61歳の母の貯蓄は「80万円」。老後は大丈夫でしょうか? 娘として援助などはすべきでしょうか…?
配信日: 2023.07.23
親の収支がマイナスになりそうな場合、自分がサポートしたほうが良いのか悩むこともあるでしょう。そこで今回は、80万円の貯蓄がある61歳の母を想定し、その娘がどのように関わると良いのか説明します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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まず支出と年金受給の平均月額をチェック!
総務省は令和3年の家計調査年報の中で、65歳以上の単身世帯に関して、消費支出の平均月額は13万2476円と報告しています。納税などの非消費支出の平均月額は1万2271円であるため、合計で14~15万円の支出を想定しなければなりません。
一方、厚生労働省が公表した令和3年度の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」を見ると、同年の年金受給の平均月額が分かります。基礎年金分を含む厚生年金は14万5665円で、基礎年金のみの場合は5万6479円でした。平均同士を比較する限り、厚生年金の受給者は支出をカバーできる可能性があります。
しかし、余裕があるわけではなく、出費が増えた月は簡単に足が出やすいです。また、基礎年金しか受給しないなら、収支の継続的なマイナスが懸念されます。いずれにせよ、年金以外の手段で補わなければなりません。
貯蓄があっても子どもからの支援は必要?
母の支出と年金受給額が平均の場合、年金だけでは生活が難しいので、資産の切り崩しなども視野に入れることになるでしょう。
とはいえ、貯蓄が80万円しかないと、年金の不足分を補える期間はかなり限られてしまいます。たとえば、母が厚生年金の受給者で、65歳から毎月1万円ずつ足りないなら、71歳までしかカバーできません。基礎年金しか受給しない場合、毎月9万円ほど不足するため、65~66歳のうちに貯蓄が尽きることも十分にありえます。
以上のように、自分の母の老後が経済的に厳しいなら、子どもとして援助していくことが望ましいです。民法の877条でも、直系血族による扶養は義務と定められています。ただし、これはあくまでも理想であり、実際は子ども側にも仕送りなどの余裕がないケースも珍しくありません。
公的な制度を利用して共倒れを防止
母を経済的にサポートできない場合、公的な制度を利用するという手が残っています。例えば、年金生活者支援給付金は低所得の年金受給者を対象とする制度です。世帯全員が市町村民税非課税であるなど、一定の要件を満たすことで年金に加算して支給されます。
また、受け取る年金を増やすために、受給開始の時期を66歳以降に設定することも有効な選択です。これは年金の繰下げ受給という制度で、遅らせた分だけ増額率が高くなります。貯蓄によるカバーとの兼ね合いで適切な間隔を決めると良いでしょう。
なお、貯蓄も早々に尽きるなど、全資産を活用しても困窮から脱することが困難なケースもあります。健康で文化的な最低限度の生活も送れそうにないなら、生活保護の申請も検討してみるのが得策です。
身内の問題として親子だけで解決しようとすると、困窮が子どもにまで広がるかもしれません。共倒れにならないように、行政のサポートをうまく活用することがポイントになります。
現実的な視点で親の老後に備えよう!
親の貯蓄が少ない場合、65歳までに資産運用などで増やすという選択肢もあります。
とはいえ、年金の不足分を補えるほど成功するとは限りません。仕送りなどの支援をすることも検討しつつ、公的な制度についてもチェックしておくことが大切です。老後を迎えた親に安心して寄り添えるように、子どもの現実的な視点で対策を進めておきましょう。
出典
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)結果の概要
厚生労働省 令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
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執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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