住宅ローンの借り換えで失敗する人の特徴。知っておきたいメリット・デメリットとは?

配信日: 2019.09.30 更新日: 2022.02.21

この記事は約 13 分で読めます。
住宅ローンの借り換えで失敗する人の特徴。知っておきたいメリット・デメリットとは?
近年、住宅ローンは低金利状態が続いています。
 
住宅ローン金利はバブル経済の崩壊で下落の一途をたどっていましたが、2006年頃に底を打ち、徐々に上昇に転じていました。しかし、その直後に発生したリーマンショックにより、再び住宅ローン金利は下落に転じてしまいます。
 
住宅ローン金利が上昇に転じる気配を見せていた頃に住宅ローンを契約された方は、金利上昇局面に有利な固定型金利を選択したのではないでしょうか。残念ながら金利動向に対する思惑は外れてしまい、他の年よりも比較的高い金利を固定してしまうという結果となってしまいました。
 
住宅ローン金利の一時的な高騰から約10年が経過しました。固定期間選択型で人気の高い10年固定を選んだ方は、固定期間の満期を迎えることになります。これを機に住宅ローンの借り換えを行い、返済負担を軽減することを検討してみてはいかがでしょう。
 
しかし、住宅ローンを漫然と借り換えてもお得にならないばかりか、条件によってはさらなる出費を招いてしまう結果にもなりかねません。今回は住宅ローンの借り換えに失敗しないためにも、住宅ローンのさまざまな疑問について解説していきます。
菊原浩司

執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)

FPオフィス Conserve&Investment代表

2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。

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借り換えで失敗する人の特徴3つ

住宅ローンの借り換えで十分な満足を得られないケースとして、住宅ローン金利に関する認識不足がまず考えられます。以下にポイントに分けて解説していきます。

①金利変動に対する理解不足

当初は変動金利で借りておき、金利が上がりそうになったら固定金利に切り替えればいいと考える傾向もありますが、変動金利と固定金利は、利率決定の基となる基準金利が異なります。

変動金利は短期プライムレートという市中金利により、実際の経済状態を反映し金利が決定されます。反対に固定金利は10年物国債の金利により、現在の経済状態を下敷きにしつつ未来の金利予想を加味して金利が決定します。

この2つの基準金利は反映のタイミングが異なります。変動金利よりも早く固定金利のほうが反応するため、変動金利が上がりそうだと感じたときには、すでに固定金利は上がってしまった状態となってしまいます。

②マイホーム資産価値の見誤り

次いで、融資額に関する懸念点があります。住宅ローンの融資額は担保となるマイホームの資産価値によっても左右されますが、築年数に対して適切な修繕が行われていなかったり、郊外や市街化調整区域内の建物などは購入時に比して資産価値が大きく下落していたりする場合があります。

マイホームの資産価値と住宅ローンの残債によっては、希望していた融資額に達せず、借り換えに際して自己資金の投入が必要となる可能性もあります。

③健康状態により団信へ加入できない

団信の取り扱いについても注意が必要です。健康状態に問題の無い人ならば借り換えによって特約を追加するなどして保証を手厚くすることもできますが、健康状態が悪化している人の場合は団信に加入できなかったり、特約に加入できなかったりするといった状態に陥ることもあります。

この場合は、金利低減による返済負担の軽減を取るか、従前の住宅ローンの団信・特約を維持して保証内容を継続させるかのどちらかとなります。

住宅ローンは、万が一の際の生活を保障する側面も持っていますので、健康状態や世帯の家計状況によっては、保障を維持するために借り換えを行わないといった選択を取ることも必要になります。

金利決定の仕組みと返済額の見直しルールを理解し、金利変動によってどの程度返済額が増えるのかといったことや、住宅ローンの保険としての側面を把握して、適切な借り換えを行うようにすることが借り換えで後悔しない大切なポイントとなります。

借り換えで失敗しないためのチェックポイント

借り換えで失敗しないよう、申し込む前に次のような点をチェックしてみましょう。

家計やライフプランに合った金利タイプを見極める

借り換え後に安定して返済を続けるためには、金利タイプごとの特徴について理解し、現在の家計や将来の生活設計に合わせたプランを選択することが大切です。

たとえば教育費などで出費が増えるタイミングがわかっている場合には、ピークを過ぎるまで金利が固定されるように固定期間選択型を選ぶという考え方ができるでしょう。

また、収支に大きな変動の予定がなく、ある程度家計に余裕がある場合には、固定金利と比べて低く設定されていることが多い変動金利を選択するのもひとつの方法です。

借り換えのタイミングを考える

借り換えで十分な効果を得るには、タイミングを考慮する必要があります。金利が下がっているときを狙うのはもちろん大切ですが、金利条件に気を取られて、良いタイミングを逃さないように注意しましょう。

借り換えの検討に適しているのは、次のようなタイミングです。

■収入が下がる前・転職する前
減収や勤続年数のリセットは、借り換えの審査で不利に働く可能性があります。条件が悪くなる前のタイミングで申し込みをするとよいでしょう。

■他のローンを組む前
カーローンなど住宅ローン以外の借り入れ状況が、審査に影響するケースもあります。借り入れが増える前に申し込む方がいいでしょう。

■金利が見直されて高くなったとき
金利見直しや当初固定金利の優遇期間終了などのタイミングで金利がそれまでよりも上がったときには、返済の負担が大きくなります。より低い金利の住宅ローンに借り換えをすることで、負担の増大を抑えることができるはずです。

諸費用を含めた総額で考える

住宅ローンを借り換える際には、各種手数料や保証料、印紙代、登記費用などさまざまな費用が発生します。借り換え前後の総額を比較するときには必ず、諸費用も計算にいれて考えなければなりません。

諸費用の金額は、金融機関にもよりますが、おおよそ十数万円~数十万円が相場です。そのため、借り換えによって返済額を減らしたつもりでも、諸費用を足すと総額としてはそれほど変わらなかったり、反対に以前の住宅ローンよりも多くなったりといったことが起こり得ます。

借換先の候補が決まったら、諸費用の金額についても事前に確認し、試算に含めるとよいでしょう。

事前にシミュレーションをする

「借り換えたけれど思ったような効果がでなかった」とならないよう、事前にシミュレーションをすることが大切です。

多くの金融機関がホームページなどでシミュレーション用の計算ツールを提供しています。借入額や金利タイプなど具体的なプランを想定して試算すると同時に、現在の住宅ローンとの比較もできるため活用するとよいでしょう。

借り換えを検討する際の相談先

借り換えで失敗しないか不安な場合には、相談をしてアドバイスを受けることも大切です。各金融機関が設けている対面の窓口や相談ダイヤル、問い合わせフォームなどを活用しましょう。また、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談をする方法もあります。

分からないことや不安な点を残したまま手続きを進めると、後悔する原因になります。小さなことでも相談して、納得したうえで借り換えに臨みましょう。

借り換えでお得になる人とは?

一般的に借り換えでお得になるのは次の場合と言われています。

 

■借り換え後の金利差が1%以上
■住宅ローン残高が1000万円以上ある
■返済期間が10年以上残っている

借り換え後の金利よりも現在の金利水準が低い場合は、借り換えによるメリットはあまりないといえます。

ただし、残高が多く、残りの返済期間が長い場合は、金利差が1%未満でも効果を期待することができます。残返済期間や残高がとくに大きい場合は0.3%程度の金利差でもメリットがあるといわれています。

また、借り換えによって効果が出やすいとされる残りの返済期間と借入残高の目安は、それぞれ10年以上、1000万円以上です。現在の住宅ローンの残返済期間と残高を確認し、条件に当てはまるかどうかをチェックしましょう。

条件から外れていると絶対にメリットがないというわけではありませんが、一般的には借り換えのタイミングが早いほどメリットが大きい傾向にあります。

借り換えを検討する前に知っておきたい金利タイプ

いくら金利が安いからといって、借り換えによって誰もがお得に利用できるわけではありません。借り換えを行う前に金利タイプごとの特徴をしっかりおさえてないと、かえって損をしてしまうかもしれません。

■変動金利

まず、借り替えにあたり今後の金利タイプは何を選択するのかが重要になります。金利タイプには大きく分けて、変動型、固定期間選択型、全期間固定型の3つがあります。

変動型金利は、他の金利タイプと比較して最も金利が低い傾向にありますが、市中金利と連動して返済額が変化するという特徴があります。

市中金利が下落傾向、ないしは横ばいが続くと考えられるときに適した金利タイプですが、金利が上昇していくシチュエーションには弱く、返済総額に影響を受けやすいという特徴があります。

■固定期間選択型

固定期間選択型金利は、2年、3年、5年、7年、10年、15年、20年、25年などの期間があり、固定期間が長くなるに従って金利が高くなる傾向があります。

契約者が養育費などの大きな支出がある場合に、この金利タイプが選ばれる傾向にあります。あまりリスクが取れない期間に合わせて固定期間を選択し、住宅ローンの返済額が金利変動によって影響を受けないようにして、他の資産形成を安定的に行うことができるためです。

しかし、固定期間満了時は金利動向によっては返済額が大きな影響を受けてしまうことがあります。変動型金利は住宅ローンの返済額が25%以上変動しないよう激変緩和措置が設定されていますが、選択期間固定型にはこうした措置がありません。

変動型も選択期間固定型も金利変動の影響を軽減するには、繰上げ返済が有効です。金利動向に応じて繰上げ返済を行えるよう、別途資金を積み立てておくことをオススメします。

■全期間固定金利

フラット35で有名な全期間固定型金利は、返済期間中の金利変動などのリスクを完全に排除することができるため、長期的な返済計画を確実なものとし、養育費や老後資金など他の資産形成を安定的に行いやすくしてくれます。

その反面、他の金利タイプよりも金利が高い傾向にあります。年収に対して住宅ローンの借入比率が高くなってしまい、返済計画におけるマイナスの影響を吸収する余地が少ない方などに適しているといえます。

このように、借り換えによって住宅ローンの金利タイプを変更しようと考えている方は、最低金利のみを追い求めるのではなく、それぞれの特徴を捉えてから金利タイプの検討を行うと良いでしょう。

借り換えで得られるメリット

借り換えで得られるメリットは3点あります。それぞれ解説していきます。

月々の返済額や返済総額の削減

現在の住宅ローンの金利よりも低い金利で借り換えることができる場合、返済額や返済総額を減らすことができます。

なぜなら、元金にかかる金利が下がることで支払う利息の額が減るからです。したがって、現在の住宅ローン金利と借り換え後の住宅ローンの金利の差が大きければ大きいほど、支払う利息の額を減らすことができます。

ただし、借り換えを検討する際には、金利だけでなく諸費用の額にも注意しましょう。住宅ローンを借り換える場合には借りたときと同様、諸費用がかかります。つまり、借り換えによる支払い利息の差が、諸費用を上回るようであれば、借り換えのメリットがあるといえるでしょう。

返済年数を変更できる

借り換えをする際、月々の返済額を減らすのではなく、返済期間を短縮することもできます。また、一部の金融機関では返済期間の延長もでき、期間を延ばすことでボーナス払いをなくすなど、家計に合わせて条件を見直す機会にもなります。

ただし、返済期間の上限は原則として35年までとなっています。それ以上は延長できないことに注意しましょう。

 

団体信用保険の保障を充実させられる

借り換えの際には、新しい住宅ローン商品に付随する団体信用生命保険(通称:団信)に入り直すことになります。

そのため、住宅ローンの契約時に想定していなかったリスクに対して、新たな対応を行うことができるようになります。住宅ローンの大きな特徴である団信は年々保障が充実してきており、さまざまな疾病・傷病に対応できるようになってきています。

具体的には、次のようなものがあります。

・3大疾病への保障3大疾病への保障では、がん・心筋梗塞・脳卒中がカバーされます。がんと診断された場合や心筋梗塞・脳梗塞で手術を受けたり、一定期間働けなくなったりした場合などに保険金が支払われ、住宅ローンの残債がなくなります。

 

・がんへの保障がんと診断された場合、保険金が支払われます。保険金は、住宅ローン残高の50%が支払われるものと100%支払われるものがあります。

 

・3大疾病以外への保障金融機関によって「7大疾病」「8大疾病」「全疾病」など、さまざまな疾病をカバーできるものがあります。

ただし、所定の疾病にかかった場合ではなく、所定の疾病にかかり、所定の状態(入院、就業不能など)が一定期間続いた場合に保険金が支払われるものが多いようです。

上記以外にも、女性のみ給付金が支払われる特約などもあるようです。古い住宅ローン契約に付帯させている団信を、新しい特約付きのものに変更することで、保障内容を充実させることもできます。

金利変動リスクを排除できる

変動金利から固定金利に借り換えた場合、今後の住宅ローンの金利は固定され、金利が変動するリスクを回避することができます。

そして、借入期間の金利が固定されることで、総返済額が確定し、資金計画が立てやすくなります。子どもの教育資金など、これから資金の準備が必要な場合には、固定金利に借り換えを検討してみるとよいかもしれません。

【関連記事】
住宅ローンの借り換えメリットを紹介!デメリットもよく見極めて

借り換えのデメリット

借り換えにはさまざまな注意点があります。これを踏まえておかないと、借り換えで失敗する可能性があります。

諸費用が発生する

残念ながら借り換えは無料で行えるものではなく、諸費用が発生します。

発生する諸費用の額は、借り換えを行う金融機関や住宅ローンの残債によって異なりますが、おおむね数十万円です。諸費用には、保証料・手数料や各種税金(印紙税・登録免許税)、司法書士手数料などがあります。

また、フラット35へ借り換えを行う場合は、フラット35の利用基準を満たしているかどうかを調査するための、物件検査手数料という費用が発生することもあります。

こうした多額の諸費用を支払ってでも借り換えを行ったほうが良い目安として、住宅ローン融資の残り期間が10年以上+借り換え後の金利低下が1%以上+住宅ローンの残債が1000万円以上であれば、借り換えによって利益を得られる可能性が高いといわれています。

関連記事 住宅ローン借り換え時の諸費用ってどれぐらいかかるの?借り換えない方がお得?

審査に落ちる可能性がある

新規契約時と同様に、借り換え時にも審査が必要となります。返済が滞るなど信用情報に傷がついている場合は、借り換えの審査に落ちる場合があります。また住民票や収入証明書類、物件確認資料など書類をそろえる手間も発生します。

金融機関を訪問する必要がある

借り換えの融資実行手続きでは、基本的に契約者本人が金融機関まで訪問する必要があります。

ほとんどの金融機関は平日の昼間しか営業していないため、会社員の方の多くは、休業ないしは有給休暇を利用することになります。しかし、仕事が多忙で出向くのがおっくうになってしまい、借り換えに支障が出てしまう恐れもあります。

訪問が必要になるのは、実店舗型を持つ金融機関に多いですが、近年は実店舗の無いネット銀行があります。

ウェブ上で手続きを完了させることができますので、自分のペースで手続きを行えるメリットがあります。時間が取れずになかなか借り換えを実行に移せないという方は、手続きが簡便なネット銀行などを検討してみてはいかがでしょうか。

ただし、ネット銀行で借り換えを行う場合は店頭窓口を介さない分、書類のチェックなどを全部自分でやらなければならないという手間もあります。対面で相談しながら手続きを進められる安心感と比較して、どちらがご自身にとってメリットが多いかを検討するとよいでしょう。

また、金融機関によっては住宅ローンの金利をさらに優遇するキャンペーンを実施していることがあります。

この場合、口座開設や給与振込口座への指定などの条件が付くことがあります。キャンペーンによる優遇金利を十分に活用するために、勤め先などが給与支払口座の変更に応じてくれるのかどうかを確認しておきましょう。

住宅借入金等特別控除の対象から外れるケースがある

住宅借入金等特別控除の適用を受けている場合、借り換えで返済期間を短縮することなどによって、対象から外れてしまう恐れがあります。借り換え後も住宅借入金等特別控除の適用を受けるには、以下の条件を満たさなければなりません。

■借り換え後の住宅ローンが従来の住宅ローンを返済するためのものであると明らかである

■新しい住宅ローンの返済期間が10年以上である

借り換え後に条件を外れそうな場合は、借り換えによって軽減される負担と10年目までの控除額を比べて、借り換えによって損をしないか検討してみる必要があるでしょう。

【関連記事】
住宅ローン借り換えはデメリットに注意!損をしないためのポイントとは?

まとめ

近年は住宅ローン金利の下落が続いていましたが、ゼロ金利の導入などもあり、金利低下の余地がほとんどなくなる水準にまで達しました。住宅ローンの金利見通しでも80%以上の人が今後1年間で金利は上昇ないしは横ばいと推測しています。

この状態では固定金利を選ぶのが得策なのですが、実際に選ばれている金利タイプは変動型が約57%、固定期間選択型は約25%で、全期間固定型に至っては約18%に過ぎません。

金利の動向の予想と、実際に選択している金利タイプにやや乖離が見られています。金利の低さのみにとらわれず、それぞれの特徴を把握して金利タイプを決定すると良いでしょう。

また、新たな諸費用の発生や契約者の健康状態によっては、借り換えが必ずしもお得とは限りません。借り換え後の返済額はもちろん諸費用や保険などの観点からも検討するようにしましょう。

※2021/1/7 内容を一部修正させていただきました。

執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表

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