更新日: 2023.06.15 その他老後
あなたは何歳まで働きますか? 高齢社会白書にみる高齢者の就業状況
この記事では、内閣府の「令和4年版高齢社会白書」を基に、高齢者の就業状況や平均的な収入、貯蓄額などについて読み解いてみたいと思います。
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
60歳代後半でも2人に1人が就労している
60歳以上での年齢階層別の就業状況について、2021年(令和3年)と10年前の2011年(平成23年)を比較したものが図表1です。
※内閣府 「令和4年版高齢社会白書」を基に筆者作成
全体的には、どの年齢階層でも就業率は上昇しており、60歳代前半(60~64歳)では約70%、60歳代後半では約50%の方が就労していることになります。また、70~74歳でもおおむね3人に1人が就労していることが分かります。
この背景としては、2013年に改正された高年齢者雇用安定法により、65歳までの高齢者雇用確保の措置義務などが定められたことの影響が大きいと思われます。
さらに、2020年3月の改正では、65歳までの雇用確保義務に加えて、70歳までの就業確保措置を講じることが努力義務として追加されており、今後も高齢者の就業率は増加傾向が想定されます。
男性は60歳代前半で80%強、60歳代後半で約60%が就労
高齢者の年齢階層ごとの就業率を男女別に示したものが図表2です。
※内閣府 「令和4年版高齢社会白書」を基に筆者作成
2021年において、男性の場合は60~64歳で82.7%、65~69歳で60.4%が就労しています。また、70~74歳でも4割を超える方が就労していることが分かります。
高齢者世帯の平均的な年間所得は312.6万円、貯蓄額は2324万円
高齢者世帯および全世帯の平均的な年間の所得金額と、貯蓄額(貯蓄現在高)を示したものが図表3です。
※内閣府 「令和4年版高齢社会白書」を基に筆者作成
令和4年版高齢社会白書では、所得金額について厚生労働省の「国民生活基礎調査」(令和元年)に基づき、高齢者世帯を「65歳以上の者のみで構成するか、またはこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯」と定義しています。
また、貯蓄現在高は、総務省の「家計調査(二人以上の世帯)」(令和2年)に基づいており、高齢者世帯とは「世帯主が65歳以上」の世帯です。平均的な高齢者世帯のモデルとしては、年間の所得金額は312.6万円、貯蓄額は2324万円となっています。
また、総務省の「全国家計構造調査」による、世代別の金融資産分布状況では、世帯主が60歳以上の世帯が全体で占める割合は、2019年(令和元年)で63.5%となっており、15年前の2004年(平成16年)の52.4%と比較して11.1%増加しています。
この結果からは、多くの金融資産を高齢者世帯が保有している構造となっていることが分かり、現在も増加傾向は進展していると考えられます。
まとめ
内閣府の「高齢者の経済生活に関する調査」(令和元年度)によると、「あなたは、何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいですか」という質問に対して、「働けるうちはいつまでも」と回答した割合は、60歳以上で収入のある仕事をしている方では、全体の36.7%となっています。
また、70~80歳くらいまでと回答した方も加えると、全体の87.0%を占め、9割近くの方が老後も高い就労意欲を有していることが分かります。
老後のライププランに関する考え方には、人それぞれの環境、価値観や意識などによってさまざまなものがあるでしょう。ただし、現実問題として日本においては、少子高齢化、人口減少による社会構造の変化が始まっています。
「何歳まで働くか」という問題に対し、どう考えるのかも人それぞれですが、統計などによる平均的な数値にあまりとらわれることなく、自分自身の信念に基づき、健康で生きがいを持って生活できることが最も幸せなのかもしれません。
出典
内閣府 令和4年版高齢社会白書
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー