更新日: 2021.05.26 住宅ローン

共働き夫婦が知っておきたい! 住宅ローンの「収入合算」と「ペアローン」

共働き夫婦が知っておきたい! 住宅ローンの「収入合算」と「ペアローン」
住宅ローンを利用する際、借入額を増やす方法として収入合算もしくはペアローンがあります。もちろん、それぞれに特徴があり、利用の際にはメリットそしてデメリットが存在します。
 
今回は、この収入合算とペアローンの違いや利用の際の注意点についても併せて解説します。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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住宅ローンの「収入合算」と「ペアローン」の違い

「収入合算」とは、一定の収入のある親族の収入を申込者の収入に合算する方法です。そして、合算した金額を元として住宅ローンを借り入れることができます。その際、申込者が主債務者となり、収入合算者は連帯保証人になることが必要です。
 
収入合算には、「連帯保証型」と「連帯債務型」の2種類があります。「連帯保証型」とは、主債務者名義で契約した住宅ローンに対して、収入合算者が連帯保証人になることで住宅ローン契約を締結します。したがって主債務者が、なんらかの理由で返済困難な状況に陥った場合、収入合算者である連帯保証人が代わりに返済する責任を負うことになります。
 
そして「連帯債務型」とは、夫婦または親族間の連名で住宅ローンを契約し、それぞれが同等の返済義務を負うかたちです。
 
一方「ペアローン」とは、収入合算とは異なり、一定の収入のある同居親族がそれぞれ住宅ローンの主債務者となり、住宅ローンを組む方法です。この場合は、主債務者それぞれが相手の連帯保証人となります。
 

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「収入合算」のメリット

収入合算を行うメリットは、なんといっても希望する借入額を増やせることです。自分だけの年収では希望する借入額に満たない場合は、親族の収入を合算して申告することで借入額を増やすことが可能です。そして、借入額が増えるということは、住宅ローン控除の適用額も大きくなり、最終的に節税につなげることができます。
 
また、収入合算の場合は申込者が主債務者の1人ですので、住宅ローンは1本となります。したがって、事務手数料などは1本の住宅ローンとして計算されます。
 
さらに、主債務者は団体信用生命保険に加入できることから、主債務者に万が一のことがあった場合にはその後の返済を心配することもなく、住居も保障されます。
 
また、パートや派遣社員などの非正規雇用の場合で、住宅ローン(主債務者)の利用条件に当てはまらず利用できないケースでも、収入合算者として加わることができることも収入合算のメリットといえるでしょう。
 

「収入合算」の注意点

住宅ローン契約が主債務者名義の1本となることから、団体信用生命保険への加入も主債務者のみです。したがって、収入合算を行っている連帯債務者に万が一のことがあったとしても、その債務は保障されません。また、住宅ローン控除やすまい給付金についても主債務者のみが対象者です。
 

「収入合算」が向いている夫婦

夫婦それぞれの収入を合算して借りる「収入合算」が向いている夫婦には、どのような特徴があるのでしょうか。
 

借入額を増やしたい人

収入合算は、夫婦の収入を合算して住宅ローンを組むので、どちらかひとりが住宅ローンを組むときよりも、単純に借入額を増やすことが可能です。
 
そのため、希望している物件の金額が、ひとりで組むよりも高いところであったとしても、お金を借りることができるようになります。希望する物件が、契約者ひとりの収入だと手が届かないという場合は、収入合算にしておけば安心です。
 

住宅ローン契約における手数料をペアローンより抑えたい人

収入合算はペアローンとは違い、住宅ローン契約はひとつです。そのため、契約にかかる事務手数料は1人分のみとなります。
 
申込時にまとまった資金を用意できない夫婦や、少しでも契約時の手数料を抑えたいと考えている夫婦は、収入合算がおすすめです。
 

土地や建物の名義をローン契約者だけにしておきたい人

収入合算の住宅ローン契約は1つです。そのため、土地や建物の名義はローン契約者のみとなり、共有名義にはなりません。
 
そのため、土地や建物の名義を夫婦それぞれにするのではなく、ローン契約者だけにしておきたいと考えている方は、収入合算が向いていると言えるでしょう。
 
反対に、土地や建物の名義をしっかりと夫婦で共有したいという方は、ペアローンがおすすめです。
 

「ペアローン」のメリット

収入合算と異なり、住宅ローンの契約が2本となることから、それぞれの持ち分に応じて住宅ローン控除やすまい給付金の適用を受けることが可能です。さらに、それぞれの契約で個別に借入金額や返済期間などの借り入れ条件も設定できることから、単独で住宅ローンを組むよりも負担を減らして返済できます。
 
また、双方が団体信用生命保険加入できることから、返済リスクについても抑えることが可能です。
 

「ペアローン」の注意点

団体信用生命保険については、それぞれの持ち分割合に応じて加入することになります。したがって、どちらかに万が一のことがあった場合、その人の持ち分割合についての返済の心配はなくなりますが、それ以外の返済は続きます。
 
また、住宅ローンの契約が2本となることから、住宅ローン契約の際の事務手数料などがそれぞれに発生することとなり、諸費用がかなり高くなってしまうことにも注意する必要があります。
 

「ペアローン」が向いている夫婦

夫婦それぞれが住宅ローン契約をして、お金を借りる「ペアローン」が向いている夫婦には、どのような特徴があるのでしょうか。
 

返済におけるリスクを最小限に抑えたい人

ペアローンは、夫婦それぞれが住宅ローン契約を結ぶため、団体信用生命保険も夫婦がそれぞれ加入することになります。団体信用生命保険に加入しておけば、返済しているあいだに、どちらかに万が一のことがあった場合、相手の残債は返済されます。
 
そのため、返済におけるリスクをできる限り最小限に抑えたいという方は、ペアローンにするとよいでしょう。
 

節税効果についても最大限利用したい人

夫婦それぞれが住宅ローンの契約者になるペアローンは、収入合算とは異なり、夫婦ともに住宅ローン控除が適用されます。夫婦それぞれで受けることができる控除枠を、最大限利用することができるため、節税効果が期待できるでしょう。
 
ペアローンは、住宅ローン契約を2つ結ばなくてはいけないため、事務手数料などの費用が2人分かかります。しかし、諸費用がかかっても節税効果が高ければ、ペアローンにする価値は十分にあるといえます。
 

妻の出産・育児休暇後も復帰を見込んでいる人

ペアローンは、夫婦それぞれが住宅ローン契約を結ぶため、お互いがしっかりと働き続けてローンの返済をすることが前提です。そのため、子どもができたことをきっかけに、どちらかが家事・育児に専念するのであればペアローンはおすすめできません。
 
逆に、出産・育児休暇後も仕事復帰を望んでおり、子育てをしながらでもバリバリ働くことを考えている夫婦は、ペアローンにしても問題ないでしょう。
 

共働き夫婦の住宅ローン借入額の考え方

住宅ローン契約をするときに、借入額をいくらにするか、どのように考えればよいのかが分からないという夫婦も多いでしょう。
 
そこで、共働き夫婦の住宅ローン借入額の考え方について、家賃から見る場合と、世帯年収から見る場合の2つの考え方について詳しく解説します。
 

家賃から考える

住宅ローン借入額の考え方の1つに、家賃から考える方法があります。同じ共働き夫婦でも、自家用車の有無や親の介護、趣味やレジャーにかかる予算などはまちまち。おのおのの生活スタイルの違いによって、住宅ローンの支払いにいくら充てることができるのかは変わってくるはずです。
 
もし、夫婦間で話し合っても、住宅ローン借入額が具体的に決まらないようであれば、現在暮らしている賃貸の額をひとつの目安として考えてみましょう。その家賃を基準にして、住宅を購入したあとにかかる生活費がいくらくらいあれば、今までどおりの生活を維持できるのかを検討してみてください。
 
なお、住宅を購入した場合、賃貸とは異なり、戸建てなら固定資産税や都市計画税、マンションなら修繕積立金や管理費などが上乗せされます。部屋数が増えて大きくなるのなら、光熱費が変化する可能性があることも忘れないでください。
 

世帯年収から考える

世帯年収から考える方法(返済負担率)は、住宅ローンの借入額の目安を算出するために、もっとも使われる方法です。共働き夫婦の場合は、いくつか算出する方法がありますが、収入合算であれば夫婦の収入を合算した年収で返済負担率を算出してもよいでしょう。
 
ペアローンの場合は、夫婦それぞれが住宅ローン契約を結ぶので、分けて考えたほうが計算しやすいです。
 
返済負担率とは、住宅ローンの年間返済額が、年収の何割を占めているのかを表した数値のこと。住宅ローンの種類によって異なりますが、余裕をもって返済をしたいのであれば、理想は25%ほどだといわれています。
 
審査では返済負担率が高ければ高いほど、厳しくチェックされるようになります。また、住宅ローンの申し込みをする以前に、別のローンを組んでいたり、カードローンやキャッシングを利用していたりする場合は、全て含めたうえで返済負担率を算出してください。
 

共働き夫婦の住宅ローンに関するQ&A

共働き夫婦が住宅ローンを利用する際、多いのはペアローンの利用でしょう。ここではペアローンを利用しているという前提で回答します。
 

配偶者の収入が減った場合はどうなる?

A.配偶者の収入が減った場合であっても、返済額は変わりません。子どもができた場合の育児休暇や、病気になった際の休業期間についても同じです。
 
したがって、病気などにおける保障については、団体信用生命保険だけでなく、民間の生命保険の収入保障などできちんと準備しておくようにし、若い夫婦であれば、今後子どもができた際には仕事を続けていくのかどうかも考えたうえで、ペアローンを利用するようにしましょう。
 

離婚する場合はどうなる?

A.ペアローンは夫婦それぞれが主債務者となっていることから、離婚後どちらか一方が勝手に住宅を売却するということはできません。したがって、離婚後は双方がそのまま返済を続けるか、夫婦どちらかが相手の返済分も負担する必要があります。
 
また、離婚の際には登記上の問題も発生します。離婚によって、どちらかがその住宅の所有権全部を得ることになれば、手放す側の持ち分については所有権移転登記が必要となりますし、変更登記に伴う登録免許税も必要です。
 
ただし、ペアローン名義を単独名義にするためには、再度審査を受ける必要があります。単独の収入で住宅ローンを返済するのが難しいと判断されたら、審査は謝絶される可能性があります。また、仮に1本化できた場合でも、住宅ローン控除の対象が1人になるため、税負担が重くなる点にも注意が必要です。
 

贈与税がかかるケースとは?

A. 一方の収入減少により、相手の返済を負担してあげているケースには、それ以降の主債務者に対してローンを支払わなくなった側からの贈与があったとみなされます。また、離婚後に夫婦どちらかが相手の返済分を負担することとなった場合にも贈与があったとみなされます。その場合、年間の返済額に応じて贈与税が課せられることになります。
 
それ以外にも、当初決めた持ち分割合と異なる割合で返済をしていく場合は、その割合の差額分について夫婦間で贈与があったとみなされます。
 

借り換えをしたい場合はどうなる?

A.ペアローンのまま借り換えを行うこともできますし、借り換えの際に主債務者をどちらかに1本化できます。ただし、1本化する場合は上に述べたような贈与税の問題が発生しますので、まとまった資金があるのであれば、借り換えの際にどちらかの債務を一括返済することをおすすめします。
 

まとめ

収入合算そしてペアローン、どちらも借入額を増やすという意味では非常に有効な手段ですが、契約の形態や、その後の状況の変化によっては非常に使いづらいものにもなりえます。利用する際には、今後のライフプランやライフイベントについてきちんと整理し、しっかりとした返済計画を立てておくことが大切です。
 
さらに、借り換えの際の手続きの煩雑さや、収入合算そしてペアローンどちらのケースにおいても状況によっては贈与税の課税対象となることに注意し、その際の対応策についてもある程度考慮しておく必要があることも覚えておきましょう。
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
 

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