更新日: 2021.02.24 その他暮らし
離婚時の慰謝料、相場は決まっているの?
実際、離婚経験のある筆者もそうでした。長い裁判の終盤で、弁護士より「慰謝料いくら請求しますか?」と聞かれましたが、正直見当もつきませんでした。むしろ「えっ! 弁護士さんが決めてくれないの?」と驚いたくらい。なぜなら、元夫に未練たっぷりだった筆者は、慰謝料請求でこれ以上嫌われたくなかったから。
しかし、「そんな甘いことを言ってはいけない」と今は思います。人生100年時代、離婚後の人生は長く「老後のお金」は死活問題なのです。
執筆者:寺門美和子(てらかど みわこ)
ファイナンシャルプランナー、相続診断士
公的保険アドバイザー/確定拠出年金相談ねっと認定FP
岡野あつこ師事®上級プロ夫婦問題カウンセラー
大手流通業界系のファッションビジネスを12年経験。ビジネスの面白さを体感するが、結婚を機に退職。その後夫の仕事(整体)で、主にマネージメント・経営等、裏方を担当。マスコミでも話題となり、忙しい日々過ごす。しかし、20年後に離婚。長い間従事した「からだ系ビジネス」では資格を有しておらず『資格の大切さ』を実感し『人生のやり直し』を決意。自らの経験を活かした夫婦問題カウンセラーの資格を目指す中「離婚後の女性が自立する難しさ」を目のあたりにする。また自らの財産分与の運用の未熟さの反省もあり研究する中に、FPの仕事と出会う。『からだと心とお金』の幸せは三つ巴。からだと心の癒しや健康法は巷に情報が充実し身近なのに、なぜお金や資産の事はこんなに解りづらいのだろう?特に女性には敷居が高い現実。「もっとやさしく、わかりやすくお金や資産の提案がしたい」という想いから、FPの資格を取得。第二の成人式、40歳を迎えたことを機に女性が資産運用について学び直す提案業務を行っている。
※確定拠出年金相談ねっと https://wiselife.biz/fp/mterakado/
女性のための電話相談『ボイスマルシェ』 https://www.voicemarche.jp/advisers/781
慰謝料に決まりはない
別居離婚にまつわるお金では、「婚費」や「養育費」「財産分与」などを思い浮かべる方が多いと思います。これらの相場は裁判所のホームページで確認ができ、「養育費・婚費算定表(※)」と呼ばれています。
夫の年収を縦軸に、妻の年収を横軸にした「改定標準算定表」(令和元年版)のことですが、令和元年12月23日に改定され、より具体的になりました。とはいえ、都市要件も加味されておらず、現実とはかけ離れたものだと筆者は考えています。
「財産分与」は、婚姻関係が始まってから築いた資産の半分権利があります。しかし、そこに貢献度が加味されていくのです。一方「慰謝料」は、法律で決まっていたり、裁判所から提案されていたりする基準はありません。過去の判決や事例を基に決めることが多く、弁護士を依頼している場合は、弁護士の手腕にもよると思います。
慰謝料には、上限にも下限もありません。中には「別れられるだけでよい。慰謝料なんていらない」という人もいます。つまり、夫婦が同意したらそれでOK。ちなみに、司法の手にかかった場合は、50万~500万円の範囲が多く、それ以上はまれとのことです(金額は年収による)。
慰謝料の相場はどうなのか
前述のとおり、慰謝料の金額に決まりはないのですが、相場はどうなのでしょうか。夫婦の世帯収入は各家庭で違うので、「相場」の金額というのを提示するのは難しいかと思います。しかし、基準となる「事情」や「状況」はあります。
○婚姻期間
○離婚原因
○夫婦それぞれの落ち度
○反復性
○精神的・肉体的苦痛
これらによって、増減するようです。また、浮気の場合は、夫婦関係が破綻していたのか、破綻していた場合浮気は破綻した前後どちらなのか、などで金額が増減するようです。しかし逆に、これが調停や裁判になると争点となってしまいます。
慰謝料をいくらもらうかではなく必要なこととは
ファイナンシャルプランナーとして、「慰謝料」をいくらもらうか否かより、大事なことがあるかと思います。それは「離婚後いくらお金が必要なのか」ということです。離婚原因がお互いにある場合は仕方がありません。しかし、どちらかが一方に原因がある場合、原因を作ったほうは、別れる相手の離婚後の精神的負担と経済状況を考え、支えるべきだと筆者は思います。
アメリカのいくつかの州や他国では、たとえ子どもがいなくても、妻に対しての経済的な保障があるそうです。日本は養育費のみ。子どものいない妻には保障はありません。特に現在の40代以降の女性は、結婚後退職してしまった方が多く、離婚後の経済リスクがとても大きいのが現実です。
家督制度が続いた日本の価値観の後遺症で、夫に浮気をされてしまったり、中には追いだされたりする人もいます。まだ、成人していない子どもがいる場合は、さらに負担は多くなります。特に、最近の教育費は負担が大きく、子どもが有名校・人気校に通っている場合は、驚くほど細かいお金がかかります。「学校指定○○」というグッズ等の支出は、母子家庭にとっては過酷なものだと思います。
養育費では「私学加算」という考え方があるものの、実際にはもっとお金は必要です。親の離婚後、自分の将来に悩んで、病気になったり、自傷してしまったりする子もいます。とはいえ、司法ではそこは解決できず、本当に心が痛みます。
ライフプランニングで人生を見つめる
離婚後の生活を豊かにするために、実践していただきたいことがあります。それは「ライフプランイング」(キャッシュフロー)を作成することです。
ライフプランニングとは、未来に必要なお金をシミュレーションするもの。このフロー表と向き合うことで、離婚後にするべきことがみえてきます。
もし、離婚時の慰謝料の話し合いで妥協しそうになったら、この表で「必要なお金」が分かれば、行動が変わるかもしれません。交渉をもっと頑張ったり、働き先の年収を決めたり、せめて資格を取得するための費用を請求するなど、強いマインドが設定される可能性を秘めています。
これを行ったからといって、残念ながら、必ずその交渉が成立するとは限りません。しかし、その時の「強さ」と「学び」により、将来の幸せな道を切り開いていくマインドを整える人が多いのです。
慰謝料の相場を調べることも必要かもしれませんが、それよりも離婚後の自分に必要なお金の金額を知り、行動計画を立てる。そして、収支を考えて、人生を立て直す。不足している分は、スキルを身につけるか、現実に添わせる。
このような、泥臭い行動をしているうちに、「強さ」と「学び」はよりいっそう強固なものとなり、現実を客観的に見つめ悔いのない行動を取ることができるのではないでしょうか。
(※)裁判所「養育費・婚姻費用算定表」
執筆者:寺門美和子
ファイナンシャルプランナー、相続診断士