60歳で定年退職するなら、年金受け取りの65歳までの「生活費」としていくら貯蓄すればよい?
配信日: 2023.12.16
厚生年金は65歳から受給できるため、繰上げ受給をしない、および再雇用を選択しない方のなかには、今後の生活資金において不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。
そこで本記事では、60歳で定年を迎える場合の老後資金について解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
60歳で定年を迎える場合の注意点
60歳で定年退職して再就職しなかった場合、年金の受給については注意しなければなりません。
なぜなら、老齢年金が受け取れる年齢は、原則として65歳からであるからです。手続きをすることで、60歳から年金を受け取る「繰上げ受給」も可能ですが、請求する時期に応じた割合が減額されてしまいます。減額される年金の割合は表1・表2の通りです。
表1
【昭和37年4月1日以前生まれの方】
請求時の年齢 | 0ヶ月 | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | 5ヶ月 | 6ヶ月 | 7ヶ月 | 8ヶ月 | 9ヶ月 | 10ヶ月 | 11ヶ月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
60歳 | 30.0% | 29.5% | 29.0% | 28.5% | 28.0% | 27.5% | 27.0% | 26.5% | 26.0% | 25.5% | 25.0% | 24.5% |
61歳 | 24.0% | 23.5% | 23.0% | 22.5% | 22.0% | 21.5% | 21.0% | 20.5% | 20.0% | 19.5% | 19.0% | 18.5% |
62歳 | 18.0% | 17.5% | 17.0% | 16.5% | 16.0% | 15.5% | 15.0% | 14.5% | 14.0% | 13.5% | 13.0% | 12.5% |
63歳 | 12.0% | 11.5% | 11.0% | 10.5% | 10.0% | 9.5% | 9.0% | 8.5% | 8.0% | 7.5% | 7.0% | 6.5% |
64歳 | 6.0% | 5.5% | 5.0% | 4.5% | 4.0% | 3.5% | 3.0% | 2.5% | 2.0% | 1.5% | 1.0% | 0.5% |
※日本年金機構「年金の繰上げ受給」を基に筆者作成
表2
【昭和37年4月2日以降生まれの方】
請求時の年齢 | 0ヶ月 | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | 5ヶ月 | 6ヶ月 | 7ヶ月 | 8ヶ月 | 9ヶ月 | 10ヶ月 | 11ヶ月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
60歳 | 24.0% | 23.6% | 23.2% | 22.8% | 22.4% | 22.0% | 21.6% | 21.2% | 20.8% | 20.4% | 20.0% | 19.6% |
61歳 | 19.2% | 19.2% | 18.4% | 18.0% | 17.6% | 17.2% | 16.8% | 16.4% | 16.0% | 15.6% | 15.2% | 14.8% |
62歳 | 14.4% | 14.0% | 13.6% | 13.2% | 12.8% | 12.4% | 12.0% | 11.6% | 11.2% | 10.8% | 10.4% | 10.0% |
63歳 | 9.6% | 9.2% | 8.8% | 8.4% | 8.0% | 7.6% | 7.2% | 6.8% | 6.4% | 6.0% | 5.6% | 5.2% |
64歳 | 4.8% | 4.4% | 4.0% | 3.6% | 3.2% | 2.8% | 2.4% | 2.0% | 1.6% | 1.2% | 0.8% | 0.4% |
※日本年金機構「年金の繰上げ受給」を基に筆者作成
一度、繰上げ受給をしたことで減額された場合、その後も生涯にわたって、減額後の年金額を受け取ることになります。繰上げ受給を検討している場合は、慎重に決めましょう。
60歳で年金を受け取らない場合、65歳までの生活費を工面するには?
60歳で定年退職して、再就職せずに、年金を原則通り65歳から受け取る場合の、生活費をまかなう方法の例は以下の通りです。
・退職金を充てる
・これまでの貯蓄を充てる
60歳の定年後に働かず、年金も受け取らない場合、受給までの5年間は退職金や貯蓄を取り崩しながら過ごすことになります。
60〜65歳の間に必要な生活費は?
総務省統計局の「家計調査年報(家計収支編) 2022年(令和4年) 家計の概要」によると、二人以上世帯の60~69歳の平均消費支出額は、月約30万円とのことです。そのため、単純に5年間(60ヶ月)生活することを考えると、約1800万円が必要となる計算になります。
ちなみに、厚生労働省が発表した「令和5年就労条件総合調査」によると、大学卒業で定年退職した場合の退職金の平均は、1896万円とのことです。
5年間の生活に必要な1800万円を上回るため、退職金だけでもまかなえますが、その後の生活のこともありますので、60歳で定年退職するならば、5年分の生活費を貯蓄しておくほうが理想的でしょう。
60歳で定年退職するなら早めの貯蓄を!
老齢年金の受給は、65歳からが原則です。そのため、60歳で定年退職して、再就職しない場合は、5年分の生活費をまかなう方法を考えておきましょう。
ただし、生活に必要な費用や退職金は個人によって大きく異なるため、ご自身にあったマネープランを考える必要があります。年金の繰上げ受給も可能ですが、受給額が減額されてしまうため、今のうちから貯蓄などを行い、準備することをおすすめします。
出典
厚生労働省 改正高年齢者雇用安定法が令和3年4月から施行されました
厚生労働省 令和5年就労条件総合調査 結果の概況 4 退職給付(一時金・年金)の支給実態
日本年金機構 年金の繰上げ受給
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)家計の概要
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー