インフレ率「2.5%」の今、住宅ローン“3000万円”を繰上げ返済! でも「インフレ率>住宅ローン金利」だと、結局“100万円以上の損”に…インフレ時代「返すほど損」になる理由とは
しかし、いまの日本は物価上昇が続き、インフレ率が住宅ローンの変動金利を上回る状況となっています。このような状況では、繰り上げ返済をしないほうが最終的な返済負担額に有利になるケースもあるのをご存じでしょうか?
本記事では、住宅ローン残高3000万円・金利0.6%・返済期間20年のケースを例に、インフレ率2.5%が今後も継続した場合、500万円繰り上げ返済した場合としない場合はどちらが得になるのかを解説します。
FP2級、AFP、社会保険労務士、第1種衛生管理者
インフレ率>住宅ローン金利の世界で起きる逆転現象
インフレが進むと住宅ローン残高の実質価値は下がります。インフレ率が2.5%、住宅ローン金利が0.6%の場合、1年間の各金額は以下のようになります。
・金利負担:3000万円×0.6%=18万円
・住宅ローンの実質価値の減少額:3000万円×2.5%=75万円
このように、インフレ率>住宅ローン金利の状況が続く場合、金利負担(利息)よりもローン残高の実質価値の減少額のほうが大きくなり、住宅ローンの将来的な返済負担は軽くなります。このような状況下で繰り上げ返済した場合、どうなるのでしょうか?
500万円を繰り上げ返済するとどうなる?
住宅ローン残高が3000万円、住宅ローン金利が0.6%、残り返済期間が20年(元利均等返済)、今後のインフレ率が2.5%で推移する条件において、今すぐに500万円を繰り上げ返済する場合と、しない場合の返済負担額はどう変わるのでしょうか?
シミュレーションの結果、住宅ローン残高3000万円の場合の年間返済額は約159万円となり、20年間の総返済額は約3180万円となります。一方で、500万円の繰り上げ返済をした場合、住宅ローン残高は2500万円となり、年間の返済額は約133万円、20年間の総返済額は約2650万円となります。
しかし、インフレ率2.5%が20年継続すると、20年後のお金の価値は現在のお金の価値の約61%になるので、住宅ローン返済額の実質負担額は以下のようになります。
・繰り上げ返済なし:約3180万円×0.61=約1940万円
・繰り上げ返済あり:約2650万円×0.61+500万円=約2120万円
繰り上げ返済する500万円は今払うので、現在価値のまま加算するため、このようになります。
つまり、このケースでは500万円繰り上げ返済した場合、繰り上げ返済しない場合よりも、最終的な住宅ローンの実質負担額で約180万円も損してしまうことになるのです。
インフレ時代の住宅ローンは返すほど損になることもある
住宅ローン金利がインフレ率よりも低い状況が続く限り、住宅ローン負担は毎年実質的に軽くなります。つまり未来の返済は今よりも安いお金で返せるようになり、そのような安いお金で返せる未来の返済を、現在の高いお金で繰り上げ返済したら損をする場合もあるのです。
そのため、インフレ率>住宅ローン金利が継続する場合、上記のように繰り上げ返済して住宅ローンを急いで返すより、繰り上げ返済しないほうが、長い目で見ると合理的になる場合もあります。
まとめ
インフレ率が住宅ローン金利を上回ると、住宅ローンの実質負担額は減少します。
そのため、繰り上げ返済せずに借り続けるほうが合理的なケースもあります。もちろん、家計の安全性や心理的な安心感は人それぞれですが、「繰り上げ返済=必ず得」という時代ではありません。
金利上昇におびえることなく、インフレ率との関係をチェックすることが、これからますます重要になっていきます。
執筆者 : 石井ヒロユキ
FP2級、AFP、社会保険労務士、第1種衛生管理者