更新日: 2021.03.09 その他老後

退職後、普通預金の老後資金をどうする?資産運用は必要? 前編

執筆者 : 宮﨑真紀子

退職後、普通預金の老後資金をどうする?資産運用は必要? 前編
退職の前後に受け取った退職金などの一時金、とりあえず普通預金に預けている方も多いのではないでしょうか。そのままで良いの?
 
資産運用を勧められているけれど、何を注意すれば良いの? 身近な事例でひも解きます。
宮﨑真紀子

執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。

新生活で始める「お金の整理」

Mさん(65歳)は退職を機に、都心からご両親の住む実家近くのマンションに住み替えをしました。彼女からこのような相談を受けました。
 
実は資産運用というほどではないのですが、今手持ち資金が2000万円ほどになり、少し分散しておこうかと考えています。現在の状況は下記のとおりです。
 

メインバンク定期:100万円
メインバンク普通預金:1500万円
サブバンク普通預金:100万円
証券口座:300万円

 
あまりリスクは取りたくないですし、ぜいたくしなければ年金と預金で何とかなると思っています。証券口座で個別株式の取引もしていますが、ここ数年は動かしていません。
 
先日何かの記事で読んだのですが、老後資金は国際分散投資の積立と個人向け国債変動10年が良い、とのことでしたが? いかがなものでしょうか。アフターコロナを考えると、金利の上昇、インフレ、増税などが心配です。
 
Mさんの場合、退職してライフスタイルが変わったことに加えて、引っ越しで住環境も変化しました。新しい環境で今後の人生をどう過ごすのかによって、お金の使い方も違ってきます。
 
メインバンクの普通預金にある1500万円をどうしたら良いか?
金融商品は「安全性」「収益性」「流動性」で特徴を分けることができますが、普通預金は「流動性」ではナンバーワン、いざというときにすぐ引き出せますので、ある程度の資金を置くことは必要です。
 
リタイア後に限らず資金の置き場所を決めるには、お金の整理から始めることがお勧めです。まず「日々の生活に必要なお金」「近く使い道が決まっているお金」「当面使う予定がないお金」の3分類に整理します。
 
年金で不足分の生活費を取り崩す場合は、「日々の生活に必要なお金」に分類されますので、流動性の高い普通預金などが置き場所になります。医療費など急な出費のための予備費も、そこに算入しておくと安心です。
 
次に「近く使い道が決まっているお金」は、安全性を重視した国内の債券などが候補になります。使い道が決まっているのですから、目減りしないような商品を選ぶ必要があります。
 
最後に「当面使う予定がないお金」です。少しリスクを取る余裕のある部分ですので、収益性も考慮します。「当面ってどのくらい?」「リスク許容度は?」など、将来のキャッシュフローに沿った、慎重な商品選びが求められます。リタイア後であることを考えると、リスクを抑えた投資信託などが候補として有力です。
 

第一優先はリスクを抑えること

資産の振り分けについては、専門家の間でもさまざまな意見があります。その中で、Mさんが気になる「老後資金は国際分散投資の積立と個人向け国債変動10年が良い」という説を解説したいと思います。まず、それぞれの商品の内容を見ていきましょう。
 
【国際分散投資を積立で運用】
「1つのカゴに卵を盛るな」という格言があるように、投資のリスクを少なくするためには分散が不可欠です。主な分散の方法は3つあります。
 

(1)資産の分散 特徴の異なる複数の金融商品を組み合わせる 
(2)地域の分散 複数の地域や通貨を組み合わせる
(3)時間の分散 投資のタイミングを何度かに分ける

 
日本だけでなく国際分散もしておいたほうが良いですし、一度に投資するよりは、投資時期も分散したほうが良いということで、「国際分散投資を積立で」が推奨されています。
 
Mさんは投資経験があり個別株式の取引もされています。時間ができたら取引を再開する可能性もありますが、卵の格言を考えると投資信託を利用した分散投資が基本です。「リスクを抑えることを第一に考える」これが老後の資産運用の鉄則と考えます。
 
※個人向け国債変動10年型については、後編で商品の内容を見ていきます。
 
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
 

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