更新日: 2021.02.10 その他暮らし
ひとり親世帯を支援する〈ひとり親家庭等医療費助成制度〉の条件と対象者とは?
しかし、1人でどれもこれもやるには、限界があります。国には、子育て、生活、就業、養育費確保、経済支援など、さまざまな支援があります。国による支援のほか、独自の支援をしている市区町村もあります。
執筆者:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
親の分も支援、ひとり親家庭等医療費助成制度
ほとんどの市区町村では、生まれてから15歳になって最初の3月31日(中学3年の3月31日)までは、子どもの医療費が無料になっています。
子ども医療費助成制度(各市区町村により制度名が異なります)により、お子さまが病院にかかったときに支払う窓口自己負担分を、各自治体が助成しているためです。自治体独自の制度ですから、高校3年生の3月31日まで無料になる自治体もあります。
例えば、岐阜市の場合、中学3年生の3月31日まで子どもの医療費が無料ですが、隣接する大垣市では、高校3年生の3月31日まで子どもの医療費が無料になります。どちらの市も、制度を利用する際に所得制限はありません。
ひとり親家庭の場合は「ひとり親家庭等医療費助成制度」があり、18歳になって最初の3月31日まで窓口での自己負担分を支援されます。さらに、お子さまだけでなく、子どもを監護する親の自己負担分も軽減されます。
所得制限があります
ただし、ひとり親家庭等医療費助成制度には、子ども医療費助成制度と違い所得制限があります。例えば、お子さま1人の場合、母または父の所得制限は230万円、扶養義務者等の所得制限は274万円。お子さま2人の場合、母または父の所得制限は268万円、扶養義務者等の所得制限は312万円。
以下、お子さまが1人増えるごとに、それぞれ所得制限が38万円ずつ増えます。子ども医療費助成制度、ひとり親家庭等医療費助成制度も、お住まいの市区町村の福祉医療課へお問い合わせください。
世帯分離は慎重に
子ども医療費助成制度も、ひとり親家庭等医療費助成制度も、自己負担の部分を助成するものです。退職後は、健康保険の任意継続や国民健康保険に加入する等、公的保険に加入しなければなりません。国民健康保険に加入する場合は、申請により保険料が減免される制度があります。
例えば、岐阜市の場合、前年中の所得が33万円以下の世帯は7割軽減、他にも5割軽減、2割軽減とあります。ほかにも、会社都合退職の場合に軽減制度があります。他に、罹災や病気、自己破産等で減免できる場合があります。
ところで、シングルマザー(ファーザー)となるのを機に退職して、実家にお世話になる方もいらっしゃるでしょう。国民健康保険料の減免は、前年の世帯全体の収入で判断されます。よって、ひとり親本人が要件を満たしても、同居する祖父母の収入により世帯収入では要件を満たさないこともあります。
また、児童扶養手当は前年中の所得で支給額が決まります。ひとり親本人の所得では支給される場合であっても、同居する親御さんの所得が限度以上あれば支給停止となってしまいます。
どちらの場合も、同居でも「世帯分離」であれば親御さんの所得が合算されませんが、各自治体によって世帯分離の要件が異なります。もし、ひとり親の親御さん(子どもの祖父母)が協会けんぽや組合健保等の健康保険に加入されている場合、親御さんの扶養に入るのも1つの方法です。
健康保険の扶養は、向こう1年の収入で判断されます。収入要件は、年間収入130万円未満、かつ、同居の場合は被保険者の年間収入の1/2未満、別居の場合は被保険者の援助額より少ないことです。
バリバリ働いて収入があった方でも、出産退職してこの先しばらくは働けない場合、要件を満たせば被扶養者となることができます。世帯分離にしても、扶養に入る場合にしても、他の支援に影響がないかどうか市区町村に相談して決めましょう。
(参考・引用)
厚生労働省「ひとり親家庭等の支援について」
岐阜市「ひとり親家庭医療費助成制度」
岐阜市「国民健康保険料の計算」
日本年金機構「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に移動があったときの手続き」
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者