば、実際に支払ってもらえない場合に速やかに強制執行の手続きを利用することができるからです。
なお、離婚した後でも、養育費を取り決めることができます。
養育費の金額は、基本的には話し合って決ますが、その際には、東京および大阪の家庭裁判所の裁判官による研究報告である「算定表」が参考になります。「算定表」は2人の親の収入をもとに、子どもを扶養していない親が支払う標準的な金額を示したものです。
なお、話し合いがうまくいかない場合は、家庭裁判所の家事調停手続きを利用することができます。
養育費の増減は可能?
養育費は、子どもが経済的・社会的に自立するまで受け取る権利があります。長ければ20年近くになります。その間、父母の経済状況が変わることは十分あり得ます。一度決まった養育費であってもその後に事情の変更があった場合には養育費の額の変更は可能となっています。
例えば、子どもが大学に進学するなど、取り決めた金額では子どもの扶養ができなくなったときなどの場合、支払う親の負担を増やしてもらうことができるでしょう。一方、失業などで支払う親の収入が減った、再婚によって支払う親の扶養家族が増えた、受け取る親の収入が増えたときなどは養育費の減額が可能です。
養育費の増減の手続き
養育費を増額または減額する場合、当事者で話し合いをします。話し合いで合意すれば、合意内容を公正証書などの文章にします。合意が得られない場合は、家庭裁判所に「養育費の額の変更を求める調停」を申し立てます。
申し立てに必要な費用として、収入印紙1200円分(子ども1人につき)と連絡用の郵便切手1007円分(140円×1枚、84円×8枚、20円×5枚、10円×8枚、2円×5枚、1円×5枚)が必要です。
調停手続きでは、調停委員が、養育費がどのくらいかかっているのか、申立人および相手方の収入がどのくらいあるかなど一切の事情について、当事者双方から事情を聞いたり、必要に応じて資料等を提出してもらうなどし、それらをもとに合意に至るように解決策が提示されます。
合意に至らず、調停が不成立になった場合には自動的に審判手続きが開始され、裁判官が一切の事情を考慮して審判をします。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。