住宅ローン控除の見直しで、私たちにどんな影響がある?
配信日: 2021.05.28
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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住宅ローン控除の変更点
住宅ローン控除は、住宅を取得してから基本的には10年間、税金に関する控除を受けられるという制度です。しかし、2021年の税制改正によって、住宅ローン控除において控除対象となる物件の床面積や控除期間が変更となりました。詳しくは以下のとおりです。
床面積要件の緩和
まず大きな変更点が、床面積の適用条件です。住宅ローン控除には延床面積の要件が定められており、改正前は延床面積が「50平方メートル以上」の住宅が控除の対象となっていました。しかし、今回の改正により、延床面積の要件が変更され、「40平方メートル以上50平方メートル未満」となりました。
ただし、所得条件に注意が必要です。50平方メートル以上の床面積で控除を受ける場合、合計所得額は3000万円以下という条件がありますが、40平方メートル以上50平方メートル未満で控除を受けられるのは、合計所得額が1000万円以下の場合に限られています。しっかりと覚えておきましょう。
入居期限の延長
消費税増税による特例措置の対象が導入され、消費税10%で住宅を購入した場合の住宅ローン控除適用期間が13年に延長されました。しかし、改正前においては2019年10月1日~2020年12月31日の間に入居するという要件を満たさなければなりませんでした。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響などにより、住居の購入や入居が予定どおり進まない状況を考慮し、購入そして入居時期の要件が変更され、対象となる期間が延長されることとなりました。
改正後においては、新築住宅の場合は2020年10月1日~2021年9月末まで、中古住宅の取得、増改築等の場合は2020年12月1日~2021年11月末までに契約を行った場合に、入居期限が2022年12月末日までに延長されることとなりました。
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気になる今後の動向
2021年の税制改正により、住宅ローン控除の適用による税額控除の対象になったり、控除額が多くなったりする人もいらっしゃるのではないでしょうか。ただし、今後の動向には気をつけておく必要があります。
具体的には、2022年度の税制改正の内容に注意しておきましょう。内容しだいでは、控除額が大きく減少する可能性があります。
もともと住宅ローン控除はマイホーム購入支援のための措置で、ローンを組むことによって発生する金利の負担を軽減するために設けられた制度です。「年末の住宅ローンの残高の1%」「所得税と住民税の合計額」「控除の上限額40万円」のうち、最も少ない金額が控除額となります。この中で制度の見直しに大きく関係するのは「年末の住宅ローンの残高の1%」です。
この1%というのは金利を想定した割合となっています。2021年4月現在の各金融機関の住宅ローン金利を見ると、低いところで0.3%台となっており、1%を上回っているところもあるものの、大半の金融機関において1%を下回っている状態です。
つまり、年末の住宅ローンの残高の1%の控除を受ける場合、現在の金利の状況では、控除額が金利負担額以上になるということです。
2022年の改正においては、「金利負担を軽減させる」という住宅ローン控除の本来の目的以上の過剰な控除を行っているという点を問題視し、金利負担以上の控除が受けられないような制度に見直す可能性が高いといわれています。
具体的には、「年末の住宅ローンの残高の1%」もしくは「1年に支払う利息金額」のどちらか少ない額を控除額となる可能性があります。状況によっては、結果的にこれまでよりも控除額が少なくなる可能性があることを理解しておきましょう。
住宅ローン控除以外にもある! 住宅購入に関係する2021年度税制改正の内容
今回の税制改正には、住宅ローン控除以外にも住宅購入に関する制度の変更があります。以下に挙げる、変更となった制度の特徴や変更点をしっかりと理解し、今後これらの制度を利用する際には十分注意するようにしてください。
すまい給付金
住まい給付金とは、消費税率引き上げによる住宅取得者の負担を緩和するために、現金を給付する制度です。住宅ローン減税は、課税される所得金額が低く、所得税や住民税が少ない場合は、減税によって受けることができる効果が少なくなります。
その点、すまい給付金は一定の要件をクリアする必要があるものの、課税所得金額が少ないほど多くの現金(最大50万円)の給付を受けることができるほか、住宅ローンを利用しない50歳以上の現金一括購入者も対象となる点が特徴となっています。
また、すまい給付金も住宅ローン減税と同様に、住宅ローン減税と同じ契約期間に契約した場合、給付金の対象となる住宅の引き渡し期限の延長(2022年12月末まで)、および床面積(登記簿面積)の要件が40平方メートル以上と条件が緩和されています。
給付額は住宅取得者の収入、および不動産登記上の持分割合により決まります。そして、収入については、給与所得者のいわゆる「額面収入」ではなく、都道府県民税の所得割額に基づき決定します。
都道府県民税の所得割額は自治体によって異なりますので、具体的な金額を知りたい方は国土交通省の「すまい給付金シミュレーション」で給付額を確認してみましょう。なお、このシミュレーションサイトでは、住宅ローンを利用する場合にどのくらい住宅ローン減税を受けることができるかもわかるようになっていますので、活用してみることをおすすめします。
住宅取得等資金に関わる贈与税の非課税措置
直系尊属(両親や祖父母等)から20歳以上かつ贈与年の合計所得金額が2000万円以下の子や孫に、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得または増改築等(以下「新築等」といいます)の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます)を取得した場合において、一定の要件を満たすと、その新築等をする住宅用の家屋の種類や、最初に非課税の特例の適用を受けようとする住宅用の家屋の新築等に係る契約の締結日に応じて、非課税となる限度額が異なります。
この制度の非課税枠は2021年4月以降に縮小される予定でしたが、今回の改正で2021年の12月末まで据え置かれることになりました。なお、住宅取得等資金に関わる贈与税の非課税措置も、受贈者が贈与を受けた年分の合計所得金額が1000万円以下である場合、床面積(登記簿面積)要件が40平方メートル以上と緩和されます。
まとめ
2021年の税制改正における住宅ローン控除の変更点は、住宅購入を考えている人にとっておおむね有利な内容になっています。床面積要件の緩和や、特例措置の延長などにより、住居購入のチャンスだと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
とはいえ、2022年以降に控除額が大きく減少する可能性もゼロではなく、住宅の購入を検討しているのであれば、住宅ローン控除の制度改正における今後の動きにも注意しておく必要があります。
住宅の購入は、人生で1番高い買い物であり、さらに住宅ローンを利用するのであれば、長期間にわたって返済を続けていくことから、その後のマネープランに対して大きな影響を与えるものです。期限があるからと焦って購入を決めることは避け、しっかりとライフプランを立てましょう。また、無理のない範囲で住宅ローンを組み、十分に納得できる物件を選ぶことも大切です。
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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