更新日: 2023.11.13 定年・退職

「公務員」が定年退職する場合、退職金は平均でいくらもらえる? 民間企業より多いの?

執筆者 : 柘植輝

「公務員」が定年退職する場合、退職金は平均でいくらもらえる? 民間企業より多いの?
転職や就職にあたり、定年退職時に受けとれる退職金がどれくらいになるのかについては、重要な事項です。老後を考え、退職金の充実している会社を選びたいと思う方も少なくないでしょう。
 
そこで今回は、公務員がもらえる退職金はどれくらいになるのか、民間企業とも比較しながら情報を整理してみました。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
◆お問い合わせはこちら
https://www.secure-cloud.jp/sf/1611279407LKVRaLQD/

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

公務員の退職金は平均2100万円以上!

公務員には大きく分けて、省庁など国の機関で働く国家公務員と、都道府県役場や市区町村役場など地方の機関で働く地方公務員があります。国家公務員と地方公務員、どちらも勤続年数などに応じた退職金が支給されます。
 
内閣官房の調査によると、国家公務員の定年退職における退職手当の平均支給額は、2106万4000円となっています (常勤職員の場合) 。一方、総務省の調査によると、地方公務員の定年退職における退職手当等の平均額は、2123万6000円となっています (25年以上勤めた一般職員の場合)。
 
よって、国家公務員と地方公務員のどちらであっても、公務員であれば定年退職時の退職金は、2100万円以上が期待できると考えられます。
 

民間企業の退職金はどれくらい?

では、民間企業の退職金はどれくらいになるのでしょうか。民間企業と一口にいっても、大企業から中小企業までさまざまな企業があり、それぞれの会社の規模によって退職金の額も変化する傾向にあります。一般的に、退職金の額は大企業ほど高額となり、中小企業ほど少額となることが多いようです。
 
民間企業の退職金について、政府統計の 「令和3年賃金事情等総合調査 令和3年退職金、年金及び定年制事情調査」 によると、定年退職における退職金の平均は、1872万9000円となっています。一方で、調査対象を中小企業のみにしぼった東京都産業労働局の 「中小企業の賃金・退職金事情」 によると、定年退職における退職金は、大学卒で1091万8000円となっています (令和4年度・従業員10人から299人の会社の場合)。
 
また、大企業では退職金が用意されていることがほとんどですが、中小企業の退職金制度の導入率は71.5%となっており、退職金が全く受けとれないこともあるようです。
 

なぜ公務員の退職金の水準は高い?

公務員の退職金が民間の中小企業より、かなり高いと思う方もいらっしゃるでしょう。「公務員の給与形態は民間に準ずる形で決まっている」といわれていることをふまえると、疑問が深まるかもしれません。
 
この理由は、データ対象となる民間企業の範囲にあります。公務員の給与は 「職種別民間給与実態調査」と呼ばれる調査結果をもとに決まっていきます。対して、民間企業の本調査の対象となるのは 「企業規模50人以上、事業所規模50人以上」 の事業所、約5万200事業所のうちから抽出された約1万1100事業所となります。
 
つまり、中小企業のうち、退職金が整備されていない割り合いが高いと考えられる企業規模50人未満の会社が調査対象からはずれていることになります。これが公務員と中小企業とで退職金に差が開く原因となっている、と推測されます。
 
また、公務員の給与は、最終的に各方面の意見や要望もとり入れつつ、議論され決定しますが、「給与や退職金が低すぎると国の政治や地域の行政サービスの質が低下し、国全体に影響が出る」など、さまざまな懸念(けねん)事項も考慮されていることも考えられます。
 
いずれにせよ、公務員の退職金については、さまざまなデータにもとづいたうえで、一定の身分保障という観点もふまえて決定されているようです。
 

まとめ

公務員が定年退職する場合、国家公務員と地方公務員ともに、退職金は2100万円以上となっています。
 
民間企業の場合、公務員よりやや低めの1872万円程度が平均となりますが、退職金制度の導入率をふまえると、中小企業であるか大企業であるかなど、勤務先によっても大きく異なると考えられます。
 
ただし、退職金の額や支給時期は、必ずしも想定どおりになるとは限りません。将来に向けては、過度に退職金をあてにせず、堅実にライフプランを設計していくことをおすすめします。
 

出典

内閣官房 国家公務員の退職手当 退職手当の支給状況
総務省 令和4年 地方公務員給与の実態 第9表の2 団体区分別、職員区分別、退職事由別、年齢別退職者数及び退職手当額
総務省統計局 e-Stat 令和3年賃金事情等総合調査 令和3年退職金、年金及び定年制事情調査
東京都産業労働局 中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)
内閣官房行政改革推進本部事務局 政府の行政改革 国家公務員の給与決定までの流れ
総務省 地方公務員の給与の体系と給与決定の仕組み
 
執筆者:柘植輝
行政書士

ライターさん募集