更新日: 2024.06.15 セカンドライフ
40代の姉妹、お互い独身なので老後は同居する予定です。2人とも会社員で退職金ももらえるので、貯金が少なくても暮らしていけますよね?
貯金額は2人合わせて300万円ほどですが、会社員で退職金があり、厚生年金ももらえるので、老後は問題なく暮らしていけそうだと話しています。仲が良いから節約も助け合えるそうです。それって本当でしょうか?
執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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40代の現役で、70代の状況はコミットできない
ご相談者は現在40代、つまりは現役真っただ中ということですね。この年代は仕事にも慣れ、体力的にも充実しています。おひとりさまなので、子どもの教育費などを心配する必要もなく、毎月安定した収入があってプライベートも仕事も楽しめる頃です。
以前にも、このようなおひとりさま同士で老後は一緒に暮らす、という約束をしているというお話をされていたご相談者がいらっしゃいましたが、その後、一緒に暮らすと約束していたお一人はご結婚されて、プランを考え直さなければならなくなったと、もう一人の方が再びご相談にお見えになったことがありました。
つまり、真剣にシニアライフと向き合うことになるのは50代後半からです。最近では、結婚のタイミングもいろいろです。また仮に、どちらも非婚のままで過ごすと考えても、同じころに健康寿命が終わりを迎えることになります。助け合いたくても、助け合えるかどうかはわかりません。
自分のことを自分でできなくなることを自覚し、訪問介護サービスの利用や介護施設入所を検討するようになったころに向けて、どのように準備していくかを現役時代からプランニングしなければなりません。
経済的にやりくりできるかは健康状態しだい
老齢年金は国民年金と厚生年金の2階で構成されており、国民年金は納付期間、厚生年金は納付期間と納付した年金保険料で決まります。正社員で長期間にわたって勤務してきたのであれば、国民年金・厚生年金を併せてひと月15万円程度は受給できるでしょう。
さらに、企業年金や民間の生命保険会社での年金プランに加入していた場合はそれに上乗せされます。加えて退職金も受け取れるのであれば、経済的には問題ないといえるでしょう。
ただしこれには「良好な健康状態」という前提つきです。仮にどちらかに疾患が見つかり入院・手術を余儀なくされるということになれば、本人にも相手にも大きな負担となり、また施設入所や訪問介護サービスの利用ということも考えなければならなくなる可能性があります。
医療費そのものは保険でカバーできたとしても、自宅の場合であれば手すりをつけたりリフォームをしなければならなくなったりすることもあります。また認知症になった場合は、何がどうなっているのかを自分で判断できなくなるのです。日ごろから情報の整理は徹底しておくことが大事になります。
健康状態は予測不可能ではありますが、どんなに健康であっても加齢とともに弱っていくことは認識しておく必要があります。
「お金」では解決できない情報収集を少しずつ始めておく
「お金」で解決できるものもありますが、実はすべてをお金で解決できるわけではありません。またお金で解決できるものは何か? お金をもっていても、どこに問い合わせればよいのかわからないものです。
特に、健康状態が悪くなったときに、どういう手続きを経て(どこに申請して)どういうサービスを受けることができるか、その窓口はどんなところか、といったことは日ごろからなじんでおかなければ戸惑うことも出てくるでしょう。
現役時代で、日常を忙しく過ごしていると「関係ない」と思いがちですが、お互いに冷静に考えられるときに窓口になる情報収集先を洗い出しておくことから始めてはいかがでしょうか。
お互いの財産や想いも共有しておく
「姉妹で仲がいい」というのは、「お互いに健康である」という前提があることを意識しておいたほうがいいケースもあります。仲のいいきょうだいであっても、加齢とともに認知症を患ったり、感情のコントロールが効かなくなったりすることによって、大変な思いをされるご相談者は近年特に増えています。
「仕方がない」と言われていても、その場に直面すれば、財産管理にせよ、パスワード管理にせよ、「なるようにはならない」と疲弊を吐露されるご相談者が多いのも事実です。
ご両親が健在であれば、おふたりが60代、70代になられたころに、一気に老親の介護と自分たちのケア問題を解決しなければならなくなります。どちらかが50代になったら、将来を見つめておく機会を作って情報を共有することが重要です。
出典
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者