月利最大20%?仮想通貨にまつわる投資詐欺の手口とは(1)

配信日: 2021.01.05

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月利最大20%?仮想通貨にまつわる投資詐欺の手口とは(1)
暗号資産(仮想通貨)にまつわる詐欺が後を絶ちません。
 
預けておくだけで月利7%運用するといってだまし取ったり、上場できるかどうか分からないICO(新規仮想通貨公開)を必ず上場するといって資金をだまし取ったり、儲かるとコミュニティに勧誘し、参加者に次々と高額な情報を買わせるものだったり。インターネットで募集がされる場合は、「怪しい」と思ったら乗らなければいいのです。
 
しかし、マルチレベルマーケティングの形を取っているものは、リアルで知人から紹介されることが多いので、断り切れないこともあります。運用は怪しく思える場合でも、紹介することで報酬が得られると、とても魅力的に思えますね。
林智慮

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

仕組みが分からないものに投資をしない

60歳の主婦A子さんは、知人に誘われてネットワークビジネスを始めようかどうか迷っています。すごく儲かると聞いて興味を持ったので、誘われたセミナーに参加し、話を聞いてやってみたいと思いましたが、今まで投資で痛い思いをしたことがあり、やっても大丈夫かどうかをファイナンシャルプランナーのBさんに相談しました。
 
「セミナーの講師をした△△さん、すごく儲かっているって。その人が、皆が儲かるっていうのに、やらないと損じゃない?」
「その投資って、どんな仕組みで儲けられるの?」
 
BさんはA子さんにたずねます。
 
「アービトラージ。直接、現金でなく、ビットコインで投資するのだけれど、最低1000ドル分からね」

A子さんが投資をしようとしているのは
  • 暗号資産やスポーツ、コモディティのアービトラージという運用方法で、入出金はビットコインを利用し、最低1000ドル分から投資が可能。
  • 元金は引き出せない。
  • 投資をするには紹介者が必要で、参加したらその紹介者には紹介報酬が入り、もともとその紹介者を紹介した人にも報酬が入る。

 
というものです。月利7%~10%の利益、最大で20%の場合もあるとか。でも、A子さんは、儲けが出る仕組みが分かっていません。
 

アービトラージで儲ける仕組み

「アービトラージは絶対に損をしないっていうし。だから紹介しなくても儲かるよ。預けたお金は出せないけれど、1年たたないうちにモトは取れると聞いたし、その後は儲けだけになる。」というA子さん。
 
Bさんは、「アービトラージって、どんな仕組みか知っていますか?」とA子さんに問いかけます。しかし、A子さんは、「アービトラージで稼げる」「紹介しなくても損をしない」「人工知能(AI)でお任せ運用だから大丈夫」と言うだけで、仕組みについては知らないようです。
 
暗号資産(暗号通貨)であるアービトラージは、取引所間の価格差を利用し、取引所で暗号資産を買って、より高い他の取引所で売るとその差額が利益になるというものです。後に同一取引所で3種類の暗号資産により行います。
 
スポーツアービトラージは、ブックメーカーごとにオッズ(当たった場合の倍率)が違うことを利用して、どちらが勝っても利益が出るように掛けます。
 
コモディティは、同じ動きをする異なる2つの銘柄の価格差の拡大や縮小が、いつもの価格差に戻ることを利用し、利益を得ます。いつもに比べて離れたり、近づいていたりする場合に、割高なら売り、割安なら買いを入れ、いつもの状態に戻ったら反対売買で決済します。
 
確かに、アービトラージは負けない運用ができます。
 
しかし、リスクを取らない分、リターンも大きく取れません。これだけで月利(年利ではありません)20%の利回りには、到底届きません。
 

では、月利20%の利益はどこから得られる?

マルチレベルマーケティングは組織的な販売の形態で、ピラミッド型をしています。
 
紹介による報酬があり、自分が紹介した人が参加することで自分に報酬が入るのはもちろん、自分の上層部の人にも報酬が入ります。
 
自分の下層部に人がどんどん増えるほど、自分は何もしなくても報酬が入ってくる仕組みのため、儲かっているトップメンバーも勧誘に力を注いでいます。マルチレベルマーケティングによる報酬が大きいのは分かりました。
 
でも、どこから報酬のお金が入ってくるのでしょうか。
 
投資そのものは大きく稼げる方法ではないのに。他にも、元金を出すことができないというのも気になります。ポンジスキームかもと、BさんはA子さんに忠告します。
 
海外の会社でも、日本に住んでいる人を相手に金融商品取引行業をするには、登録が必要です。しかしBさんが調べたところ、その業者は、日本において金融取引業の登録がされていません。
 
BさんはA子さんに、何度もやめるよう忠告しました。しかしA子さんは投資する気満々です。
 
「最低の約1000ドル(その時点で約10万円)捨てたと思って始めてみる!」
「やった者だけが儲けられるから。やらなきゃ何も変わらない」と、聞く耳を持ちません。
 
A子さんのその後はどうなったのでしょうか?(2)に続きます。

 
(参考・引用)
国民生活センター「暗号資産(仮想通貨)」(2020年1月6日更新)
国民生活センター「仮想通貨に関する様々なトラブルにご注意」(2018年4月26日公表)
金融庁「詐欺的な投資勧誘にご注意下さい」
 
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者
 

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