更新日: 2023.04.20 定年・退職

現役時代ではなく「定年後」にうつ病に!? 定年後うつにならないためにはどうすればいい?

執筆者 : 柘植輝

現役時代ではなく「定年後」にうつ病に!? 定年後うつにならないためにはどうすればいい?
定年後にうつ病を発症する「定年後うつ」と呼ばれる病気が存在しています。定年後自由に過ごせる時間が増えたにもかかわらず、なぜうつになってしまうのでしょうか?
 
定年後うつにならないためには、本人や家族はどうしていけばよいのでしょうか? 定年を控えた方やその家族に向けて、ファイナンシャルプランナーとしての観点から解説していきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

「定年後うつ」とはどのようなもの? その原因は?

「定年後うつ」とは、定年後に発症してしまううつ病です。定年後うつの原因としては、さまざまなものが考えられます。
 
厚生労働省の資料「高齢者のうつについて」によれば、うつ病の原因は主に、重大なライフイベント、または慢性的なストレスとされています。
 
定年を迎えることで、これまでの会社員というルーティーンから外れて、生活が一変します。その変化に対して心がついていかず、定年後うつを発症してしまうというわけです。
 

「定年後うつ」の典型的な症状は?

「定年後うつ」などの高齢者のうつ病は見落とされやすいといわれています。
 
厚生労働省の資料「高齢者のうつについて」によれば、典型的なうつ病の症状を示す人は3分の1から4分の1程度ともいわれており、注意が必要です。うつの症状としては、次のようなものがあります。


・眠れない、または眠りの質が悪い
・疲れやすく気力が低下している
・死を望むようになる
・感情が平たんになる
・感情の起伏が激しくなる
・強い不安を感じる

上記はあくまでも一例です。周囲から見て定年前と比べると様子がおかしい、あるいは自分でもそう感じたときは、「定年後うつ」の可能性があります。
 

「定年後うつ」による家計への打撃も無視できない

「定年後うつ」は、家計にも大きな影響を与えます。うつを含む気分障害の治療費は、入院するとなると、おおよそ12万6260円かかることになります。
 
1回あたりの入院日数はおよそ25日となり、金銭面以外の負担も小さくありません(令和2年度の医療給付実態調査より、60歳から64歳の方のデータを基に、医療費3割負担の場合として推計)。
 
一般的に、人は加齢によって病気やけがを患うことが増え、医療費もこれまでより多くかかることになります。収入の限られた状況において、「定年後うつ」の治療による医療費が増えると、家計を圧迫することにもなりかねないのです。
 
定年後の生活を、金銭的にも精神的にもより豊かにするには、お金のことだけではなく、うつの予防についても考えることが重要になるのです。
 

「定年後うつ」を予防するためには?

では、「定年後うつ」を発症しないためには、どのような予防策と対策を講じていくべきなのでしょうか。「定年後うつ」の予防に有効と考えられるものには、次のようなものがあります。


・アルバイトか正社員かは問わずに、再就職してみる
・趣味と向き合う
・家族サービスを楽しむ
・友人や知人と遊びに出掛ける

特に趣味や遊びについては、お金が多少かかるものもありますが、「定年後うつ」の治療にお金がかかることを考えれば、心身の健康のために、多少お金をかけることも悪くありません。
 
また、無理のない範囲での再就職は、収入も得られて、「定年後うつ」の予防にもなります。月3万円とか5万円などと少額の給与の範囲でも、就労はおすすめできます。
 

 

「定年後うつ」はひとごとではない! ライフプランには老後の生活様式も組み込む

「定年後うつ」は、誰にでも起こりうる可能性のある疾患です。特に、現役時代には仕事に熱を入れていた方や、プライベートの楽しみ方が下手だという方は要注意です。
 
「定年後うつ」は、ライフプランにおいて、老後の生活の送り方もしっかり考えておくことで予防することが可能です。
 
定年後については、お金のことばかりに気をとられがちですが、「定年後うつ」の存在についても知ったうえで、自分なりに充実した老後を送れるように、老後には何をするかについても、ライフプランの一環として、定年前から策定しておくようにしてください。
 

出典

厚生労働省 資料8-1 高齢者のうつについて
政府統計の総合窓口(e-Stat) 医療給付実態調査/ 報告書 令和2年度
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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