執筆者:辻本剛士(つじもと つよし)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、宅地建物取引士、証券外務員2種
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繰り上げ返済の注意点
繰り上げ返済とは、ローン残債の一部やすべてを前倒しで返済することです。繰り上げ返済のメリットとしては、利息を軽減できるということが挙げられます。一方で、繰り上げ返済には次のような注意点があります。
現金が不足する
1つ目の注意点は、現金が不足する危険があることです。繰り上げ返済をすればその分、手元の現金が減ってしまいます。繰り上げ返済後にほとんど現金が残らない状態では、返済直後にもしもけがや病気などで急な出費が生じた際、対応することが難しくなります。
手元資金が枯渇し、カードローンなどの高い金利で再びローンを組む事態になってしまっては、繰り上げ返済の意味がなくなってしまいます。繰り上げ返済を検討する際には、手元資金の状況をよく確認することが重要です。
住宅ローン控除の適用額が減る
繰り上げ返済の2つ目の注意点は、住宅ローン控除の適用額が減ってしまうことです。
住宅ローン控除とは、返済期間10年以上の住宅ローンを活用して住宅を購入した場合に、一定の条件を満たせば10年間(または13年間)にわたり、住宅ローン残高の0.7%に対して所得税と住民税から控除できる制度です。
住宅ローン控除は住宅ローン残高に応じて控除額が決まるため、繰り上げ返済をして残高が減ってしまうと、それに伴い控除額も減ってしまいます。
例えば、年末の住宅ローン残高が3000万円の場合、0.7%にあたる21万円が所得税と住民税から控除できます。しかし、その年に繰り上げ返済を行い、残高が2500万円になった場合は控除額が17万5000円に減ってしまうのです(※実際の控除額は状況によって異なる場合があります)。
さらに、繰り上げ返済をして、返済期間が10年未満になってしまうと、住宅ローン控除の適用が受けられません。
団体信用生命保険の効果が薄まる
3つ目は、生命保険の機能がある団体信用生命保険(団信)の効果が薄まることです。
一般的に住宅ローンを組む場合、同時に団信にも加入します。団信は加入者に万一のことがあった場合に住宅ローンの残債が0になる制度で、生命保険のような機能を果たします。
ただし団信は、もし繰り上げ返済で住宅ローンの残債が減った場合、生命保険の保障額にあたる部分もその分、減ってしまうのです。
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繰り上げ返済が向いている人
それでは、繰り上げ返済が向いているのはどのような人でしょうか。
前述のとおり、繰り上げ返済をしたことで現金が不足してしまうと、不測の事態に対応できなくなる可能性があります。反対にある程度の余剰資金があり、不測の事態にも対応できる状況であれば、繰り上げ返済を行うことで利息軽減のメリットを享受しやすいでしょう。
従って、「十分な余剰資金がある人」は繰り上げ返済に向いている人の特徴といえます。
また、住宅ローン金利は1%以下のものが多く、無理に繰り上げ返済をするよりも、数%のリターンが見込めるような資産運用に資金を回すほうが効率的という考え方もあります。しかし、投資商品の中には元本が保証されていないものもあるため、リスクに抵抗を感じる人は繰り上げ返済を選択して利息の軽減に努めたほうがいいでしょう。
将来のライフプランを考慮した上で繰り上げ返済をしましょう
今回は住宅ローンの繰り上げ返済について解説してきました。繰り上げ返済には利息を軽減できるメリットがある一方で、「現金が不足する」「住宅ローン控除の適用額が減る」「団体信用生命保険の効果が薄まる」などのような注意点が存在します。
とはいえ、不測の事態にも対応できる十分な余剰金を準備できる場合には、繰り上げ返済を検討してみるのも選択肢の1つです。繰り上げ返済は、現在の資金状況や将来のライフプランなどを総合的に考慮した上で慎重に検討するようにしましょう。
出典
国土交通省 住宅ローン減税
執筆者:辻本剛士
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、宅地建物取引士、証券外務員2種
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