更新日: 2020.12.16 子育て

奨学金の繰上返還、いったいどのくらいメリットがあるの?

奨学金の繰上返還、いったいどのくらいメリットがあるの?
近年、大学生の半数近くが奨学金を借りているという状態が続いています(※1)。卒業して、借りる側から返す側になったとき、知っておきたいのが「繰上返還」という仕組みです。通常より多めに返すことで早く返済が終わり、長期的に見たときに総返済額を少なくできるかもしれません。
馬場愛梨

執筆者:馬場愛梨(ばばえり)

ばばえりFP事務所 代表

自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強。銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。

過去の自分のような、お金や仕事で悩みを抱えつつ毎日がんばる人の良き相談相手となれるよう日々邁進中。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。平成元年生まれの大阪人。

https://babaeri.com/

奨学金の繰上返還とは?

通常、借りたお金を返すときは「返済」と言いますが、日本学生支援機構(奨学金事業を運営する団体)では「返還」と呼んでいます。
 
奨学金には、お金をもらえる「給付型(返還不要)」とお金を借りられる「貸与型(返還必要)」の2種類があります(※2)。貸与型の奨学金を利用していた場合、一般的には卒業後にお金を返していくことになります。
 
繰上返還は、普段毎月返しているお金に加え、任意の金額を任意のタイミングで追加して返すことができる制度です。多めに返せば、それだけ返還にかかる期間を短縮できます。返還完了時期が早まる(繰り上がる)ので「繰上返還」という名前になっています。
 

繰上返還のメリットは?

返還が必要な「貸与型」の奨学金には、利子がつかないタイプ(第一種)と利子がつくタイプ(第二種)の2種類があります(※3)。利子がつかないタイプは、繰上返還してもしなくても返還が必要な総額は変わりません。ただ返還が早く終わるというメリットがあります。
 
利子がつくタイプの奨学金を利用していた方は、早く返せば返すほど利息の負担が少なくて済むため、返還総額も抑えられます。具体例を見てみましょう。
 
合計120万円を借りて、年利1.9333333%で144回(12年)にわたって毎月返還していく人が、34回目で10回分まとめて返還する場合、返還金額は8万1043円になります。繰上返還しなかった場合の10回分の返還金額は9万4230円ですので、繰上返還することで「1万3187円」利息の負担が軽くなります(※4)。
 
ちなみに、奨学金の繰上返還も口座からの引き落としで行え、手数料は不要です(※5)。
 
繰上返還することでどれくらいメリットが出るのかは、奨学金を借りている条件によって異なります。高い金利で借りている人、あるいは残りの返還期間が長い(できるだけ早い段階で返還する)ほど、繰上返還のメリットが大きくなります。
 
ただ、最近は以前に比べ奨学金の金利が低い傾向があります。2019年3月に貸与が終了した人の年利は基本月額部分で、返還期間中ずっと利率が変わらない固定方式なら「0.07%」、定期的に利率を見直す方式なら「0.002%」です(※6)。
 
適用金利がここまで低いと、繰上返還しても軽減される利息がほとんどありません。
 
それならば、手元の現金を大幅に減らしてしまうより、今後予測される出費に備え現金を手元に置いておく、自分の収入やスキルを上げるための挑戦に使う、投資資金にしてもっと高い利率で運用して増やす、など別の使い方を考えたほうが有意義かもしれません。
 

繰上返還ってどうやるの?

繰上返還には手続きが必要です。日本学生支援機構では電話、郵送、FAXでも手続きできます(※7)が、「スカラネット・パーソナル」というサイトから申し込めば、24時間どこでもオンラインで手続きできて便利です(※8)。
 
繰上返還する月を指定したり、返す金額を「全額を一括」、「一部を金額指定」、「〇回分など回数を指定」などの中から指定すること等ができます(※9)。自分のライフプランに合った返還方法を選びましょう。
 

奨学金の繰上返還、実行する前にシミュレーションを

繰上返還は、貸与型で利子のつくタイプの奨学金を借りている方にとっては、支払う利息を軽減させる効果があります。ただ、金利条件によっては、手間をかけて手元の現金を減らした割にそこまでメリットが出ないこともあります。
 
実行する前に、一度自分の借入状況を確認し、繰上返還した場合にいくら利息が軽減されるのかシミュレーションして考えてみるのがおすすめです。日本学生支援機構のサイトやスカラネット・パーソナルなどでチェックできますよ(※10)。
 
(※1)日本学生支援機構「平成30年度 学生生活調査結果」
(※2)日本学生支援機構「JASSOの奨学金とは」
(※3)日本学生支援機構「奨学金の種類」
(※4)日本学生支援機構「繰上返還例」
(※5)日本学生支援機構「概要」
    日本学生支援機構「繰上返還の申込方法」
(※6)日本学生支援機構「各年度貸与利率一覧」
(※7)日本学生支援機構「奨学金に関するよくあるご質問」
(※8)日本学生支援機構「繰上返還の申込方法/スカラネット・パーソナルによる申込」
(※9)日本学生支援機構「【参考】繰上返還申込書記入例」
(※10)日本学生支援機構「奨学金貸与・返還シミュレーション」
    日本学生支援機構「スカラネット・パーソナルへようこそ」
 
(出典)日本学生支援機構「繰上返還」
 
執筆者:馬場愛梨
ばばえりFP事務所 代表
 

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