「家賃12万円を払うより、住宅ローンを払ったほうが得だ」と夫が言うのですが本当ですか? 世帯年収800万円、4000万円のマンションを検討中です
今回は世帯年収800万円のご家庭で、4000万円のマンションを買う場合を想定し、家賃12万円で賃貸住宅に住む場合とかかる費用をシミュレーションします。
CFP(R)認定者
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
蟹山FPオフィス代表
大学卒業後、銀行勤務を経て専業主婦となり、二世帯住宅で夫の両親と同居、2人の子どもを育てる。1997年夫と死別、シングルマザーとなる。以後、自身の資産管理、義父の認知症介護、相続など、自分でプランを立てながら対応。2004年CFP取得。2011年慶應義塾大学経済学部(通信過程)卒業。2015年、日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員。2016年日本FP協会、広報センタースタッフ。子どもの受験は幼稚園から大学まですべて経験。3回の介護と3回の相続を経験。その他、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー等の資格も保有。
住宅購入するか賃貸で住み続けるか?
今回の検証では、頭金なしでマンション価格の4000万円全額を住宅ローンで賄うケースを考えます。また、金利は変動金利と固定金利のどちらを選ぶかによっても違いますが、仮に1%と設定、返済期間は35年、ボーナス返済は使わないこととします。
この条件でシミュレーションしてみたところ、毎月の返済額は11万2913円で、12万円の家賃より低い結果となりました。年間返済額は約136万円ですから、年収800万円であれば返済負担率は17%です。年齢や家族構成によっても違いますが、無理のない住宅ローンプランといえるでしょう。
ただし、住宅購入には住宅ローン返済以外の費用もかかります。まず、新築マンションの場合、購入時に住宅ローンを借りる際の手数料や、登記費用などを合わせて購入価格の3~5%程度、4000万円のマンションであれば120~200万円が必要です。
また、購入後も固定資産税、マンションの管理費・修繕積立金、火災保険料などをずっと払い続けなければなりません。
毎月の住宅ローン返済額だけを考えれば、賃貸で住み続けるより、4000万円のマンションを購入したほうがお得に思えますが、マンション購入ではローン以外にも費用がかかるので、住宅費用は賃貸のほうが少なく済むでしょう。
マンション購入後の住宅費用をシミュレーション
マンション購入した場合はどのくらいの住宅費がかかるか、もう少し詳しく検証してみましょう。マンション管理費・修繕積立金や固定資産税など、住宅にかかる一般的な費用を設定し、毎月の住宅費用総額を算出します。住宅ローン金利は0.7%、1%、2%、3つのケースで比較します。
住宅購入の条件は、以下のとおりです。
・マンション価格:4000万円
・住宅ローン借入額:4000万円(諸費用は貯蓄から支出)
・住宅ローン金利:0.7%、1%、2%
・マンション管理費・修繕積立金:3万円/月
・固定資産税と火災保険料:17万円/年
それぞれの金利で算出した、年間の住宅費は図表1のとおりです。
図表1
家賃12万円の賃貸住宅の場合、年間の住宅費用は144万円です。2年ごとに更新費用が12万円かかると仮定しても、年間150万円。マンション購入するほうが、金利0.7%の場合でも30万円以上多くかかってしまいます。特に固定金利を選択した場合には、金利2.0%とすると住宅費の差は年間60万円以上になります。
ただし、住宅ローンの返済終了後を考えると、賃貸の場合は更新料も含めて年間144万円と更新料をずっと払い続けるのに対し、マンション購入した場合は管理費・修繕積立金と固定資産税、火災保険料など維持費のみの支払いになるので、年間53万円です。
老後に収入が年金のみとなった場合を考えると、マンション購入したほうがゆとりある暮らしができそうです。また、いざというときは売却して資金を得られる資産があることは、老後の安心感にもつながるでしょう。
まとめ
毎月の住宅ローン返済額と家賃を比較して、マンション購入のほうがお得と思える場合も、マンションの管理費・修繕積立金や固定資産税なども含めた総合的な住宅費用を考えると、家賃より出費が増えてしまうことがあります。
一方で、マンション購入の場合は住宅ローン完済後に住宅費用が減る、老後に資産が残せるというメリットが考えられます。
「賃貸とマンション購入のどちらを選ぶのがよいか?」の答えは一つではありません。転勤で同じ家に住み続けられない可能性、将来予想される収入の変化、子どもの成長に伴う教育費の増加など、それぞれの家庭のライフプランに合わせて検討しましょう。
執筆者 : 蟹山淳子
CFP(R)認定者
