更新日: 2019.01.10 セカンドライフ
「人生100年時代」と言われるけれど、結局老後資金はいくら必要なの? どのように貯めたら良いの?
リタイア後の主な収入は公的年金ですが、公的年金だけでは十分ではなく、平均的な高齢夫婦無職世帯では貯蓄を取り崩して生活しています。リタイアまでにいくら貯めれば良いのか、どのように貯めたら良いのか解説します。
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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リタイア後の1か月の家計収支
まず、リタイア後の1か月の家計収支を見てみましょう。総務省「家計調査 平成29年」によると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の無職夫婦のみの世帯)の家計収支は、実収入(主に年金収入)が209,198円で、このうち税金などの非消費支出を除いた可処分所得が180,958円となっています。
一方、消費支出は235,477円ですので、毎月54,519円の赤字になっています。
高齢無職単身世帯(60歳以上の無職単身世帯)では、実収入114,027円、可処分所得101,483円、消費支出142,198円となっており、毎月40,715円の赤字となっています。
リタイア後に必要なお金の目安
高齢夫婦無職世帯では毎月54,519円の赤字、高齢者単身世帯では毎月40,715円の赤字となっています。この赤字は貯蓄を取り崩して補うことになります。
厚生労働省「平成28年 簡易生命表」によると平均寿命は、男性が80.98歳、女性が87.14歳となっています。
平均寿命は0歳児がその後何歳まで生きられるかを表しています(0歳児の平均余命)ので、リタイア後は平均寿命よりも長く生きます。
同簡易生命表によると、例えば、65歳の平均余命は男性が19.55年、女性は24.38年となっていますので、資金計画は90歳を目安に立てると良いでしょう。
仮に65歳でリタイアする場合、90歳までの25年間、準備すべき資金の目安は、計算上、夫婦2人世帯では約1,636万円(月54,519円×12か月×25年)、おひとりさまでは、約1,221万円(月40,715円×12か月×25年)となります。退職金があれば、退職金を差し引いた金額が準備すべき資金となります。会社員であれば退職金制度や企業年金制度を確認しましょう。
この金額は最低限準備すべき金額です。ゆとりのある生活を送るには、さらに上乗せが必要です。月10万円上乗せすると25年で3,000万円の上乗せが必要ということになります。
リタイア後に必要なお金の目安は90歳で亡くなる前提で示しましたが、健康に自信のある方は予想よりも長生きした場合に備えて予備費を多めに準備しておきましょう。
計画的な資金作りが大切
リタイア後の資金は現役時代から計画的に準備することが大切です。早く始めれば少ない金額から無理なく積立ができます。
積立の手段としては、預貯金、個人年金保険や投資信託などのリスク商品があります。低金利の今、預貯金や個人年金保険での運用は不利です。個人年金保険や預貯金は資金を殖やせないだけではなく、インフレになれば価値が目減りします。
投資信託はリスク商品ですが、「分散」「積立」「長期」運用すれば、ある程度リスクを抑え、資金を殖やすことが可能です。投資信託の中でiDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISA(少額投資非課税制度)などは「分散」「積立」「長期」運用に適した商品です。運用益が非課税という税制優遇の恩恵も受けながら資産形成できるのも魅力です。
人生には老後資金の他にも住宅資金、教育資金など様々なお金がかかります。老後資金の準備は後回しにされがちですが、老後資金も含めたライフプラン(マネープラン)を作るようにしましょう。同時に将来の医療費や介護費用を抑えるために健康の維持を心がけましょう。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。