【50年ローン】「一生ローン地獄」それとも「現実的な選択」? 住宅ローン「4000万円×50年」という選択は間違ってますか? 35年との“返済額”も比較
本記事では、50年住宅ローンの特徴やメリット、注意点を詳しく解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
50年住宅ローンとは? 35年ローンと何が違う?
これまでの住宅ローンの返済期間は最長35年でした。しかし、住宅価格の高騰で購入に必要な金額が増えることに伴い、ネット銀行を中心に返済期間が最長50年という住宅ローンも販売されるようになりました。
50年住宅ローンの主な特徴を確認しておきましょう。
※紹介するのは一例です。ローンの内容、契約条件は金融機関により異なります。
・借入期間:1年~50年(1ヶ月単位)
・借入金額:200万円~2億円(10万円単位)
・申込年齢:満18歳~満65歳未満
・完済時年齢:満80歳未満
・金利:固定金利・変動金利(ただし、借入期間35年1ヶ月以上で契約する場合は、年0.1%程度の金利上乗せあり)
50年住宅ローンのメリット
50年住宅ローンのメリットを見ていきましょう。
【メリット1】毎月の返済負担を軽くできる
返済期間を長くすることで、毎月の返済額を抑えられます。金利にもよりますが、同じ4000万円の借入でも、35年住宅ローンより50年住宅ローンのほうが、毎月2万円以上返済額は少なくなるケースもあります。
毎月の返済額が減る分、生活費や教育費にゆとりを持てる点は魅力的です。
【メリット2】若い世代でも持ち家を検討しやすい
住宅価格が上昇する中、20代~30代を対象に「頭金ゼロ+長期ローン」をすすめる金融機関もあります。将来の収入増を見込み、早めに資産形成に取り掛かりたいという人には有効な選択肢です。
【メリット3】親子リレーに対応した50年住宅ローンもある
親世代と子世代で返済を引き継ぐ「親子リレー型住宅ローン」を利用すれば、50年の長期返済が現実的になります。家族で住み継ぐ想定であれば、理にかなった選択といえるでしょう。
50年住宅ローンの注意点・デメリット
50年住宅ローンはメリットばかりではありません。注意点・デメリットも紹介します。
【デメリット1】総返済額が大幅に増える
返済期間が長くなると、支払う利息も多くなります。50年住宅ローンの場合、35年住宅ローンよりも数千万円単位で返済総額が増える可能性もあるため注意が必要です。「月々の返済額が安い=お得」とは限らないのです。
【デメリット2】若いうちに契約する必要がある
多くの金融機関では50年住宅ローンの完済年齢を80歳程度に設定しています。つまり、50年かけて返済したい人は30歳までには契約を済ませておく必要があるのです。
若い世代は、ライフプランが変わる可能性が大いにあります。自分や家族の将来まで十分に考慮した上で契約しなければならない点は、デメリットといえるでしょう。
【デメリット3】老後も返済が続くリスクがある
完済時期が70歳や80歳になる場合、定年後も返済が続く可能性があります。退職金や年金での支払いが厳しくなるリスクも考え、繰上げ返済にも対応できるようにしておかなければなりません。
【デメリット4】住宅の資産価値とのバランスまで考慮する必要がある
築年数が進むと住宅の資産価値は下がります。50年後、住宅にどれだけの価値があるかは不確実です。「ローンが残っているのに、家の価値がほとんどない」状態になるケースもあります。
35年、50年住宅ローンの返済額を比べてみよう
住宅ローンの返済期間を35年と50年に設定した場合、同じ4000万円を借りても、月々の返済額や総返済額には大きな差が生まれます。ここでは、その違いを具体的に比較してみましょう。
・4000万円借入
・返済方法:元利均等返済
・金利:年2.743%(完済まで変わらないと仮定)
・ボーナス返済なし
・50年住宅ローンの場合、年0.1%の金利上乗せ有
毎月の返済額:14万8260円
総返済額:6226万9317円(利息:2226万9317円)
毎月の返済額:12万4982円
総返済額:7498万8624円(利息3498万8624円)
まとめ
50年住宅ローンは、若い世代の住宅購入を後押しする新しい選択肢です。月々の返済が軽くなるため、家計にゆとりを持ちたい、教育費との両立を重視したい家庭に向いているといえます。
その一方、総支払額が増える、老後も返済が続くといったリスクもあります。家計の見通しとライフプランを踏まえたうえで、「無理のない返済計画」を立てることが大切です。
執筆者 : 小川ひろ
2級ファイナンシャル・プランニング技能士