「住宅ローン50年」なら返済が“月3万円”安くなると喜んでいたら、総額で「1000万円」高くなりショック! 借入が「5000万円」の場合“35年ローン”と比べてどれだけ高くなるでしょうか?
しかし、月々のローン返済額が抑えられる一方で、返済期間を長くすると支払う利息が増え、総支払額は大きくなる可能性があることに注意が必要です。
本記事では、35年と50年の2つの返済期間で5000万円を借り入れたケースを比較し、月々の返済額と総支払額にどの程度違いが出るのかを解説します。
FP2級、日商簿記3級、管理栄養士
50年ローンが導入された背景とは?
近年は、建築資材の価格上昇や、省エネ性能の高い住宅の普及などによって、住宅価格が上がりやすい状況が続いています。住宅価格が高くなると、同じ条件の物件を購入するために必要な借入額が大きくなります。
そのため、返済期間をできるだけ長くして毎月の支払額を抑えようとするニーズが高まり、最長50年まで返済期間をのばせる50年ローンを取り扱う金融機関が増えてきました。例えば、住信SBIネット銀行では2023年8月から導入を決定し、auじぶん銀行やPayPay銀行など、ネット銀行を中心に50年ローンを相次いで導入しています。
なお、返済期間が長い分、満80歳未満で完済できることなどが条件になる場合があります。利用を検討するときには条件をしっかり確認しましょう。
35年ローンと50年ローンの比較シミュレーション
返済期間を長くすると、月々の返済額が抑えられる一方、元金の返済が遅くなるため利息を含めた総支払額が大きくなります。借入額5000万円のケースにて、35年ローンと50年ローンで月々の返済額と総返済額にどのくらい差が出るかを比較してみましょう。
なお、金利は住宅金融支援機構のフラット35、フラット50の2025年11月の金利を参考にしています。
金利
・35年ローン:年1.90%
・50年ローン:年2.00%
毎月返済額、総返済額
・35年ローン:16万3076円、約6849万円
・50年ローン:13万1895円、約7914万円
月々の返済額は50年ローンのほうが約3万円安くなりますが、総返済額では逆に約1000万円高くなります。
また、今回の試算は35年ローン、50年ローンともに金利が全期間固定されているタイプで試算しました。
金融機関によっては、変動金利型の選択も可能ですが、返済期間が長くなればなるほど、金利変動時の影響も大きくなるため、今回の試算以上に差が大きくなる可能性もあります。返済期間に加えて、金利タイプの選択も慎重に行う必要があります。
無理のないローン返済計画を立てて住宅を購入しよう
住宅価格の高騰を背景に、多くの金額を借り入れながらも、月々の負担を軽くできるメリットがある50年ローンが注目されています。
しかし、返済期間が長くなると利息負担が増え、総支払額が大きくなります。借入額5000万円のケースで試算したところ、35年ローンに比べ月々の返済額は約3万円安くなりますが、総返済額は約1000万円高くなる結果となりました。
目先の返済額の安さだけではなく、長期にわたって返済し続けることができるのか、総返済額がどの程度高くなるのか、などについてあらかじめ理解しておくことが重要です。必要に応じて繰り上げ返済によって返済期間を短縮するなど、計画的なローン返済を行いましょう。
執筆者 : 東雲悠太
FP2級、日商簿記3級、管理栄養士