日銀利上げで「変動金利」が上がる!?「金利0.5%→1.0%」で返済額はいくら上がる?“年収600万円・残債3000万円”の家計インパクトを試算
本記事では、金利が0.5%上昇した場合、具体的に家計にどの程度のインパクトがあるのかを試算します。年収600万円で住宅ローン残債が3000万円ある世帯をモデルケースとして、返済額の変化と今からできる備えについて解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
目次
なぜ変動金利が上がるのか? 日銀の政策変更と短期プライムレート
今回の金利上昇懸念は、日本銀行が2025年1月に政策変更を発表し、短期金利の誘導目標(無担保コール翌日物)を約0.5%へ引き上げたことが原因です。
住宅ローンの変動金利は、多くの場合、銀行が企業に短期間貸し出す際の「短期プライムレート(短プラ)」に連動します。この短プラは、日銀がコントロールする「無担保コール翌日物」の金利動向に影響されます。
つまり、大本の金利が上がったため、銀行の短プラも上昇し、結果として住宅ローンの変動金利も引き上げられる可能性が高まっているのです。
長らく続いた低金利時代が転換点を迎え、住宅ローンを抱える家計は、金利上昇リスクに対応する必要が出てきました。子どもの教育費や日々の生活費がかさむ中、返済額増加は大きな懸念材料でしょう。
月7000円弱の負担増? 残債3000万円・金利0.5%→1.0%の影響
実際に金利が0.5%上昇すると、月々の返済額はどのくらい増えるのでしょうか。年収600万円で、既婚、子どもありの会社員世帯をモデルケースとして試算します。
・住宅ローン残債:3000万円
・残りの返済期間:25年(300回払い)
・返済方式:元利均等返済
・ボーナス払い:なし
現在、金利0.5%の場合、月額返済額は約10万6400円です。これが金利1.0%(0.5%上昇)になると、月額返済額は約11万3100円に上がります。差額は月額約6700円、年間では約8万400円の負担増です。
月約7000円、年8万円以上の支出増は、教育費や日々の生活費を考えると家計に影響をおよぼすでしょう。趣味や外食などを見直す必要も出てくるかもしれません。
さらに、残りの返済期間25年間の総返済額では、金利0.5%(総額約3192万円)と金利1.0%(総額約3393万円)で、約200万円もの差が生じます。
※この試算は、返済期間中の金利が一定と仮定したシンプルな計算です。実際の変動金利型の住宅ローンでは、「5年ルール(返済額は5年間据え置き)」や「125%ルール(返済額の上昇幅は1.25倍まで)」が適用されます。そのため、急激な返済額の増加は抑えられますが、未払い利息が発生する場合もあります。
金利上昇局面にどう備える? 今すぐ確認したい3つの対策
試算結果に不安を感じた人もいるかもしれません。金利上昇局面では早めの対策が家計を守ります。今から確認したい3つの対策を紹介します。
1つ目は、家計の見直しと貯蓄の強化です。
返済額上昇に備えるため、まずは収支バランスを確認しましょう。食費や通信費、保険料などを見直して無駄を減らし、削減できた分は貯蓄に回します。なるべく現金を蓄えて、金利上昇時に備える余裕(バッファ)を持つことが大切でしょう。
2つ目は、繰り上げ返済の検討です。
手元にまとまった資金がある場合、繰り上げ返済で元本を減らすのは有効です。元本が減れば、金利上昇時の利息負担も軽減されます。金利上昇局面では、利息軽減効果の大きい「期間短縮型」が有利とされますが、子どもの教育費など、近い将来に必要な資金まで使い込まないよう注意が必要です。
3つ目は、固定金利への借り換えです。
今後も金利が上昇しそうで不安な場合は、固定金利型のローンに借り換えるという方法もあります。固定金利にすれば金利上昇を気にせず、返済計画を立てやすくなります。
ただし、固定金利は変動金利より高めに設定されているのが一般的で、借り換えには審査や手数料も必要です。借り換えによって逆に総返済額が増えるケースもあるため、慎重な判断が求められます。
金利上昇リスクを直視し、家計状況の把握と早めの対策を
長らく続いた低金利時代を経て、日本も金利が上昇する局面を迎えつつあります。試算で示したように、わずか0.5%の金利上昇でも、家計へのインパクトは小さくありません。
「うちはまだ大丈夫」と楽観視せず、まずは自身の住宅ローン契約内容(金利タイプ、残債、残期間)を正確に把握しましょう。その上で、もし金利が0.5%、1.0%と上昇したらどうなるか試算し、家計が耐えられるかシミュレーションしてみるべきです。
金利の動きを完全に予測することはできませんが、リスクに備えて家計を見直し、対策を考えることは今すぐに始められます。家族の将来を守るためにも、早めに情報収集と対策を進めましょう。
執筆者 : 山口克雄
2級ファイナンシャル・プランニング技能士