体調不良により「退職」します。再就職先が見つかるまで「奨学金」の返済ができそうにないのですが、どうしたらいいのでしょうか?
配信日: 2025.02.20


執筆者:蟹山淳子(かにやま・じゅんこ)
CFP(R)認定者
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
蟹山FPオフィス代表
大学卒業後、銀行勤務を経て専業主婦となり、二世帯住宅で夫の両親と同居、2人の子どもを育てる。1997年夫と死別、シングルマザーとなる。以後、自身の資産管理、義父の認知症介護、相続など、自分でプランを立てながら対応。2004年CFP取得。2011年慶應義塾大学経済学部(通信過程)卒業。2015年、日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員。2016年日本FP協会、広報センタースタッフ。子どもの受験は幼稚園から大学まですべて経験。3回の介護と3回の相続を経験。その他、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー等の資格も保有。
奨学金の返済が苦しくなったときの対処法
Aさんは、心機一転、退職して療養した後に再スタートを目指すことにしましたが、一時的にも収入がない期間ができてしまうので、奨学金の返済が心配になっています。Aさんは親を心配させたくないという気持ちが強く、自分一人で乗り切るためのアドバイスがほしいとのことでした。
日本学生支援機構の貸与奨学金を利用した場合、在学中に借りた総額に応じて毎月の返済額と返済年数が決まり、最長で20年間、返済を続けていくことになります。
ただし、災害や失業などで経済的に苦しくなり、返済が難しくなった場合には、「減額返還」と「返済期限猶予」の2つの救済策が用意されています。親に相談するのは切り札としてとっておき、まずは救済策を利用することで、乗り切ることを考えましょう。
(1) 減額返還
決められた返還月額で返済を続けていくのは難しいけれど、減額してもらえれば返済できるという場合、一定期間、1回の返済額を2分の1、3分の1、4分の1、3分の2に減らしてもらえます。
減額するには申請して審査を受けなければなりませんが、1回の申請で12ヶ月、最長15年(180月)の適用を受けられます。減額を受けた期間に利息が増えることはありませんが、月々の返済額が減る分に応じて返済期間が延長されます。
(2) 返還期限猶予
一時的に返済を休めるよう申請もできます。減額返還と同様に申請して審査を受けなければなりませんが、認められれば一定期間、返済が猶予されます。猶予期間中に利息が増えることはありませんが、期間が過ぎた後は返済が再開され、猶予を受けた期間に応じて返済期間が延長されるので、総返済額が減ることにはなりません。
どちらを利用しても総返済額は変わりませんが、返還期限猶予のほうが返済を延長する期間が長くなるので注意が必要です。返済があとどのくらい残っているか、どのくらいの期間の対策が必要かにもよりますが、4分の1でも3分の1でもよいので、可能なら減額返還を選ぶことをお勧めします。
ただ、どちらを選ぶにしても、返済が滞る前に手続きすることが重要です。延滞してしまうと選択の幅が狭くなり、親が連帯保証人になっている場合は、親に連絡がいってしまうこともあります
現状の把握も大切
Aさんに最初にやっていただいたのは、現状把握と再就職までのお金のシミュレーションでした。
(1) 自分の奨学金の返済があとどのくらいあるのか確認します。毎月の返済額と返済期間、今後の総返済額も計算しておきましょう。
(2) 退職後に、退職金も含めた貯蓄がどのくらいになるかを把握します。
(3) 失業期間の収入を予想します。病気で退職した場合は退職後すぐには失業保険を受け取れないこともあります。どのような手続きが必要で、どのくらい受け取れるのかを調べておくと安心です。
(4) 毎月のどのくらいのお金があれば生活できるかも検討します。できれば節約も考えいただきたいのですが、病気の療養中ということもあるので、無理をしてはいけません。
これらの情報を基に失業期間のお金の状況、さらに奨学金の返済をこのまま続けていけるかどうかも検討しました。
まとめ
Aさんは再就職までに時間がかかることが予想されるため、退職後に返還額を2分の1にする減額返還の申請をすることにしました。もし、それでも返済が難しくなったら、その時点で返還期限猶予に切り替えの申請もできます。また、再就職後に経済的に余裕ができれば、繰上げ返還をして、返還期間を短くすることもできます。
この機会に、これから受け取れるお金や支出の計画もできたので、Aさんは安心して療養を続けられそうです。体調が良くなり再就職したら、新しい環境でより良いライフプランを実現できるよう願っています。
出典
独立行政法人日本学生支援機構 公式HP
執筆者:蟹山淳子
CFP(R)認定者