住宅ローン「繰り上げ返済」直後に夫が死亡。老後資金「1000万円」を取り崩し、残り400万円に減ったのに…団信があるなら“繰り上げ返済は損”でしたか? 注意点を解説

配信日: 2025.12.09
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住宅ローン「繰り上げ返済」直後に夫が死亡。老後資金「1000万円」を取り崩し、残り400万円に減ったのに…団信があるなら“繰り上げ返済は損”でしたか? 注意点を解説
住宅ローンの返済を続けていると、支払っている金利が気になって、早めに繰り上げ返済すべきか悩んでいる家庭も多いのではないでしょうか。しかし、繰り上げ返済にもメリット・デメリットがあり、とくに「団体信用生命保険」に加入している場合は注意が必要です。
 
本記事では、老後資金から600万円の繰り上げ返済をした直後に夫が亡くなったケースも参考に、繰り上げ返済の留意点を解説します。団体信用生命保険についても説明しますので参考にしてください。
松尾知真

FP2級

繰り上げ返済で金利はどれくらい減るのか?

多くの人にとって住宅ローンを繰り上げ返済する一番大きな動機は、金利負担の軽減でしょう。借入額や返済期間・残債などで違いはありますが、繰り上げ返済によって、数十万円から、場合によっては数百万円もの金利負担を抑えることが可能です。
 
例えば、住宅ローンで当初の借入額元金3500万円、金利2.0%、返済期間30年(元利均等)で、20年返済を続けていたとします。その時点で600万円を繰り上げ返済し、返済期間を短縮すると、支払う利息額は100万円近く減ります。
 
また、60代に差し掛かると、老後の不安を解消するため「借金である住宅ローンは早く完済しておきたい」といった心理が働く人もいるでしょう。とくに退職金などで手元に大きな資金が入ってきた場合は、繰り上げ返済も現実的な選択肢になります。
 

団体信用生命保険とは

「団体信用生命保険」(以下、団信)とはどういったものでしょう。団信は生命保険の一種で、住宅ローンの契約者を被保険者とする保険です。
 
保障額は住宅ローンの残高で、住宅ローンの契約者が亡くなったり、高度障害の状態になったりすると、生命保険会社が住宅ローンの残高を金融機関に振り込むというものです。つまり、住宅ローンの契約者が亡くなった際、残された遺族には住宅ローンの支払い義務がなくなるのです。
 
ちなみに団信は住宅ローン設定時にしか加入できませんが、現在は多くの金融機関で団信加入が住宅ローン設定の条件になっています。また、団信の保険料は住宅ローンの金利に含まれ、上乗せ幅は0.1から0.3%ぐらいです。ほかに、がんや三大疾病になった際も保障されるタイプの団信もあります。
 

繰り上げ返済直後に、契約者である夫が亡くなると

では、住宅ローンの契約者が600万円を繰り上げ返済した直後に亡くなった場合、やはり損をしたことになるのでしょうか。もし団信に加入していれば、繰り上げ返済の有無に関わらず、契約者が亡くなった時点で住宅ローン債務も実質的に消滅します。
 
あくまでも結果論ですが、繰り上げ返済していなければ、その600万円が手元に残っていたことになるのです。そのため、貴重な老後資金を取り崩してまで繰り上げ返済に充てたのであれば「もう少し返済を待てばよかった」と強く後悔するかもしれません。
 
しかし、誰がいつ亡くなるかや、人の寿命は事前に把握できません。健康に大きな不安があった場合などは別ですが、団信も生命保険の一種であることを考えると、このような事態も十分に考えられます。
 

繰り上げ返済活用時の留意点は?

今回のような例を見れば、繰り上げ返済のタイミングも重要な要素の1つですが、ほかにも繰り上げ返済には留意点やデメリットがあります。
 
考えられる最大のデメリットは、繰り上げ返済によって、貯蓄などの手元資金が少なくなってしまうことです。とくに手元資金に余裕がない家庭などは注意しなければなりません。
 
いくら将来の住宅ローン返済額が減ったとしても、手元資金が底をついて、急な出費や万一の生活リスクに対応できないようでは本末転倒です。ほかにも、住宅ローンの残高が減った分、団信の保障額が小さくなったり、仮に住宅ローン減税を受けていれば、控除される所得税や住民税も少なくなったりします。
 
場合によっては、返済しなかった資金を積極的に資産運用することで、住宅ローンの金利以上の運用益を得られる可能性もあるでしょう。繰り上げ返済するかどうかは、金利負担軽減だけでなく、これらの要素を複合的に捉えて判断することが大切です。
 

まとめ

団体信用生命保険に加入していた住宅ローンの契約者が、繰り上げ返済直後に亡くなると、返済しなかった場合と比較して、返済した分だけ手元資金が減ってしまいます。しかし、人がいつ亡くなるかは誰にも分かりません。
 
住宅ローンの繰り上げ返済には、金利負担の軽減や心理的な不安解消という大きなメリットがある反面、今回のようにタイミングが問題になる例や、手元資金の減少によるリスクもあります。とくに収入が限られるシニア世代が、老後資金を繰り上げ返済に充てる場合は、よりいっそう注意が必要かもしれません。
 
もし、繰り上げ返済を考えているのであれば、返済のタイミングやメリット・デメリットを十分理解したうえで、検討をしてみてはいかがでしょうか。
 
執筆者 : 松尾知真
FP2級

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