奨学金の「返済苦」はどう解決する?返済猶予されても返せない場合は、「自己破産」?
配信日: 2023.08.19
こういった奨学金の返済苦に陥ってしまったときはどうすればよいのでしょうか。奨学金の返済に苦しんでいる場合の対応について考えます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
まずは減額と猶予を願い出る
奨学金の返済に苦しんだとき、最初に考えるべきなのは猶予と免除です。
経済的理由により計画どおりの返済が難しい場合、まずは減額返還制度の利用をするようにしてください。そうすることで、1回(1月当たり)の返済額を2分の1ないし3分の1にできます。この減額措置は、最長15年継続できます。
それでもなお難しい場合は、返還期限猶予制度を利用するべきです。これによって最長10年、返済そのものを遅らせられます。
こうすることで、一時的ではありますが、返済の負担を軽くできます。その間に何とかお金を用意し、返済できるよう生活を立て直していくことが理想です。具体的には、下記のような方法が挙げられます。
・家計を見直して支出を減らし、返済分を確保
・転職して現在より給与の高い職に就き、返済分を確保
・副業で稼ぎ、その分を返済に回す
・一人暮らしの場合は実家に帰り、浮いた生活費を返済に回す
消費者金融など他の金融機関からの借り入れを返済に回す自転車操業は、利子などでどんどん自分の首を絞めていくだけなので、絶対に避けるようにしてください。どうしても借りて返すほかないほど追い詰められたときでも、親や親戚など身内から最低限の額を借りる程度にし、それ以上には手を広げないでおくべきです。
身体や精神の障害を理由とする場合は免除申請を
身体や精神の障害を理由に、労働能力を失ったり労働能力に高度な制限がかかったりして返済が難しい場合、返還免除制度を利用するようにしてください。そうすることで、一部ないし全額の返済が免除されます。
労働自体が困難な場合、返済が苦しくなるのも当然です。無理に返済を考えず免除を受けるべきでしょう。
ただ、免除申請をしても必ずそれが認められるとは限りません。免除を考えている場合、まずは日本学生支援機構へ相談してください。状況に応じた提出書類を受け取れます。必要な書類は状況に応じて異なるため、早めに相談をしてください。
自己破産は安易に考えないこと
返済苦に陥ったときに自己破産を検討する方もいるようですが、自己破産は安易に選択しないようにしてください。
自己破産を行うと、たしかに奨学金を含めた借入金をまっさらな状態に戻せます。しかし、一度破産をすると、一定期間、次のような社会生活における大きな制限を受けることになります。
・士業や保険募集員など特定の職業に就けない
・ローンが組めない
・クレジットカードの作成と利用ができない
・車や家、預貯金など財産を手放すことになる
・保証人に請求がいく
特に、奨学金を借りる際に親や親戚を保証人としている場合、自己破産して自身は責任を逃れたとしても、保証人である親や親戚に責任が及びます。そうなってしまうと根本的な解決とならないことに注意してください。
奨学金の返済苦は自己破産以外での解決を目指すべき
自己破産をすると社会生活にさまざまな制限がかかり、場合によっては保証人となっている家族や親族に大きな迷惑がかかります。奨学金の返済は、状況次第では非常に重い負担になりますが、安易に自己破産をしても解決できるとは限りません。
奨学金の返済に悩んだときは、まずは日本学生支援機構に相談をし、収入を増やしつつ支出を減らすなど、何とか返済できるお金を確保できるよう、返済を続けられる工夫をしてみてください。
執筆者:柘植輝
行政書士