更新日: 2020.05.12 その他老後
定年後も働く人たちのうち継続雇用の人はどれくらい?働き続ける理由って?
老後資金は人によって違いがあるし一概にはいえない、退職金など老後資金を考慮していない、年金制度そのものを否定する報告書であるなど、さまざまな議論がありました。
いずれにしても、「老後資金」は支出する資金の大きさから「教育資金」「住宅資金」に加え、人生の3大支出といわれています。人生の最後に最もお金がかかるということになります。
そういった中で、公的年金の受給年齢の引き上げや超低金利の長期化などの環境変化があり、かつてのように公的年金だけで悠々自適の老後生活を送るのが難しくなってきています。
金融広報委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)(2019)」によると、老後の生活費の収入源として「公的年金」が79.1%となっており、ついで「就業による収入」が48.2%と約半数を占めており、10年前の2009年に比べて8.5%上昇しています。
つまり、老後資金は働いて稼ぐといった人が増えているのが現状です。今回は、高齢期の人を取りまく企業の現状や働き方に関する意識について紹介します。
執筆者:堀江佳久(ほりえ よしひさ)
ファイナンシャル・プランナー
中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。
企業の高齢期の雇用制度
■雇用確保のための取り組み
企業が行う雇用確保措置として、「定年制の廃止」「(65歳以上への)定年の引き上げ」「雇用継続制度(再雇用制度・勤務延長制度等)の導入」の3通りがあります。
この中で、企業が行ったものとして最も多いのが「継続雇用制度の導入」で77.9%、続いて「定年の引き上げ」が19.4%、最も少ないのが「定年制の廃止」で2.7%となっています。
定年制の廃止が少ないですが、今後、政府は国家公務員の定年を60歳から65歳に引き上げを検討しているので、それに合わせて民間企業も定年の引き上げが加速されるかもしれません。
定年到達者の働き方
60歳定年制企業において、定年到達者がどのような働き方を選択したかを見てみます。継続雇用になった人は84.7%、継続雇用を希望しなかった人は15.1%、継続雇用を希望したが継続雇用をされなかった人が0.2%という結果があります。
この中で、継続雇用を希望しなかった人の中には、転職や起業などが含まれるので、完全に引退した人は、これより少ないと思われます。やはり60歳以降は、ほとんどの人が働くといっても過言ではないでしょう。
■66歳以上働ける制度のある企業の状況
全企業のうち、30.8%が66歳以上の就業をサポートするため何らかの制度を導入しています。最も多い制度は、「基準該当者66歳以上の継続雇用制度」が10.3%、「その他の制度で66歳以上まで雇用」が8.8%、「希望者全員66歳以上の継続雇用制度」が6.8%と続いています。
人生100年時代といわれて久しいですが、企業側で66歳以上が働ける制度のある企業は、そう多くはないのが現状かもしれません。
定年後の働く意識について
■定年後も働いている理由
60歳から64歳までの定年後の有職者の男性の結果を見ると、「日々の生計維持のため」が最も多く64.7%、続いて「生活のハリ・生きがいを持つため」が34.9%、「社会とのつながりを持ちたいため」が20.6%、「より豊かな生活をするため」が19.5%と続いています。
一方、同じく65歳から69歳までを見ると、最も多いのが「生活のハリ・生きがいを持つため」で46.6%、続いて「日々の生計維持のため」が42.9%、「社会とのつながりを持ちたいため」が28.7%、「健康のため」が22.0%と続いています。
■シニア層を雇用する上で、企業等に必要と思われる取り組み
60歳から64歳までの定年後の有職者の男性の結果を見ると、「継続雇用者の処遇改善」が最も多く59.7%、続いて「シニア層の就労についての職場の理解」が23.4%、「新たな勤務シフトの導入」が19.9%、「高齢者の健康確保措置」が15.6%と続いています。
一方、同じく65歳から69歳までを見ると、最も多いのが「継続雇用者の処遇改善」48.1%、続いて「シニア層の就労についての職場の理解」が30.8%、「新たな勤務シフトの導入」が25.7%、「高齢者の健康確保措置」が24.0%と続いています。
(参考)
知るぽると 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和元年調査結
厚生労働省 令和元年「高年齢者の雇用状況」集計結果
ダイヤ高齢社会研究財団 50代・60代の働き方に関する調査報告書(2018年7月)
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー