更新日: 2021.02.12 住宅ローン
マイホームを買い換えた場合の住宅ローン控除は適用できない場合があるって本当?
執筆者:星田直太(ほしだ なおた)
税理士、ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))
一般企業勤務を経て、30代から税務会計の世界に入り、税理士とCFPの資格を取得。
税理士法人勤務時には法人税務顧問、ベンチャー支援、事業再生、相続・事業承継といった多様な業務に従事。公的機関での勤務も経験した後、2014年に独立。現在は西新宿に税理士事務所を開業している。
中小企業向けの講演多数。他の専門家とも多く提携しており、ワンストップでお客様のお悩みに対応できる体制を構築している。
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住宅ローン控除とは
正しくは「住宅借入金等特別控除」といいます。住宅ローンを利用してマイホームの新築や取得、増改築等を行った場合に、一定の金額を税額控除するという制度です。この住宅ローン控除の適用を受けるためには、主に以下のような要件を満たす必要があります。
・新築または取得の日から6ヶ月以内に居住の用に供し、各適用年末まで引き続き住んでいること
・控除を受ける年の合計所得金額が3000万円以下であること
・新築または取得をした住宅の床面積が50平方メートル以上で、床面積の2分の1以上がもっぱら自己の居住の用に供するものであること
・10年以上の分割返済となっている、金融機関等からの住宅取得のための一定の借入金であること
なお、床面積要件は登記簿上の専有部分の床面積で判定します。登記簿上は壁の内側で計算する、つまり内法面積ですが、マンションのパンフレット等に記載される面積は壁の中心を基礎として計算する壁芯面積となっているでしょう。当然ながら、内法面積<壁芯面積となりますので、床面積判定の際には注意が必要です。
また、「認定長期優良住宅」や「認定低炭素住宅」の新築等を行った場合には、優遇措置があります。詳細は、国税庁タックスアンサー(※)を参照してください。
マイホームを売った場合の主な特例
マイホームを売って所得が生じた場合は、譲渡所得の確定申告が必要です。この譲渡所得申告については、税法上はいくつかの特例が用意されていますので、以下でご紹介します。申告時にこれらの特例を使うかどうかは、納税者の任意です。なお、それぞれの特例には要件が定められており、併用についても制限がありますので注意してください。
(1) 3000万円特別控除の特例
マイホームを所有していた期間の長さにかかわらず、譲渡所得から3000万円まで控除ができる規定です。
(2) 軽減税率の特例
マイホームを売った年の1月1日時点で、その売ったマイホームの家屋と敷地の所有期間がともに10年を超えている等の一定の要件を満たす場合には、長期譲渡所得の計算における税率を通常よりも低くできる規定です。
(3) 特定の居住用財産の買い換え特例
特定のマイホームを売って代わりのマイホームに買い換えた場合において、一定の要件を満たすときは、譲渡益に対する課税を繰り延べることができます。
(4) 居住用財産の買い換え等の場合の損益通算・繰越控除の特例
マイホームを売って代わりのマイホームに買い換えた場合において、一定の要件を満たすときは、その売却によって生じた損失について、その年の給与所得や事業所得等の他の所得と損益通算をできる特例です。さらに、損益通算を行っても残ってしまった譲渡損失については、その売った年の翌年以後3年内に繰り越すことができます。
(5) 特定居住用財産の損益通算・繰越控除の特例
(4)と似ていますが、買い換えの必要はありません。ただし、売ったマイホームに住宅ローンが残っていたこと等の要件があります。適用要件を満たすときは、譲渡損失または残った住宅ローンの金額等を基礎に計算した金額を損益通算できるほか、損益通算を行っても残ってしまった譲渡損失について、その売った年の翌年以後3年内に繰り越すことができます。
住宅ローン控除との併用
マイホームの買い換えに伴い、新しく取得するマイホームについて新たに住宅ローン控除を受けようとする場合には、以下に掲げる規定とは併用ができませんので、注意をしてください。
(1) 3000万円特別控除の特例
(2) 軽減税率の特例
(3) 特定の居住用財産の買い換え特例
一方で、「(4) 居住用財産の買い換え等の場合の損益通算・繰越控除の特例」および「(5) 特定居住用財産の損益通算・繰越控除の特例」と住宅ローン控除は併用できます。
住宅取得資金の贈与を受けた場合
両親等の直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合も注意が必要です。この制度と住宅ローン控除の適用を併せて受けることは可能ですが、注意点があります。住宅ローン控除を受ける際には、対象となる住宅ローンの年末残高とマイホームの取得対価の額を比較して、いずれか低い金額を計算の基礎とします。
ここで、住宅取得等資金の贈与を受けている場合には、マイホームの取得対価の額からその贈与を受けた金額を差し引くこととされています。従って、贈与を受けなかった場合と比べると、適用を受けることができる住宅ローン控除の金額は小さくなります。
この点は、以前に多くの計算漏れが会計検査院の指摘から発覚したことがニュースになりました。注意しましょう。
おわりに
マイホームに関する税制は、特例が多く用意されているものの、仕組みが複雑です。必ず、適用年に対応する税法上の規定をよく確認してください。ご自身で申告する際、規定をなかなか理解できない場合は、所轄の税務署に早めに相談するか、税理士の力を借りることをお勧めします。確実な対応で、思わぬ損失を受けることを防ぎましょう。
(※)国税庁 タックスアンサー「No.1213 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」
執筆者:星田直太
税理士、ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))
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