共働き夫婦が収入合算で住宅ローンを組む場合の注意点とは?
配信日: 2021.03.16
共働き夫婦が住宅ローンを組む方法の1つに収入合算がありますが、利用する際にはどのようなことに注意する必要があるのでしょうか。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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住宅ローンの収入合算とは?
住宅ローンの収入合算とは、自分だけで住宅ローンを組むのではなく、一定の収入がある親族や配偶者の収入を合算して住宅ローンを組む方法をいいます。自分1人の収入だけでは、希望する借入金額を借りることができないというケースでよく利用されます。
合算できる金額の上限は金融機関によって異なりますが、合算者の収入の50%を上限としている金融機関が多いようです。ちなみに合算者の対象となる範囲は、「同居する直系親族、および配偶者」となっています。したがって、一緒に住む予定のない親族は、収入合算の対象には含まれないことが多いので注意してください。
ただし、現在は一緒に住んでいなくても、購入した住宅で同居する予定であれば対象となります。
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収入合算には2種類ある
収入合算には「連帯保証型」と「連帯債務型」の2つの種類があります。それぞれの特徴をきちんと理解し、どちらの種類を選択するか考える必要があります。
■連帯保証型
収入合算における連帯保証型とは、合算者である親族もしくは配偶者と自分のどちらかが債務者となり、どちらかが連帯保証人となることで住宅ローン契約を結ぶことです。例えば、夫が債務者となり、妻が連帯保証人となった場合、夫に万が一のことがあったとしても妻は夫に代わって住宅ローンの返済を行う義務があります。
■連帯債務型
連帯債務型とは、合算者と連名で住宅ローンを契約し、それぞれが同様に返済義務を負うことです。例えば、夫婦で連帯債務型を利用して3000万円の借入を行っているのであれば、夫も妻も同様に3000万円の返済義務を負うことになります。
収入合算のメリット・デメリット
借入金額を増やしたり、自分1人だけでは住宅ローンを組むことが難しかったりする場合に利用される収入合算ですが、それを利用することによってどのようなメリット、そしてデメリットがあるのでしょうか。
■収入合算のメリット
1.借入金額を増やすことができる
自分以外の収入を合算することで、全体的な収入額を上げることができます。それにより借入金額の増額につなげることができます。
2.節税効果を得られる
借入金額を増やすことで、住宅ローン控除の額も大きくなります。その分節税効果も高くなります。ただし、収入合算の場合、住宅ローン控除を受けることができるのは住宅ローン申込者本人のみで、連帯保証人は住宅ローン控除を受けることができませんので、注意してください。
■収入合算のデメリット
1.どちらかが連帯保証人になる必要がある
これは連帯保証型を選んだ場合ですが、連帯保証人となることで、もしも債務者に万が一のことがあった時に、その後の返済を債務者に代わって連帯保証人が行う必要があります。
2.連帯保証人が亡くなっても返済はなくならない
収入合算の場合、団体信用生命保険へ加入できるのは主債務者のみとなっています。したがって、連帯保証人が亡くなった場合であっても、住宅ローンの返済はそのまま続けていく必要があります。
収入合算とペアローンの違いとは?
収入合算とよく比較される契約方法にペアローンがあります。このペアローンとは、収入合算とどのような違いがあるのでしょうか。
収入合算は、あくまでも住宅ローン契約は1つであり、主債務者も1人です。これに対しペアローンは、夫婦がそれぞれ主債務者となって住宅ローンの契約を結びます。つまり契約が2本となり、お互いがお互いの連帯保証人となります。
夫婦でペアローンを契約する場合、それぞれの住宅ローンを個別で契約するため、金額や期間、借入条件が異なることもあり得ます。また、ペアローンで契約する際には、同一の金融機関を利用する必要があることや、一緒に住むことが条件となる場合もありますので、利用する際の条件について事前に確認しておくようにしましょう。
収入合算で住宅ローンを組む際の注意点
収入合算で住宅ローンを組もうと決めた際には、下記の点に注意するようにしましょう。
■贈与税がかかる可能性がある
夫婦で住宅ローンを組む際に、通常はそれぞれの出資割合に応じて住宅の持ち分を設定することになります。しかし、返済の際、お互いの返済割合と住宅の持ち分割合が異なる場合、一方からもう一方に対して経済的な利益の供与があったと見なされ、その額によっては贈与税の対象となる可能性があります。
同様に、夫婦のどちらかがもう一方の返済分を肩代わりしているケースも、経済的な利益の供与があったと見なされ、贈与税の対象となる可能性があることを覚えておきましょう。
したがって、持ち分割合と返済負担割合は、夫婦で同じ割合にしておくことが大切です。
■配偶者の収入減
住宅ローン契約の時点では、継続して働くという考えであったとしても、その後何らかの事情で働けなくなるケースもあるでしょう。例えば、勤め先の企業の業績が悪くなり、収入が減る、もしくはリストラにあう可能性もあります。
妻の場合は、子どもを産んでからも働く予定だったけれども、出産・育児により思った以上に体に負担がかかり、働き続けることが困難になるケースなどが考えられます。
このように収入が減ってしまうと、その後の返済に大きな影響が生じます。特に、ローン契約後に子どもを持つことを想定しているのであれば、主に育児をする期間には妻側の収入が減る可能性もありますので、その対策も考えておくようにしてください。
■離婚時にトラブルになる
収入合算で住宅ローンを組み、その後離婚することになった場合、トラブルになる可能性があります。トラブルになる具体的な要因として、「どのように財産を分けるのか」「どちらか一方が住み続けるのか」「その際の返済はどのようにするのか」などが考えられ、財産分与も含め、話し合いが長引く可能性も否定できません。
もし、どちらか一方の名義で借り換えを行おうと思っても、片方の収入だけでは住宅ローンを組むことが難しいという結果にもなりかねません。収入合算で住宅ローンを組んだ後、離婚になってしまった時に起こりえるトラブルについても、しっかり理解しておきましょう。
これらの注意点は、契約時ではなく、契約した後に起こる可能性がある問題に対する注意点です。契約をする前に、このようなことになった場合の対応策も併せて考えておくことが大切です。
まとめ
共働き夫婦が住宅ローンを組む方法は、夫(妻)だけで組むことはもちろん、収入合算で組むという方法もあり、契約の選択肢は広がります。
ただし、収入合算には借入額を増やすことができるという大きなメリットがある反面、デメリットもあります。さらには、収入減や離婚など、今後の状況によっては返済が困難になる可能性もあることから、どの方法で住宅ローンを組むかを決める際には、今後のライフプランについてしっかりと話し合うことが必要です。そのうえで、自分たちに一番合っている方法を選択するようにしましょう。
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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