2018.07.06 老後

介護にかかるお金を節約したい。「世帯分離」で負担軽減になるって本当?

現在、要支援・要介護認定者は約640万人います(厚生労働省平成30年3月分介護保険事業状況報告)。団塊の世代が75歳以上になる2025年からこの世代の人が亡くなられるまで、要介護認定者は増加していきます。
 
介護は身近なリスクになります。将来の介護に備えて、公的介護保険の仕組みや介護費用の節約法について、情報収集しておくことが大切です。
 
今回は介護費用の節約法の1つとして、「世帯分離」について解説します。
 

「世帯分離」について

世帯は「居住と生計をともに生活する社会生活上の単位」をいいます。したがって一緒に生活していても、生計が別であれば別世帯と考えられます。
 
親と同居していても、それぞれの収入で生活している人は「世帯分離」を検討してみてはいかがでしょうか。
 
「世帯分離」は、住所を変更せずに、いまの世帯を分離して複数の世帯にすることです。生活の実態に合わせて「世帯分離」しておけば、将来、介護が必要になった時に、介護費用を節約できる可能性があります。
 

なぜ、「世帯分離」すると介護費用の節約になるのか

公的介護保険の保険料や介護サービス利用料、特別養護老人保健施設などの介護保険施設の居住費・食費などは、世帯の所得に応じた負担軽減の仕組みがありますので、世帯の所得が減ると、利用者の負担が減る可能性があります。
 
例えば、65歳以上の保険料は、平成30年度~32年度には全国平均で月5869円となっています。
 
ただし、住む場所で保険料は大きく異なり、最高額は福島県葛尾村の月9800円、最低額は北海道音威子府村の月3000円と、その差は最大約3.3倍になっています。
 
各自治体では、基準額に所得段階別の係数を掛けて月額保険料を決めています。所得段階は標準9段階ですが、自治体によっては15段階に細分化しているところもあります。
 
例えば9段階の場合、世帯全員が住民税非課税かつ本人の年金収入等80万円超120万円以下では、保険料は基準額の0.75倍となっています。
 
介護サービス費に関しては、65歳以上の利用者負担は所得に応じて介護サービス費の1~3割ですが、利用者負担額を軽減する仕組みに「高額介護サービス費」などがあります。
 
「高額介護サービス費」は、1カ月間に利用した介護サービス費の負担割合が高額になったときに、一定額を超えた分を、あとから払い戻してくれる仕組みです。
 
負担の上限の最高額は月額4万4400円ですが、前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が、年間80万円以下などの世帯は2万4600円に軽減されます。
 
介護保険施設(特養・老健・療養病床・介護医療院)での居住費(滞在費)・食費は全額自己負担(10割負担)ですが、世帯の所得に応じて軽減される「特定入居者介護サービス費(補足給付)」という仕組みがあります。
 
対象は、世帯全員が住民税非課税で、預貯金が単身者なら1000万円以下、夫婦なら2000万円以下などの人です。なお、収入は非課税年金の遺族年金や障害年金も含めて判定されます。
 
例えば、特別養護老人ホームのユニット型個室に入居した場合、自己負担の基準負担額は1日あたり居住費1970円、食費が1380円ですが、「特定入居者介護サービス費」を利用すると、所得に応じ居住費が820~1310円、食費が300~650円に軽減されます。
 

「世帯分離」の注意点

このように、親の所得が低い場合、「世帯分離」をすれば介護費用を節約できます。しかし、親の所得が高い場合は効果がありません。親の所得が高いのに世帯分離すると、国民健康保険料などの負担が増える可能性もあります。
 
「世帯分離」は同居していても、親子それぞれに収入があり財布が別という場合の実態に合わせて行うものです。
 
手続きは、役所で「住民異動届」を提出します。この届出書には理由を記入する欄はありませんが、介護費用を節約するために「世帯分離」する場合は、役所で「住民異動届」を受理してもらえない可能性があります。
 
介護費用が負担になったら、役所に行く前にケアマネジャーに相談してみましょう。

※参考文献:「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)
 

Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。

新美 昌也

Text:新美 昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。
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