転職したら手取りが減りました。奨学金の返済が厳しくなってしまったのですが、一時的でも返済を待ってもらうことはできますか?

配信日: 2025.11.30
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転職したら手取りが減りました。奨学金の返済が厳しくなってしまったのですが、一時的でも返済を待ってもらうことはできますか?
転職して手取りが減ってしまったという話を聞くことがあります。
 
さまざまな事情で収入ダウンの転職をしたケースもあるでしょうが、収入アップのつもりだったのに、転職直後に試用期間があり、期間中は給与自体が少ないうえに残業がない、また以前の勤務先より家賃補助が減ってしまったなどの理由で手取りが減ったケースもあるでしょう。
 
奨学金を返済していると「返済し続けることができるのか……」と不安になるのもしかたありません。返済に不安がある時にどうしたらいいのか、確認してみましょう。
蟹山淳子

CFP(R)認定者

宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
蟹山FPオフィス代表
大学卒業後、銀行勤務を経て専業主婦となり、二世帯住宅で夫の両親と同居、2人の子どもを育てる。1997年夫と死別、シングルマザーとなる。以後、自身の資産管理、義父の認知症介護、相続など、自分でプランを立てながら対応。2004年CFP取得。2011年慶應義塾大学経済学部(通信過程)卒業。2015年、日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員。2016年日本FP協会、広報センタースタッフ。子どもの受験は幼稚園から大学まですべて経験。3回の介護と3回の相続を経験。その他、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー等の資格も保有。

日本学生支援機構の奨学金返済が苦しくなったとき

日本で最も多く利用されている奨学金は日本学生支援機構のものですが、そのうち返済が必要な貸与奨学金を、大学、大学院、短大、専門学校などに通う学生358万人のうち、109万人が利用しているということです。つまり、大学などを卒業して就職した後、約3.3人に1人が日本学生支援機構に奨学金返済をしているということになります。
 
そこで、今回は日本学生支援機構奨学金の制度を紹介しましょう。
 
日本学生支援機構には、災害、傷病、経済困難、失業などで返済が難しくなった場合に、返済を一定期間先送りする「返還期限猶予」という制度があります。申請して認められれば一定期間、通算で最長10年(経済困難の場合)まで猶予、つまり返済を待ってもらえます。
 
猶予期間中に利息が増えることはありませんが、猶予期間が過ぎた後は返済が再開されるので、猶予を受けた分だけ返済が終わる時期が先に延びます。したがって、猶予してもらうことで返済額が減ることはありません。
 
経済困難の理由で猶予申請をする場合、収入の基準は年収300万円(税込み)以下となっています。ただし、この金額はあくまで目安です。年収300万円以上が見込まれる場合でも、世帯人数が多い場合などは日本学生支援機構に問い合わせてみましょう。
 

「返還期限猶予」の申請方法

申請手続きは「スカラネット・パーソナル」でできます。申請から承認までは2週間程度ということですが、口座振替の手続きまでに時間がかかることもあるようなので、早めに行うようにしましょう。
 
経済困難を理由にする申請には今年度の所得証明書が必要ですが、これはマイナンバー提出によって省略できます。
 
ただし、収入が減少した場合、今年の所得証明書は前年の所得を証明するものですから、それでは認められないケースもあるでしょう。前年の収入は基準を超えるけれど、減収によって今年は年収300万円未満になる場合は、所得証明書とともに次のいずれかを提出します。
 

(1)勤務先による給与支払証明書(事業所名・奨学生本人名・支給年月・賞与の有無・総支給額が明記されているもの、見込み可)
(2)直近連続3ヶ月分の給与明細コピー

 
給与月額の収入基準の目安は、賞与が支給される場合は20万円以下、賞与がない場合は25万円以下です。
 

「減額返還」という選択

日本学生支援機構には、返済が苦しくなった人のための「減額返還制度」もあります。決められた返済月額で返済を続けるのは難しくても、減額してもらえれば返済できるという場合、一定期間、返済月額を3分の2、2分の1、3分の1、4分の1に減らして返済する制度です。
 
返還期限猶予と同じように申請して承認される必要がありますが、最長15年間の減額返済、また収入基準も400万円と返還期限猶予より認められる範囲が広くなっています。
 
減額返還の場合も完済時期が先に延びますが、返還期限猶予の場合より早く返済が済むので、少しずつでも返済を続ける「減額返還」を選択することをお勧めします。
 

まとめ

返済が不安になったら早めに状況を把握し、必要なら相談をして行動に移すことが重要です。まずは有効な情報を集めるために「日本学生支援機構」のホームページから「返還が難しくなった場合」を開いて詳しく調べてみましょう。分からないことがあれば日本学生支援機構の「奨学金相談センター」で電話相談することもできます。
 
ただ、返還猶予で一時的に返済を休むことができても、いずれは返済を再開しなければなりません。収入が減ったのであれば、支出全体の見直しが必要です。今後の収入の見込みも予想しながら、より良いライフプランを実現するための長期的なマネープランを検討しましょう。
 

出典

日本学生支援機構 公式ホームページ
日本学生支援機構 日本学生支援機構について(次代の社会を担う人材の育成への貢献)
 
執筆者 : 蟹山淳子
CFP(R)認定者

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