更新日: 2023.02.28 その他老後
「家族信託」って便利なの? 認知症になったら預金を子どもに管理してもらえる?
ただし、家族信託には節税効果など注意点もあるため、事前に詳細を把握しておくことが大切です。そこで本記事では、家族信託のメリットや注意点について解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
家族信託とは
「家族信託」は、財産管理におけるひとつの手法です。
不動産や預貯金などの財産の所有権をもつ「委託者」が、信頼できる家族に財産の管理を託します。その際、委託者から財産の管理や運用、処分を任された方を「受託者」、信託財産の「財産権」をもっていて、財産から利益を得る方のことを「受益者」とよびます。
つまり、家族の財産を家族で管理・運用・処分するための、信託財産管理です。
家族信託のメリット
家族信託のメリットを把握しておくと、自分たちに合った方法なのかが判断できます。家族信託を利用すると、口座凍結への備えや柔軟な財産管理などができ、万一の際の遺言としても効果があります。本項では、これらについて説明します。
認知症による口座凍結に備えられる
家族信託のメリットは、認知症による口座凍結に備えられることです。認知症になると、財産保護を目的に金融機関は口座を凍結します。口座が凍結されると、家族でも預金の引き出しなどはできません。家庭裁判所で成年後見人の選任をしてもらい、口座凍結を解消する必要があります。
事前に家族信託を設定しておけば、家族が受託者となって財産を管理するため、認知症による口座凍結の影響を回避できます。
財産管理が委託者の意思能力に影響されない
家族信託を設定すると、財産の管理・運用・処分の権限は受託者に移るため、委託者の意思能力や判断能力に影響されません。信託の範囲で受託者に広い裁量を与えることができます。そのため、親が認知症などになった場合でも受託者で財産の管理や運用が可能です。
遺言効果がある
家族信託は、遺言の効果がある点もメリットです。信託契約にて、財産の所有者である委託者が亡くなった後、財産を誰に継承するかを決められるためです。委託者が生きている間だけでなく、亡くなった後も財産を継承できる相手を選べるため、相続トラブルなども回避しやすくなります。
ただし、家族信託に遺言効果があることで、受託者を誰にするかを家族間でもめるリスクが生じるため注意が必要です。
家族信託の注意点
家族信託は、注目されている財産管理手法のひとつです。ただし、節税効果や使い込みなどに関する注意点もあるため、しっかりと把握しておく必要があります。
本項では、家族信託の注意点について見ていきましょう。
節税効果は低い
家族信託には、税制的なメリットは期待できません。例えば、受託者は管理をしている間、財産分の所得税や住民税の支払い義務が発生します。この所得税や住民税は、家族信託を行わなくても委託者に発生します。また、委託者と受益者が異なる場合、受け取った財産の利益には贈与税がかかるため、受益者が贈与税を支払います。
そのため、節税目的の財産管理方法を検討している場合は、家族信託以外の方法を検討したほうがよいでしょう。
受託者が使い込むリスクがある
権限が与えられた受託者が財産を勝手に売却したり、好きなように使い込んだりしてしまうなどで、家族間でトラブルになることもあります。そこで、家族信託では信頼できる人を受託者に選ぶことが大切です。また、監視する役割の「信託監督人」や「受益者代理人」を選出するのも有効です。ただし、別途報酬が必要になります。
家族信託を使えば預金を子どもに管理してもらえる
家族信託を利用すれば、預金などの財産を子どもに管理してもらうことが可能です。受託者となった家族は、委託者の財産の管理や運用、処分を行います。
認知症による口座凍結にも備えられて、柔軟な財産管理ができ、遺言機能も備わっています。認知症などで判断能力がなくなった場合でも安心です。家族に自分の財産を管理・運用してもらいたい場合は、家族信託を検討してみましょう。
出典
一般社団法人家族信託普及協会 制度の概要
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー