老後資金が足りないことが判明。どう対処する? 後編「収入アップと運用」
配信日: 2017.05.30 更新日: 2019.05.24
執筆者:福島えみ子(ふくしま えみこ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
マネーディアセオリー株式会社 代表取締役
リュクスセオリーFPサロン 代表
大学卒業後、都市銀行に入行。複数の銀行、法律事務所勤務中に、人生の悩みは結局のところお金と密接に関係することを痛感、人生をより幸せで豊かにするお手伝いがしたいとファイナンシャルプランナーに。FP会社にて勤務後、独立。これまで500件以上の個人相談を担当すると共に、セミナー、執筆と幅広く活動。相続・資産運用・住宅相談・リタイヤメントプラン等を得意とし、個人相談にも力を入れる一方で、セミナーや企業研修、執筆を通じてわかりやすくお金の知識を発信することに注力している。
第2の手段、「入ってくるお金」をふやす
もう一度整理すると、老後資金が足りない場合、取れる手段は以下の3つしかありません。
① 入ってくるお金を増やす
② 出ていくお金を減らして貯蓄する
③ 運用して少しでも増やす
一見、ハードルが高そうに見えるのは、「①入ってくるお金を増やす」ではないでしょうか。しかし、3つの中ではその効果は一番強力です。
働いて得る収入で月々の生活費をまかなえれば、老後資金の不足をかなり食い止められます。例えば、60歳で定年退職して65歳で公的年金受給し始めるまでの5年間の生活費、これをまるまる貯蓄からの持ち出しでまかなおうとすると、年間240万円の生活費として5年の合計が1200万円。たった5年で貯蓄からこれだけの金額が失われます。ところが、年間240万円でも良いので働いて収入があれば、1200万円の貯蓄を減らすことなく温存できます。例え現役時代より大幅に収入が下がったとしても、“働き続けること”の効果は大きいのです。
「でも働いて収入を得たくても仕事がないかも」と考える人もいることでしょう。確かに、再就職に向けた準備などを何もせず定年を迎えればそのような状況に陥るかもしれません。定年後もある程度自分の思うような仕事を得るためには、事前の準備、すなわちセカンドライフのキャリアプランが重要になってくるのです。例えば、資格を取って開業の準備を始めたり、他でも通用するビジネススキルを磨いておいたりなど、定年になってからはじめて準備するのではなく、現役時代のうちから定年後を見越して準備しておきたいところです。
では運用をしてふやせばいい?
最後に「③運用して少しでも増やす」について見ていきましょう。老後資金が足りないとなると、「運用をしてその分増やさなければ」とリスクが高めの金融商品に安易に手を出してしまう人も多いのですが、これには注意が必要です。“これまで投資運用の経験や知識がない人が誰でもすぐに大きく増やせるほど投資運用は甘い世界ではありません。大きく増やせる可能性があるもの=高いリスクのもので運用すれば、“減ってしまう可能性”もあるのが投資運用です。老後を迎えるまでの期間や運用にまわす金額、そしてどれくらい増やしていくのかなど、「自分にあった方法と手段」で慎重に運用するようにしましょう。ただ、運用は全くしないよりも何らか行うことが大切です。老後資金が足りる足りないにかかわらず、リタイア後も自分の資金を運用し、運用しながら老後の生活費分を取り崩すというほうが老後資金は長持ちします。
いかがでしょうか?老後資金をたちどころに用意する魔法のような方法はありません。まとまった金額を相続したりするのではない限り、厳しいようですが誰かが何とかしてくれるものでもありません。地道に、けれどもしっかり確実に老後資金をコントロールしていくことこそ結局は最良の方法なのです。そして、老後資金が足りないかもと気づいたら、一日でも早く対策を始めることです。今日という日が、残りの人生で一番若い日なのです。時間は今さら時間を取り戻すことはできませんから、今からどれだけ準備していくかの方が大切です。