住宅ローン残高「1500万円」で“貯蓄500万円”ですが、定年まであと5年…60代の「平均ローン残高」はどれくらいですか? このままでは“老後破産”するでしょうか?

配信日: 2025.11.29
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住宅ローン残高「1500万円」で“貯蓄500万円”ですが、定年まであと5年…60代の「平均ローン残高」はどれくらいですか? このままでは“老後破産”するでしょうか?
定年を控えた60代において、住宅ローンが残っている世帯の割合や平均残高はどのくらいなのでしょうか。老後資金に不安を感じる人は少なくありません。
 
本記事では「定年まであと5年、ローン残高1500万円、貯蓄500万円」というケースを例に、このまま迎える老後のリスクや、完済が難しい場合の具体的な対策について解説します。
山口克雄

2級ファイナンシャル・プランニング技能士

60代の住宅ローン事情と平均残高

定年を迎える60代で、住宅ローンが残っている人はそれほど多くありません。まずは同世代の平均的なデータを確認して、今回の事例がどれくらいリスクのある状態なのかを客観的に見ていきましょう。
 
J-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査2024年」によると、60歳代の二人以上世帯における住宅ローン残高の平均は504万円です。今回例に挙げた「残高1500万円」は、同世代の平均と比較して約3倍の金額になります。
 
これは平均値を大きく上回っており、返済負担がかなり重い状態です。また、借入金残高の中央値は185万円で、多くの世帯では完済が近い、あるいは完済済みである様子がうかがえます。
 
さらに、同世代の中で住宅ローンを返済中の人の割合を見てみましょう。三井住友トラスト・資産のミライ研究所が公表した「令和の“住まい”と住宅ローン事情(2024年)」によると、60代で住宅ローンを利用中の割合は12.3%でした。つまり、60代の約9割は住宅ローンがない状態です。
 
定年退職を迎えるタイミングでローンが残っているケースは少数派です。残高が1500万円で貯蓄が500万円という状況は、統計的に見ても楽観視できない厳しい立ち位置にあります。「なんとかなる」と構えていると、老後の生活設計が根底から崩れるおそれがあるため、慎重な判断が求められます。
 

退職金での一括返済に潜む「老後破産」のリスク

定年後も高額なローン返済が続くと、年金だけでは生活が成り立たない「老後破産」のリスクが高まります。事例のようなケースでは、「退職金で一括返済すればよい」と安易に考えるのは禁物です。
 
仮に退職金で一括返済して借金がなくなっても、手元には元々の貯蓄500万円しか残りません。人生100年時代といわれる現代、家の修繕費や医療・介護費など、まとまった出費が必要になる場面は多々あります。手元資金が乏しい状態で突発的な支出が発生すれば、生活は一気に困窮してしまうかもしれません。
 
また、手元に現金を残すために分割払いを継続する場合も注意が必要です。再雇用などで収入があるうちはよくても、完全リタイア後に年金収入のみで返済を続けるのは困難といえるでしょう。毎月の赤字を貯蓄から切り崩せば、数年で資産は枯渇します。
 
ねんきん定期便などで受給額を確認し、収支がプラスになるか計算してみましょう。老後の安心を確保するには、借金の返済と手元資金の確保、双方のバランスをとることが重要です。
 

完済が難しい場合に検討すべき具体的な対応策

試算の結果、完済が難しいと判明した場合は、早急に対策を講じなければなりません。放置して滞納すれば、自宅を失う最悪の事態になりかねないからです。
 
まずは、借入先の金融機関に相談するのが第一歩です。返済期間の延長などの条件変更(リスケジュール)により、毎月の返済額を減らせる可能性があります。
 
総返済額は増えますが、月々の負担を軽くすることで生活費を確保しやすくなります。
 
次に、住み替えも有効な手段です。子どもが独立しているなら、自宅を売却して身の丈にあった住まいに移ることも検討できます。売却価格がローン残高を上回れば、手元に残った現金を老後資金に充てられるでしょう。
 
自宅に住み続けたい場合は、「リースバック」や「リバースモーゲージ」の活用も視野に入ります。前者は自宅を売却して家賃を払いながら住む方法で、後者は自宅を担保に資金を借りる方法です。それぞれメリットとデメリットがあるため、専門家や家族とよく話し合って判断するとよいでしょう。
 

早めのシミュレーションと決断で老後の安心を

定年間近で1500万円のローンが残っている今回の事例は、平均と比較してもリスクが高い状態といえます。退職金での完済に固執せず、長い老後を見据えた資金計画が欠かせません。
 
まずは、収支シミュレーションを行い、完済が難しいようであれば、金融機関への相談や売却を含めた抜本的な対策を検討しましょう。問題を先送りにすれば選択肢は狭まります。早めの行動が、老後破産を防ぎ、安心して暮らせる未来へとつながります。
 

出典

J-FLEC(金融経済教育推進機構) 家計の金融行動に関する世論調査 2024年 二人以上世帯
 
執筆者 : 山口克雄
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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