53歳で「住宅ローン返済中」の会社員。妻に「団信あるから繰上げ返済しないで」と言われたけど、残り「1000万円」分の“利息を払う価値”はあるのでしょうか?
今回は、53歳で住宅ローンの残債がまだ1000万円あるというケースを取り上げ、繰り上げ返済すべきかどうかを団信(団体信用生命保険)の考え方も含めて検討していきます。
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目次
繰り上げ返済にはどんなメリットがある?
まとまったお金が入ってきたら、ローン返済を始めとした負債を無くしてしまいたいと思う人は多いのではないでしょうか。住宅ローンの繰り上げ返済をしたら、どのようなメリットがあるか確認してみましょう。
支払利息の軽減
ローン残高を減らすことで、将来支払う利息を大幅に減らすことができます。例えば、金利1.0%で1000万円を10年残している場合、支払う利息は約50万円程度。ただし、これもローンの残期間や金利条件によって大きく変わります。
返済期間の短縮
同じ金額でも「期間短縮型」で繰り上げ返済すれば、老後の生活にゆとりを持たせることも可能です。退職後の支出を抑えられるという心理的メリットも無視できません。
「繰り上げ返済しない」メリットとは?
残り10年の住宅ローンをそのまま返済し続ける、という選択ももちろん考えられます。その場合のメリットを考えてみましょう。
団信は生命保険の一種
団信は、ローン契約者が死亡または高度障害状態になった場合に、残債を保険で完済してくれる制度です。つまり、借金が保険で帳消しになる可能性があるということです。繰り上げ返済をして残債を減らしてしまうと、この万一の補償額も減ることになります。
資産の流動性を保てる
ローン返済にまとまったお金を使ってしまうと、いざというときに現金が手元に残らないというリスクもあります。教育費や医療費、介護費用など、これから増えるかもしれない出費に備えたいという家庭も多いでしょう。
残り1000万円のローンを完済するとどうなる?
仮に、金利1.0%・残期間10年・元利均等返済とした場合、支払う利息はおおよそ53万円程度です。この場合、繰り上げ返済で得られる利息軽減効果はそこまで大きくないという見方もできます。
一方、今すぐに1000万円を繰上げ返済したとすると、そのお金は手元からなくなり、同時に団信による死亡保障もゼロになります。もし数年後に万が一のことがあれば、団信で帳消しになっていたはずのローンを、繰り上げ返済によって自腹で完済してしまったことになります。
金利が低く、保障を重視するなら「繰り上げ返済しない」も選択肢
住宅ローンの金利が高かった時代は、繰り上げ返済による利息軽減効果が非常に大きく、早期返済が有利でした。しかし、現在は超低金利時代です。特に1%前後のローンであれば、無理に完済してしまうより、手元資金を確保し、団信という生命保険の代替として活用する考え方もあります。
もちろん、これは健康状態に問題がなく、団信の保障が継続していることが前提です。また、将来の生活費に不安がない、年金や退職金の見通しが立っているといった条件も影響します。
まとめ
今回のように、「団信があるから繰り上げ返済しないで」と妻が言う理由は、感情論ではなく合理的判断とも言えます。利息53万円を保険料と考えれば、わざわざ返済せず、団信をうまく活用しながら資産を温存するという戦略もあり得るでしょう。
繰り上げ返済するかどうかは、その家庭のライフプラン、リスク許容度、資産状況によって答えが異なります。ぜひ一度、家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。
執筆者 : 宇野源一
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