変動金利の上昇で、返済が「月12万→15万円」に増えそうです…今から「固定金利」に借り換えるべき? 手数料“100万円”払っても損する人とは? 月額返済の「損益分岐点」を確認
本記事では現在の金利水準と借り換えコスト、そして総返済額のシミュレーションに基づいた判断基準を解説します。
2級ファイナンシャルプランナー技能士
目次
現在の変動金利と固定金利の「スプレッド」を直視する
借り換えを検討する際に重要な指標となるのが、現在の「変動金利」と「固定金利」の差(スプレッド)です。
2026年2月時点の、主要金融機関の変動金利は0.6%~0.9%程度の水準にある一方、固定金利(フラット35・返済期間21年以上35年以下)は最も多いのが2.260%(融資率9割以下)となっており約1.3%~1.6%の金利差が存在しています。
固定金利への借り換えは、現在の低金利を捨てて高金利のローン契約を結ぶことになるため、将来変動金利が2.0%を超えて上昇し続けるシナリオが実現して初めて、経済的に合理性が生まれる選択です。
もし変動金利の上昇が緩やかで、1.0%~1.5%程度で推移した場合、固定金利に借り換えたことによる「保険料(高い金利負担)」のほうが大きくなり、総返済額では数百万円単位の差が出る可能性があります。
借り換え手数料と月額返済の損益分岐点
具体的に数字を用いてシミュレーションを行います。借り換えには、事務手数料(借入額の2.2%程度)、登記費用、印紙税などの諸費用が発生します。
・ローン残高:4000万円/残存期間:30年
・現在の金利(変動):0.670%
・借り換え先の金利(固定):2.08%
・借り換え諸費用:約100万円
※元利均等返済、ボーナス返済なしで試算
<毎月の返済額比較>
・A:現状維持(変動0.670%)約12万3000円/月
・B:借り換え後(固定2.08%)約14万9000円/月
<差額の簡易計算>
・月額の負担増:14万9000円(B)-12万3000円(A)=約2万6000円
・年間の負担増:2万6000円×12ヶ月=約31万2000円
借り換えた瞬間に、毎月の返済額は約2万6000円増加(年間30万円強の負担増)し、さらに諸費用として現金100万円の支払いが必要です。「金利が上がって月15万円になるのが怖い」という動機で借り換えを検討した結果、借り換えた翌月から「月14万9000円」の返済が始まるという状況が生じます。
「借り換え諸費用」を「繰り上げ返済」に充てた場合の費用対効果
ここで比較検討したいのが、「借り換え諸費用として払うはずだった現金を、現在のローンの繰り上げ返済に充てる」という戦略です。
前記の借り換え諸費用100万円を現在の変動金利ローンの元金返済に充当すれば、元金は4000万円から3900万円へと減少し、将来支払う利息総額の圧縮効果が見込めます。たとえ変動金利が上昇しても、元金そのものが減っていれば、利息負担の増加幅を抑制できるからです。
金融機関に手数料として支払って消えてしまう100万円と、自分の借金を減らすために使う100万円では、意味合いは大きく異なるでしょう。固定金利が2.0%を超えている現状において、手数料を払ってまで借り換えるメリットは限定的と言えます。
むしろ、その資金を手元に残して金利上昇時の備えにするか、繰り上げ返済で元本を削るほうが、結果として総支払額を抑えられる可能性があります。
借り換えで「得する人・損する人」の判断チェックリスト
以上の分析を踏まえ、変動金利から固定金利への借り換えに関する判断基準をまとめます。
【借り換えを検討してもよい人(損をしても安心を買いたい人)】
・今後、変動金利が2%、3%と短期間で急上昇すると見込む(ハイパーインフレなど)
・毎月の返済額の変動が精神的なストレスとなり、日常生活に支障をきたしている
・ローン残高が多く(5000万円以上など)、残存期間が30年以上ある
【借り換えをすべきではない人(現状維持・繰り上げ返済が合理的)】
・残存期間が短い(残り15年~20年以下):金利上昇の影響を受ける期間が短いため、借り換え手数料の元を取るのが困難
・手元資金に余裕がある:金利が上昇して返済額が増えても家計が破綻しない、あるいは手数料分の資金で繰り上げ返済が可能
・総返済額を重視する:シミュレーション上、現在の固定金利水準(2.0%超)への借り換えは、総支払額を増加させる可能性が高くなる
金利上昇局面においては、「金利」というパーセンテージだけを見るのではなく、「残高×金利」で決まる利息額と、「借り換え手数料」を含めたトータルコストで判断することが求められます。
安易な借り換えは、金融機関に手数料を支払うだけで終わるリスクがあることを認識し、自身の残高とライフプランに基づいた計算を行ってください。
出典
住宅金融支援機構 最新の金利情報:長期固定住宅ローン【フラット35】
住宅金融支援機構 住宅ローン利用者の実態調査(2025年4月調査)
執筆者 : 南波喜憲
2級ファイナンシャルプランナー技能士