更新日: 2023.08.19 定年・退職

退職金を「2000万円」受け取ったら税金はいくらかかる?「勤続20年」のケースで検証

退職金を「2000万円」受け取ったら税金はいくらかかる?「勤続20年」のケースで検証
人生で訪れる大きなライフイベントの一つに、定年退職があります。退職時には退職金が支給されますが、その額は毎月受け取る給与に比べて大きくなることが想定されるでしょう。そうなると、気になってくるのが税金に関することです。
 
そこで今回は、退職金を2000万円受け取った場合にかかる税金について、勤続20年の方をモデルに計算してみます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

退職金の計算式は?

退職金にかかる税金としては所得税および復興特別所得税や住民税があります。退職金は税金のかかり方が非常に優遇されています。
 
所得税は、退職金の額から退職所得控除額を差し引いた額に2分の1をかけたもの(課税退職所得金額)に、金額に応じた税率をかけ、控除額を差し引いて算出されます。この額に2.1%をかけたものが復興特別所得税となります。
 
ここで差し引かれる退職所得控除額は、勤続年数20年を境に大きく変化します。勤続年数20年以下だと「40年×勤続年数」で計算しますが、20年を超えると「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」と、より控除額が多くなる仕組みになっています。
 
【図表1】


 
出典:国税庁 退職金と税
 

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勤続20年で2000万円の退職金を受け取った場合の税金は?

では、勤続20年で定年退職し、退職金2000万円を受け取ったと仮定して、この場合の税金の額を計算してみましょう。
 
まず、退職所得控除額を求めます。勤続20年目で退職した場合、勤続年数は21年として計算します(勤続年数に1年未満の端数があれば、1日でも1年とみなすため)。
 
退職所得控除額は以下のとおりです。
 
・800万円+70万円×(21年-20)=870万円
 
よって、退職金のうち課税対象となる金額(課税退職所得金額)は以下になります。
 
・(2000万円-870万円)×2分の1=565万円
 
それでは、この565万円にかかる所得税や住民税などについて確認していきましょう。所得税は、課税退職所得金額に応じて税率と控除額が変わります。
 
【図表2】


 
出典:国税庁 退職金と税「令和5年分所得税の税額表〔求める税額=A×B-C〕」
 
課税退職所得金額が565万円の場合、上図より所得税の額は次のとおりです。
 
・565万円×20%-42万7500円=70万2500円
 
このとき、復興特別所得税(2.1%)の額は1万4752円となります。
 
住民税では、税率は一律であり、課税退職所得金額によって変わることはありません。細かな部分はお住まいの地域によって異なることもありますが、今回は簡易的に10%と仮定します。すると、住民税の額は56万5000円となります。
 
よって、所得税および復興特別所得税、それに住民税の合計額は、以下のとおり128万2252円となります。
 
・70万2500円(所得税)+1万4752円(復興特別所得税)+56万5000円(住民税)=128万2252円
 
「勤続20年で2000万円の退職金を受け取ると、おおよそ128万円程度は税金がかかる」と考えておきましょう。
 
なお、退職金にかかる税金は源泉徴収されるため、基本的に確定申告は不要です。ただし、医療費控除を受けるなどの理由で確定申告をする際は、確定申告書に退職金についての記載をする必要があります。
 

今後退職金は増税になるって本当?

ちまたでは退職金増税が騒がれています。ただ、実際にどのような内容となるかはまだ決まっておらず、内閣府の「経済財政運営と改革の基本方針 2023」では「退職所得課税制度の見直しを行う」といった記載にとどまっています。
 
しかし、政府が新しい資本主義を掲げ成長分野への転職を促していることや、年功序列や終身雇用が基本である日本型の雇用を変えていく姿勢を見せていることから、今後、長期間務めた場合の退職金の税制優遇が改悪となる可能性は十分に考えられます。
 
今すぐ退職金が増税されると慌てる必要はないかもしれませんが、今後のライフプランを考えるに当たっては考慮しておきたいところです。
 

勤続20年で退職金を2000万円受け取ると128万円程度は税金がかかる見込み

勤続20年で退職金を2000万円受け取った場合、所得税70万2500円、復興特別所得税1万4752円、住民税56万5000円、合計で128万2252円の税金がかかります。
 
現状、退職金は退職所得控除が大きく、税金の面で非常に優遇されていますが、今後は増税も予想されています。
 
今回のシミュレーションはあくまで参考程度にとどめ、税制は移りゆくものだと理解しておきましょう。その上で、退職金が多少想定外の額となったとしても慌てずに済むように、老後資産についてはコツコツと形成しておくことをお勧めいたします。
 

出典

国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和5年度版) 退職金と税
内閣府 経済財政運営と改革の基本方針2023 加速する新しい資本主義~未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現~
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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