更新日: 2024.03.09 定年・退職
退職金を600万円ほどもらえる予定です。確定申告は必要ですか?
本記事では、退職金と税金について分かりやすく解説します。
執筆者:植田周司(うえだ しゅうじ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、円満相続遺言支援士(R)
外資系IT企業を経て、FPとして「PCとFPオフィス植田」を起業。独立系のFPとして常に相談者の利益と希望を最優先に考え、ライフプランをご提案します。
お客様に「相談して良かった」と言っていただけるよう、日々努力しています。
目次
退職金と税
最初に、退職所得と税金について簡単に説明します。退職所得にかかる税金は他の所得とは別に計算されます。したがって退職所得にかかる税金はその人の勤続年数と退職金で計算することができます(※1)。
退職所得の課税対象額=(退職金-退職所得控除額)× 1/2
(マイナスの場合は0円)
退職所得控除額は、勤続年数が20年以下の場合と20年以上の場合で異なります。図表1は退職所得控除額の計算方法です。
出典:国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」より筆者作成
今回のAさんは、勤続年数(Y)を10年と仮定した場合、600万円の退職金を受け取ると、所得税と住民税はそれぞれ約5万円と10万円です。
退職所得控除額=40万円×10年=400万円(1)
退職所得の課税対象額=(600万円-400万円(1))×1/2 =100万円
所得税=100万円×5%×1.021≒5万1000円(注)
住民税=100万円×10%=10万円
(注)所得税は累進課税となっているため、課税対象額により税率は異なります(※2)。
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退職金を受け取った人と確定申告
通常、退職金を受け取った人は会社が所得税を源泉徴収するため、確定申告をする必要はありません。しかし、以下の4つのケースに該当する場合は、退職所得の申告が必要です。
1. 会社に退職所得の受給に関する申告書を出していない場合
2. 再就職した会社の年末調整で、前の会社の源泉徴収票を提出していない場合
3. 年の途中で退職し、その年の年末の時点で再就職していない場合
4. 医療費控除等の理由で確定申告をする場合
会社に退職所得の受給に関する申告書を出していない
退職時に会社に「退職所得の受給に関する申告書」(※3)を提出してない場合、一律20.42%の所得税・復興特別所得税が徴収されます。この場合、確定申告で退職所得税の過不足を清算する必要があります。
再就職した会社で退職した会社の源泉徴収票を提出していない
退職した年に再就職した場合は、その会社で年末調整ができますが、そのときに退職した会社の源泉徴収票を提出していない場合、確定申告をすることで、払い過ぎた所得税が戻ってくる可能性があります。
退職後年末時点で再就職していない
年の途中で退職し、その年の年末の時点で再就職していない場合は、年末調整で所得税の清算ができません。多くの場合、退職までの給与や賞与で天引きされた所得税が納め過ぎた状態になっています。確定申告をすることで、払い過ぎた所得税が戻ってくる可能性があります(※4)。
退職金以外の理由で確定申告をする
退職金以外の以下のような理由で確定申告を行う場合も、退職所得を申告する必要があります。
確定申告を行う例:
・医療費控除の申請
・ふるさと納税や寄附金の控除の申請
・投資で損益通算をする場合
・不動産所得、事業所得、その他の収入の申請
確定申告で退職金に対して税金が増減することはありませんが、上記のような退職所得以外の理由で確定申告を行う場合は、退職所得についても申告が必要です(※5)。
まとめ
退職した翌年に確定申告することで、税金が戻ってくる可能性があります。確定申告はスマホやパソコンで簡単に申請できますので、該当する場合はぜひ確定申告をしましょう(※6, 7)。
出典
(※1)国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
(※2)国税庁 別紙 退職所得の源泉徴収税額の速算表
(※3)国税庁 退職所得の受給に関する申告書 兼 退職所得申告書
(※4)ファイナンシャルフィールド 定年退職後の確定申告ってどうやるの?
(※5)国税庁 確定申告書等作成コーナー よくある質問 退職所得に係る所得税
(※6)国税庁 確定申告書等作成コーナー
(※7)国税庁 国税庁 確定申告書等作成コーナー よくある質問 退職金の収入がある場合
執筆者:植田周司
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、円満相続遺言支援士(R)